放課後児童支援員とは?
いわゆる“学童の先生(学童指導員)”だが、2015年に放課後児童支援員という資格が創設されたことで、有資格者の放課後児童支援員と無資格者の補助員に区別されることになった。
放課後児童クラブには、子ども40人に対し放課後児童支援員を1人以上配置することが義務付けられている。資格は都道府県が実施する放課後児童支援員認定資格研修を修了することで取得でき、受講には保育士、社会福祉士、教員免許(幼稚園教諭含む)、2年以上(最終学歴が中卒の場合は5年以上)の実務経験のいずれかが必要*。
*社会福祉学、心理学、教育学、社会学、芸術学、体育学を専修する大学・大学院を卒業している場合も受講可能。
話を聞いた人 ─放課後児童支援員のKさん─

今回話を聞いたのは都内で放課後児童支援員として放課後児童クラブ(以下、通称である「学童クラブ」と表記)に勤務するKさんです。もともと子どもが大好きで、大学卒業後は幼稚園教諭として働き始めたKさんが、“学童の先生”を選んだ理由とは何だったのでしょうか?
勤務先は小学校の中にある“公立民営”の学童クラブ

──現在の勤務先について教えてください。
市が立ち上げた公益法人の運営する学童クラブで働いています。今「新・放課後子ども総合プラン」という政策で、学校の中に学童クラブを作りましょうという流れが全国的にあるんです。うちの市でも市内すべての公立小学校に学童クラブが設置されていて、その中の一つが私の勤務先になります。
──それでは“公立公営*”ということになるんでしょうか?
運営が市の外郭団体なので限りなく“公立公営”に近いんですが、市の職員(公務員)ではないですね。
──学童クラブの定員は何名ですか?
90名です。今年度は1年生を40名、2年生を30名、3年生を20名お預かりしています。
──学年が上がるにつれて減っていくんですね。
年によって変わりますね、去年は3年生が30名以上いたので(笑)。
ただ、放課後の居場所が低学年のときは学童クラブと自分の家だけだったのが、3年生くらいになると塾とか習い事とかサッカークラブとか、それ以外のコミュニティをいろいろ作り始めてそこで卒会するという傾向はありますね。
──4年生以上は利用できないんですか?
配慮が必要なお子さん(障がいのあるお子さん)については6年生まで利用可能なんですが、基本的に3年生までになっています。自治体によっては障がいの有無に関わらず、6年生まで利用可能な学童クラブもあります。
──利用希望者が定員を上回ると「低学年が優先されるので、高学年になると利用できなくなる」という話を聞いたことがあるのですが……。
学童クラブでは入会審査を毎年度おこなっていて、次年度の入会希望者が定員を超えると、高学年から順に審査に落ちてしまうことはあります。ただ、うちの市では申込多数の場合、定員を増やして全員が入会できるように配慮しています。
──なるほど。90名の子どもたちを何名の職員で見ているんですか?
正職員3名と嘱託職員3名の計6名に加えてアルバイトさんが一日に3〜4名入ってくださるので、一日あたり9〜10名の大人がいることになります。
──年齢構成はどうなっていますか?
正職員と嘱託職員を合わせて、50代が1名、40代が1名、30代は私を含めて2名、20代が2名ですね。アルバイトは年配の方が多いです。
──男女比はどうでしょうか?
女性のほうが多くて、女性7:男性3くらいの割合ですかね。
──7:3くらいなんですね。保育士について調べたとき、男性保育士は全体の3%くらいで驚いた記憶があるんですが……。
幼稚園や保育園と比べると学童は男性職員の割合が多いと思います。
──放課後児童支援員の資格はいつ取ったんですか?
前職の学童クラブで正社員として働き始めた1年目に取りました。放課後児童支援員の資格ができてすぐの2015年だったと思います。
──職員の中に有資格者と無資格者はどのくらいの割合でいますか?
フルタイムで働いている正職員3名と嘱託職員3名の計6名が資格を持っていますが、放課後児童支援員に限らず、保育士や幼稚園教諭などの基礎資格*も含みます。アルバイトさんは資格がない方が多いですね。

──資格がないと正職員にはなれないんでしょうか?
うちの場合は正職員だけでなく嘱託職員にも資格が必要なので……。資格がある場合はフルタイムで働けて、資格がない場合はアルバイト(パートタイム)という感じでしょうか。
──資格の有無によって業務に違いはありますか?
子どもと遊んだり宿題を見たりするのは同じなんですが、連絡帳の確認や「リーダー」と呼ばれる子どもたちへの指示出し役、おやつの提供、帰りの会の進行については、私の施設では資格を持っている職員がすることになっています。アルバイトさんはあくまでその補助者として工作の準備やお掃除をしてもらうことが多いかな。あと、コロナ禍以降は子どもたちの検温や施設の消毒もお願いしています。
放課後児童支援員の一日
──それでは、一日の仕事の流れについて教えてもらえますか?

