介護施設における看護師の仕事内容は? 働くメリットと業務の特徴

幅広い年代の患者さんが集まる病院と違い、介護施設は主に高齢者が対象となります。介護施設における看護師の仕事内容にはどのようなものがあるのでしょうか?

目次
1.そもそも介護施設ってどんなところなの?
  1-1.特別養護老人ホーム(特養)
  1-2.介護老人保健施設
  1-3.介護療養型医療施設(介護療養病床)
  1-4.サービス付き高齢者向け住宅
  1-5.有料老人ホーム
  1-6.養護老人ホーム
  1-7.軽費老人ホーム
  1-8.認知症高齢者グループホーム
  1-9.デイサービス
2.介護施設での看護師の仕事内容や役割ってどんなもの?
3.病院と介護施設の違い、介護施設の業務の特徴は?
4.介護施設で働く看護師のメリットについて
  4-1.残業なしで定時に帰れることが多い
  4-2.病院に比べて体力を使う業務が少ない
  4-3.今後ニーズが高くなる介護の現場で活躍できる
5.介護施設で働く看護師が抱える不安や悩みとは?
  5-1.医療ケアの判断を任されることへの責任感
  5-2.似ているようで異なる看護と介護の在り方に対する悩み
  5-3.高齢者とコミュニケーションがとれるかどうか不安
6.介護の現場で働きたいなら特定看護師も考えてみよう!

そもそも介護施設ってどんなところなの?

病院と同じように介護施設も看護師が活躍できる職場のひとつですが、病院の業務とは異なる点がたくさんあります。そもそも、介護施設とはどのような施設のことなのかご存知でしょうか?介護施設は、介護が必要となった人が通う施設、または居住する施設のことであり、さまざまな種類のものがあります。まずは介護施設の特徴を種類別にご紹介します。


1. 特別養護老人ホーム(特養)

要介護が必要な高齢者が居住するための生活施設です。身体または精神的に著しい障害がある65歳以上の高齢者で、自宅で常時介護が必要にも関わらずそれを受けられない人が対象になっています。


日常生活を送るために介護がメインのため、医師の常駐が必要ではありません。ただ、看護師は常駐が義務付けられているため緊急時には看護師が対処することが多くなります。


2. 介護老人保健施設

要介護が必要な高齢者にリハビリなどを提供し、在宅復帰を目指すための生活施設です。入居中は、介護や機能訓練のほか、日常生活の世話などを受けられますが、自宅に戻ることを前提としている施設です。医師の常勤が義務付けられており、看護師も24時間体制で常駐しています。リハビリが主な目的なので、理学療法士などのリハビリ職が他の介護施設と比べて多いのも特徴です(公益社団法人日本理学療法士協会「統計情報 会員の分布」より)。


3. 介護療養型医療施設(介護療養病床)

要介護が必要な高齢者で、医療も必要としている人が長期的に療養するための生活施設です。しかし、介護療養型医療施設については介護保険法改正によって廃止され、2012年以降は新設されていません。今後は2018年に誕生した介護医療院にその役割は引き継がれていきます。


4. サービス付き高齢者向け住宅

高齢者が生活するための施設として提供されている住居です。60歳以上であれば入居が可能ですが、60歳未満の人で要介護または要支援認定を受けていれば入居することができます。


5. 有料老人ホーム

サービス付き高齢者向け住宅と同じように、高齢者が生活するための住居として提供されている施設です。入居するにあたって老人であることが条件ですが、年齢の制限はついていません。


6. 養護老人ホーム

経済的や環境的に困窮している高齢者が入所して生活する施設です。65歳以上であることが条件であり、環境及び経済的な理由で、自宅で養護を受けるのが難しい高齢者に提供されています。


7. 軽費老人ホーム

低所得高齢者のための住居施設です。家族からの支援を受けることができない60歳以上の高齢者で、身体的機能の低下などによって自立した生活ができない、または不安を抱えている人が入居できます。


8. 認知症高齢者グループホーム

認知症の高齢者が共同で生活し、支援や日常生活の機能訓練を受けるための生活施設です。要支援2以上の認知症の人が入居できます。


9. デイサービス

デイサービスは、ほかの施設と違って自宅から通所しながら生活の補助やリハビリテーションを受ける施設です。要介護の高い人が比較的少なく、重度の障害を持っている人もあまり多くはありません。看護師の在中人数は少なく、担当する利用者数が多くなる傾向にあります。

介護施設での看護師の仕事内容や役割ってどんなもの?

