16時間夜勤で仮眠なしの場合も? 医療介護職の夜勤の実態とは

医療や介護の現場では、24時間体制で入居者・入院患者の見守り、ケアが必要となります。そのために設けているのが「夜勤」という働き方です。一般的に大変なイメージのある夜勤ですが、実際のところ、現場ではどのような働き方をするのでしょうか? 仮眠や休憩はきちんと取れるのでしょうか? 気になる夜勤の実態に迫ります。

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夜勤のポイントは「休憩・仮眠が取れるかどうか」

「夜勤」ときくと「体力的、精神的に疲れそう……」というイメージがありませんか? 昼夜の生活リズムが逆転する夜勤は、実際に看護師や介護職に従事する人たちから「きつい」「つらい」という声もあがっています。


日本看護協会では、看護師など医療の現場で働くスタッフに仮眠をするように勧めており、労働基準法では、1日8時間以上労働する場合、1時間以上の休憩を取ることが定められています。


1時間の休憩に関しては確保されている職場がほとんどのようですが、一部では「急なトラブルや患者さんの急変で仮眠を取ることが難しい」「そもそも仮眠なし」という職場もあるようです。しっかりと休憩・仮眠が取りたいなら、就業前に休憩室や仮眠室があるかどうかチェックしておくことをお勧めします。また、体制として夜間に複数のスタッフがいることも大切なポイントです。


十分なスタッフが確保されている職場であれば、比較的休憩・仮眠が取りやすい環境と思ってよいでしょう。きちんとした休息・仮眠の確保は、仕事の質・作業の効率・安全性を上げるためにも、ワークライフバランスの面においても非常に重要になります。

看護師の勤務体制と休憩・仮眠時間の実態

病床のある病院で働く看護師にとって夜勤は必須といえます。地域や医療機関によって違いはありますが、看護師の夜勤には大きく分けて「3交代勤務」と「2交代勤務」の2パターンがあります。以下にそれぞれの特徴をまとめます。


【3交代勤務について】

3交代勤務には、日勤・準夜勤・深夜勤の3つの勤務時間があります。例をあげると「日勤 8:00〜16:45」「準夜勤 16:00〜24:45」「深夜勤 24:00〜翌8:45」といった勤務体制となります。休憩時間は1時間程度です。


【2交代勤務について】

2交代勤務には、日勤と夜勤の2つの勤務時間があります。時間帯は病院によって異なります。例をあげると「日勤 8:00~20:30」「夜勤 20:00~翌8:30」といったように12時間で交代する職場が多いようです。最近では16時間夜勤というケースもあり「日勤 8:00~17:00」「夜勤16:00~翌9:00」といったように長時間働く夜勤もあります。


日本看護協会では「16時間夜勤の場合、2~3時間の休憩時間が望ましい」との要望を出しています。そのため16時間夜勤の場合、2時間ほど仮眠が取れるようにしている病院が多いようです。


ただし、この仮眠時間は休憩時間ではなく、手の空いている労働時間内に行うものなので、急変した患者さんが出た場合には対応する必要があります。

介護現場における夜勤の勤務体制と休憩・仮眠時間の実態

次に、介護現場における夜勤の勤務体制についてご説明します。


介護現場における夜勤では、3交代制よりも2交代制・16時間夜勤を採用している職場が圧倒的に多くなっています。


【2交代制・16時間夜勤について】

施設によって時間帯に違いはありますが「日勤 8:00〜17:00」「夜勤 16:00~翌9:00」といったような時間帯で働くことになります。


労働基準法で定められた1時間の休憩を取ることはできますが、「仮眠なし」という現場も多いようです。フロアを1人で担当するいわゆる「ワンオペ」になる場合も多く、食事のお手伝いや排泄介助、定められた回数のオムツの交換、定期巡回、トラブル対応、朝食の準備などに追われ、仮眠が取りにくいという現状も。


夜間に看護師を配置する義務が定められていないことから、万が一、入居者が急変した場合、1人で対応しないとならないこともあるようです。


一方で「夜勤手当が手厚い」「夜勤後は連休になることが多い」といったメリットの面からあえて夜勤を選ぶ人もいます。

「16時間夜勤・仮眠なし」という勤務体制はあり?なし?

労働基準法には、「使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけない」とありますが、法律的に16時間連続で働く「16時間夜勤」は問題ないのでしょうか?