学校がある平日に関しては、ちょっと遅めの11時30分出勤になっています。出勤したら基本的におやつの準備に加えて、お便りの作成や行事の準備などの事務作業を軽くします。
12時15分から休憩を取りまして、アルバイトも含めた職員全員が出勤する13時15分からミーティングを必ずおこなっています。子どもの様子やその日の流れ、保護者会などの今後の行事の確認、あとは子どもたち向けのイベントの打ち合わせなどの共有をします。
14時になると子どもたちが登所してくるので、まずは連絡帳で子どもたちの帰り時間を確認します。それから、その日登所予定の子どもたちが全員来ているか確認します。
──寄り道しちゃう子もいるんですか?
学校内にあるので寄り道はないんですが、たまに間違えておうちに帰っちゃうお子さんがいるので、親御さんに連絡したり探しに行ったりすることもあります。
子どもたちの所在を確認したあとは、自由遊びの時間になります。お部屋の中で宿題に取り組むお子さんもいれば、すぐに遊び始めるお子さんもいるので、その様子を見守ります。子どもたちの遊びの幅が広がるように支援したり、一緒になって遊んだり、宿題をしている子の隣でああだこうだ指導したり──と遊びや生活の中で子どもたちの成長につながる支援をおこなっています。
15時30分からがおやつの時間になります。うちの場合は外部業者に発注した個包装のおやつを提供しているんですが、施設によっては手作りのおやつを提供しているところもあって、子どもたちと一緒にうどんの生地をこねて……みたいな。
──うどんはおやつなんでしょうか……?
「ごはんじゃん(笑)」って思いますよね。今はコロナ禍でそういうこともできないと思うので、おやつを手作りしていた施設は困ったかもしれません。
それで16時になったら学校の校庭が自由に使えることになっているので、校庭で外遊びの時間を設けてます。小学生が好きな集団遊び──ドッジボールですとか、一輪車とか、野球とかをして、思い切り体を動かします。学童クラブに入っていない子どもたちも校庭を利用しているので一緒に遊ぶことも多いです。学童を卒会した4〜6年生とも関わることができます。
17時になると帰るお子さんが出始めるので、17時に帰りの会を簡単にやって「今日一日のこんなことがよかったよ」とか「こういうところをみんなで協力してがんばっていこう」とか、子どもたちと話す時間を設けています。17時以降も残る子どもたちは自由遊びでお預かりして、18〜19時が延長保育の時間になります。
延長保育の時間になると、子どもたちも5〜6人とかすごく少なくなってくるので、子どもたちを見る育成担当の職員、部屋を掃除する職員、事務作業をする職員など、職員同士で業務を分担します。平日は出勤時間がお昼前で事務作業をする時間が少ないので、この時間帯を活用しています。

だいたい遅くとも19時には保護者の方がお迎えに来てくれるので、そのあと19時15分には退勤します。
──残業があることは?
学童は残業がそこまで多くないですね。保護者会とかのイベント前に準備のために残ったり、午前中(出勤時間前)に会議が入ったりしたときには残業がつくんですけど、帰りがものすごく遅くなるということはまずないですね。
──月の残業時間はどのくらいですか?
うちの場合は基本的に月3時間もないと思いますね。
──いい職場なんですね……!
いい職場なんです(笑)。あんまり不満もありません。
──それでは次は学校のない日のスケジュールをお願いします。