介護施設で活躍する職業と言えば、介護福祉士などの介護職を真っ先に浮かべる人が多いのではないでしょうか。ほかにも、リハビリを担当する作業療法士や理学療法士も活躍していますよね。このように、介護の専門家がたくさんいる中で、看護師は一体どのような仕事内容を担当しているのでしょうか。


介護施設に勤務する看護師の仕事は、主に施設に入居している高齢者の健康管理や、薬の管理(投薬管理)などです。介護職が日常生活のサポートをするのに対し、看護師は医療や看護の立場から入居者をサポートすることが求められています。


さらに、医師との入居者の間で調整を行い、安全で質の高いサービスを提供するために介護職員やそのほかのスタッフとも連携を図ることが求められています。つまり、チーム医療を行う一員としてほかの職種の人たちとも常にコミュニケーションをとる必要があるのです。

◆具体的な仕事内容の例
・施設全体の安全な環境の確保
・インフルエンザ発生の予防、蔓延の防止
・感染性胃腸炎など感染症発生の予防、蔓延の防止
・感染症を発症した入居者の管理
・薬の管理(投薬・服薬管理)
・バイタルチェック
・吸引、呼吸器ケア
・褥瘡のケア
・睡眠のケア
・他職種との連携を図るマネジメント など

病院と介護施設の違い、介護施設の業務の特徴は?

病院では、病棟に入院している患者のお世話を看護師が担当することがほとんどですが、介護施設では介護職がその役割を主に担っています。しかし、看護師が日常生活のサポート業務をしなくてもいいというわけではありません。


介護施設の場合は病院と違って、その場所を生活居住スペースとしている高齢者がほとんどですから、入居者が常によりよい生活を送れるように、スタッフとしてサポートすることも大切です。介護の側面から見ると、介護職が中心となったチームケアが組まれますが、医師の常駐しない介護施設では必要に応じて医療処置を行える看護師の存在は欠かせません。


また、「入居者がその人らしく生活を送るためにはどうしたらいいのか?」「入居者の家族が求めている生活をどのようにして実現させるか?」ということも考える必要があります。そのため、入居者のアセスメントも重要です。入居者から得た主観的情報と、客観的情報にもとづいて「介護度や病気が悪化しないためにどんなケアを行えばいいのか」といったことも計画していかなければいけないのです。


さらに、介護施設によっては最期をその施設で迎える高齢者も多くいます。そこで、医療ケアや日常生活だけではなく「満足できる生活を提供できているのか?」「喜びや安心感はあるのか?」といったホスピタリティの面からも、マネジメントサポートすることが求められています。


このように、医療ケアだけではなく、入居者個々のマネジメント、さらには医療チームとしてのマネジメントをしているのが、介護施設で働く看護師業務の特徴です。

介護施設で働く看護師のメリットについて

病院と看護施設では、担当する仕事内容が異なるためどっちで働いた方がいいのか迷っている人も多いかもしれません。そこで、介護施設で働く看護師のメリットについてまとめてみました。


◇残業なしで定時に帰れることが多い

病院では、急な入院対応に追われて気が付いたら定時を過ぎていたということもよくありますが、介護施設の場合は急に入居者が入ってくるということはありません。そのため、残業なしで定時にあがれることが多く、保育園や幼稚園のお迎え時間が決まっているという人でも安心して働けます。プライベートと仕事を両立させやすい職場と言えるでしょう。


◇病院に比べて体力を使う業務が少ない

介護施設では、入居者のケアは介護職が担当するため、看護師は体力を使う仕事が少なくなります。病院での看護業務は意外に肉体労働が多いため、ハードな業務に疲れてしまった人や、体力的に難しくなってきた人でも安心して働けます。産休や育休明けでも活躍しやすい環境であり、妊娠を望んでいる人も働きやすい環境と言えるでしょう。