労働基準法には「変形労働時間制」という制度があり、一定期間の労働時間が法定労働時間という労働時間を超えない範囲内において働いてよいということになっています。


変形労働時間制では「(1)1ヶ月単位」「(2)1年単位」「(3)1週間単位」を一定期間としてとらえることができます。そのため、仮に16勤務が週2日あったとしても、1週間単位で考えると合計32時間で定められている40時間を超えないため、法律的には問題ありません。


また「仮眠なし」については、8時間を超える労働には1時間以上の休憩を与えるよう労働基準法に定められており、休憩の1時間さえきちんと取れていれば、労働基準法は満たしていることになります。


しかし、先述のとおり、作業の能率や働く人のことを考えるとやはり仮眠を確保したいもの。労働安全衛生総合研究所「介護者のための安全衛生マニュアル」には、「夜勤が長時間におよぶ場合には、2時間の仮眠をとることが勧められます」とあり、2時間を下回る30分の仮眠を取るだけでも効果が期待できるとされています。仮眠中は看護師の夜勤と同じく、何かあった場合には、休憩時間とは違うため、対応することが求められます。

夜勤のメリットとデメリットについて考えよう

一見するとデメリットが多いような気がする夜勤ですが、メリットもあります。ここでは夜勤のメリットとデメリットについてみていきましょう。


【夜勤のメリット】

・夜勤手当がつく

夜勤手当は基本給とは別に加算される仕組みなので、手当を加算するとお給料の額がグンと上がることも。また最近では、夜勤の求人難により、手当を高く設定している施設も増えてきています。


・連休が取りやすい

16時間夜勤の場合、週単位で考えると、1週間に2回が限度です。そのためまとまった休みが取りやすく、プライベートを充実させることも可能です。


【夜勤のデメリット】

・体力面の負担が大きい

夜間の長時間労働は仮眠なしというところもあり、体力的にハードであることは否めません。とくに介護施設において16時間夜勤で働く人は、日勤や3交代で働く人に比べ、寝つきが悪いなどの不眠を多く訴える人も多いそうです。そのほか、長時間の夜勤による作業の負担増によって腰を痛める人もいます。


・夜間の従事者が少ない

現場によって異なりますが、夜勤は昼間よりも働く人数が少ないため、少人数で多くの人を見る必要があります。とくに介護施設では、夜の看護師の配置が義務づけられていないこともあり、万が一容態が急変した場合には、少ない人数で対応しなければなりません。

夜勤を乗り切るためには職場・個人それぞれで対策を

医療・介護どちらの現場においても、まとまった仮眠が取りづらく、作業量が多いという現状があります。この課題に対しては、個人としてはもちろん、職場全体で対策することで、環境の改善を進める必要があります。


【職場としての対策】

・夜勤の労働環境の改善

現在の夜勤が長く、精神的・肉体的に負荷がかかっているスタッフが多い場合には、体制の見直しを図る必要があります。場合によっては、夜勤の時間を短くすることも考慮に入れる必要があります。


・仮眠時間の確保

法律の定めこそありませんが、作業効率アップや安全性のため、仮眠をとれるよう工夫してみましょう。勤務のシフト・スケジュールを変えられない場合でも、途中にわずかな仮眠を取ることによって、スタッフの疲れを和らげることができます。とくに16時間夜勤などの長時間の夜勤では、2時間の仮眠を取ることが推奨されていますが、30分程度の仮眠でも疲れを取る効果があるといわれています。


【個人としての対策】

・睡眠時間の工夫

夜勤が多い人でも昼間に寝るのではなく、夜に眠るようにしましょう。交代勤務の場合、昼間に眠らなければならないこともありますが、昼間の眠りよりも夜間の眠りのほうが質が高いといわれています。また、昼夜逆転した生活が体に悪い影響をおよぼすという報告もあります。


・お風呂に入る

布団に入る数時間前の入浴がおすすめです。お風呂は眠るための体温に徐々に近づけてくれます。

自分にあった夜勤のスタイルをみつけよう

夜勤は限られた人数で、手際よく仕事をこなす必要があるため、ハードな仕事であることに変わりはありません。睡魔や疲れと戦いつつ、効率よく働くことは難しいことかもしれませんが、自分のペースで働けるようになってくれば、ある程度の負担の解消が可能となるでしょう。


夜間の勤務体制の1つとして、介護施設では、夜勤だけの勤務で日勤はしない「夜勤専従」という働き方もあります。日勤よりも少ない日数で手取りの多い夜勤専従は、ほかの仕事と両立したい人、決められた日以外はゆっくりしたい人などにおすすめです。


16時間夜勤なら月に働くのは8日程度なので、中には2つの介護施設を夜勤専従で掛け持ちする人もいます。現場の勤務体制が多様化していく中で、どのようなスタイルが自分にあっているのか考えることも必要です。


医療介護の現場では必ず誰かがしなければならない夜勤は、デメリットばかりを考えるだけでなく、前向きにとらえ自分のリズムを考えることも大切です。睡眠の取り方をはじめとした生活リズムを整えて、体力の維持と業務の効率につとめましょう。


(参考)
労働安全衛生総合研究所「 介護者のための安全衛生マニュアル

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