学校がお休みの土曜日や夏休み、学童クラブは朝8時から夜19時まで開いています。なので勤務時間は8時〜18時15分の早番と9時〜19時15分の遅番に分かれています。平日が7時間15分勤務なのに対して、学校休業日は9時間15分勤務になります。
朝8時になると子どもたちが登所してくるので、平日と同じように連絡帳で帰りの時間を確認したら、子どもたちは自由遊びの時間になります。子どもたちには朝の会をおこなう「9時30分までに来てね」と伝えています。
朝の会で今日のスケジュールを伝えたら、子どもたちには学習の時間を1時間設けているので、この間に職員はミーティングをおこないます。10時30分になるとまた自由遊びの時間になります。……なんかこんなに遊んでばかりで大丈夫かと思われるかもしれないんですけど(笑)。
──子どもは遊ぶのが仕事みたいなものなので(笑)。
本当に9割くらいが遊びの時間で……。こういう長期休みは学童クラブで過ごす時間が長くなって、どうしても子どもたちも手持ち無沙汰になるので、10時30分から12時の間は工作を準備したりホールでドッジボールをしたり、長期休みだからできるようなことを実施しています。
──学童クラブで夏休みの宿題をしたりもするんですか?
学校の宿題とか、おうちの方が持たせたドリルに取り組んでますね。宿題と言えば、子どもたちの中には一日一行日記をまったく書いてなくて──。
──40日分くらいありますよね……(笑)。
本当に、最終日になって「これどうする……?」ってなってる子もいますね(笑)。

そのあと12時から13時までが昼食ですね。昼食は家からお弁当を持参してもらっています。実はコロナ前は外部の業者さんのお弁当を手配していたんですが、今は家から持参したお弁当のみになっています。お弁当を食べたら14時まではまたお部屋で自由遊びの時間になります。
この時間帯は子どもたちも比較的落ち着いて過ごしているので、12時〜14時までの2時間の間に職員も2人ずつ交代で休憩を取ります。
14時からおやつの時間までは校庭に行ったりお部屋で遊んだり、あとは学校の図書室も使えるので、図書室に行く子どもたちもいて、私たちはそれを見守ります。あとは通常の平日と同じで、15時30分からおやつ、16時から自由遊び、17時から帰りの会、最終的に19時には帰宅するという流れになります。
放課後児童支援員のワークライフバランス
──土曜日も出勤があるということは、シフト制になるんですか?
はい、1年単位の変形労働時間制になっています。基本的に日曜と祝日が休みなんですが、月に1〜2回土曜日勤務があります。土曜日に出勤した場合は平日に休みを取ります。
──平日と比べるとやっぱり学校休業日のほうがハードですか?
勤務時間が2時間増えますし、いつもはお昼前にゆっくり出勤しているのが8〜9時出勤になるので、長期休みは疲労が溜まりますね。
──土曜日は月に1〜2回のことですけれども、夏休みや冬休みはそれが毎日続きますもんね。
そうですね。学童クラブは年末年始は閉まっているんですが、夏休みは日曜・祝日を除いてずっと開いているので。ただ、夏季休暇が年5日支給されるので、それを使って職員みんながしっかり休めるように調整してます。
──現在は育児休暇を取っていると聞きましたが……。
はい! 4月に子どもが生まれまして。
──おめでとうございます! 職場で育児休暇の取得実績はありましたか?
女性はみなさん取っていましたが、男性は私が初めてかもしれません。
──男性が育児休暇を取得することに対して、職場でどんな反応がありましたか?
とくに何もなかったです。「ああ、じゃあ、とってもいいわよ」みたいな反応でした。
──さすが行政に近い団体ですね。近年は“パタハラ”が問題になっていますが。
いろいろ聞きますよね。社会的に「男性も育児休暇を取りましょう」という流れになってきているので、職場の人たちからとくになにか言われたりはしませんでしたね。