◇今後ニーズが高くなる介護の現場で活躍できる

今回は、介護施設に限定して看護師の仕事内容を紹介しましたが、介護の現場においては訪問看護などでも活躍の場があります。訪問看護はこれからますます需要が高まってくると言われており、看護師には介護領域での専門的な知識も求められる時代になってきました。そのため、介護施設で働いた経験のある看護師の需要も高まってくるはずです。介護の現場で経験を積み、看護師のスキルアップにつなげたいという人にとっては大きなメリットとなるでしょう。

介護施設で働く看護師が抱える不安や悩みとは?

介護施設で働くメリットが分かっても、初めて介護施設で働く場合はいろんな不安も出てきますよね。実際に、介護施設で働く看護師たちがどのような悩みや不安を抱えているかを知ることができれば、解決策も見つかるかもしれません。そこで、よくあるお悩みをいくつか紹介します。


◇医療ケアの判断を任されることへの責任感

病院と違い、看護師に医療ケアの判断を求められることもあります。大きなやりがいを得られる反面、入所したばかりの時期は「その判断が正しいのか」「どう対処すべきなのか」と責任の大きさに悩むこともあるようです。しかし、医療ケアのサポートを行う場合は、医師からあらかじめ指示を受けていることがほとんどですので、それに従って判断するようにします。


また、介護施設の多くは提携している医療機関の情報を公開しているので、どの医療機関から指示を受けるのか、どんな考えを持っている医師がいるのかということを事前に調べることもできます。少しでも多くの情報を集めておくことは、責任感に対するプレッシャーを軽減することにつながるはずです。


◇似ているようで異なる看護と介護の在り方に対する悩み

病院と介護施設では、看護師の担当する業務が違うように、医療と介護という側面では看護師としての在り方も変わってきます。病院では担当していたはずの患者の生活サポートも、介護施設では介護職が担当することになり戸惑うこともあるかもしれません。しかし、介護施設では入居者の健康管理や投薬管理など看護師に求められている役割もきちんとあります。チーム医療の一員であるという意識をしっかりと持てば、必要な意見を言い合うこともできるので看護師の立場から介護をよりよくしていくことも可能です。


◇高齢者とコミュニケーションがとれるかどうか不安

入居者はほぼ高齢者のため、世代の違いや考え方のズレなどが出てくることもあります。さらに、障害を抱えていたり認知症を患っている場合は、入居者自身が症状や自分の状態を訴えることができない場合もあり、看護師として観察力も必要になってきます。そのため、コミュニケーションをとって少しでも情報を引き出すことが重要です。そこに不安を感じている人も多いかもしれませんが、チーム医療である介護の現場では、ほかにもさまざまなスタッフがいます。介護職、理学療法士、作業療法士はもちろん、ケアマネジャーや栄養士などたくさんの職種の人たちとコミュニケーションをとって、入居者をサポートしていくことになるので、一人で抱え込む必要はありません。

介護の現場で働きたいなら特定看護師も考えてみよう!

特定看護師とは、厚生労働省が指定した施設で「特定行為に係る研修」を受け修了することで、医師からの指示を待たずに特定の医療行為ができる看護師のことです。特定行為を行うにあたって、あらかじめ医師に指示書を作成してもらっておく必要はありますが、医師が常駐していない介護施設では特定看護師の存在は大きな意味があります。緊急時には処置が必要かどうかを素早くアセスメントする必要性がありますが、特定看護師であれば判断してすぐに医療処置を行うことができるのです。


必要としているタイミングでリアルタイムに医療行為を行えるようになるので、入居者のホスピタリティを向上させることにもつながります。看護師としてのスキルアップはもちろんのこと、介護の現場で貢献することもできます。仕事内容の幅が広がるため、介護施設や訪問診療において、より専門的な知識を活かすことができるはずです。


これから、介護の現場で働こうと考えている人は、特定看護師についても詳しく調べてみることをおすすめします。

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