──育児休暇を取ってみて仕事に影響はありましたか? 見方が変わったり、気づきがあったり。
「保護者の人たちは子育てしながら働いていて、こんな大変なことをしていたんだ」って実感できました。新生児と小学生では発達の具合が全然違うのでそこは参考にならなかったんですけど、今まで以上に保護者の方の気持ちに寄り添いやすくなったっていうのはありますね。
保育園でも幼稚園でも小学校でもない、学童クラブの魅力とは?
──大学では児童福祉の勉強をされていたんですか?
はい、教育学部系の学校で本来であれば小学校教諭と幼稚園教諭の免許が両方取れたんですが、私は小学校教諭の免許を取らなかったので卒業時に持っていたのは幼稚園教諭の免許のみでした。
でも幼稚園で働き始めた頃から、幼稚園の利用者がどんどん減っていく一方で、保育士が足りないとか待機児童がたくさんいるといったことが社会問題になっていたので、「幼稚園教諭より保育士のほうが需要があるな」と感じて保育士免許も取りました。
──幼稚園で働きながら、学童でアルバイトもしていたそうですね。
幼稚園が非常勤だったので「その次、自分がどうすべきか」って考えたときに、「幼稚園教諭の資格が活かせるのは学童かな」「学童の業務も知っておきたいな」と思って、朝8時から15時まで幼稚園で働いて、そのあと学童に行ってましたね。
──最初の学童クラブでアルバイト2年、正社員2年、合計4年間働いたあと、現在の学童に転職した理由は何だったんですか?
転職した大きな理由は待遇ですね。
──以前はどのくらいのお給料だったんですか?
以前は正社員で1日8時間月〜金まで勤務して、総支給が20万円くらい。ボーナスも年間で1〜2ヶ月分だったので、年収は260〜280万円くらいでした。
──その収入で東京で生活するってなると……。
自分の生活しか維持できないっていうレベルでしたね。年に一回昇給はあったんですが、昇給額も4〜5,000円くらいで。業界でも上位に入るような大きな会社だったんですけど、「それでもこの額か」って。

──ちなみに現在は?
総支給が30万円弱で、ボーナスが年間で4.5ヶ月なので、年収では500万円弱くらいなのかなって形です。
──2倍近くになったんですね! 同じ“民営”でも自治体の外郭団体のほうが待遇がいいんでしょうか?
私自身は公務員ではないんですが、大本の市のほうが全国的にも公務員の待遇がいい自治体なので、そういう影響もあるのかなとは思いますね。
──Kさんから見て、学童の魅力って何ですか?
実は学童で働き始める前は、学童に対してあんまりいいイメージを持っていなかったんです。言い方は悪いんですけど「教員でもない人たちが子どもを厳しく監視している場所」みたいな。
でも実際働いてみると子どもたちと同じ目線で遊ぶのがすごく楽しくて! 就学前の子どもたちは大人の助けがないとできないことがたくさんあるじゃないですか。でも小学生になるとダイナミックな遊びとか、一工夫できる工作とか、できることの幅が広がるので、そこが幼稚園や保育園とは違ったよさかなと思いますね。小学校の先生も「一緒に遊ぶ」というより「勉強を教える」ことが主になるので、そこもちょっと違うかなと。
──Kさん自身も幼稚園を経て学童で働いていますが、そういった方は多いんですか?
「小学校の非常勤から」「保育士から」って人は多いですね。
あと、学童はそういった職種と比べて事務作業があまり多くないんですよ。学童にも月々のお便りや行事の起案書、研修のレポートとかの作成はあるんですけど、小学校の先生のような日々の指導案、週案、月案とか、そういったものがない分、子どもと過ごす時間が多くなりますね。
実際、小学校や保育園から転職してきた方からも、「子ども目線で一緒に楽しめること」と「事務作業が少ないこと」の2つをよく聞きます。

──いろんな学年の子どもたちが一緒に過ごすのも学校とは違うところですよね。
そうですね、自然と異学年交流が見られるのも学童ならではのいいところかなと思います。
年度末になると、1年生の子どもたちは初めての進級なので「明日からお兄さんお姉さんになるんだよ」って伝えると、昨日まで「おれが! おれが!」ってわがままだった子どもたちが、新1年生に対して「いいよ、貸してあげるよ!」ってすごい先輩らしくなるんですよ。
子どもたちはこういった遊びや異学年交流の中で社会性を学んでいく側面もあると思っています。
「君たちが小さい先生になってね」って言うと、子どもたちも「頼りにされてる」「必要とされてる」って喜ぶので、そういった部分も意識して声かけしていますね。
──最後に、学童で働くことや放課後児童支援員になることを目指す方に一言メッセージをもらえますか?
学童の仕事って“親でもない先生でもない大人”というちょっと変わったポジションなんですけど、だからこそ子どもたちと同じ目線で一緒に遊ぶこともできますし、異学年で集団生活を送るなかで成長する子どもたちの姿を見守ることもできます。
学童クラブは幼稚園や保育園や小学校が「ちょっと合わないな」と思った方でも働きやすい場所かななんて思います。