目次
- 1. 児童発達支援管理責任者とは?
- ・障がいを持つ子どものために、個別支援計画の作成と提供サービスの管理をおこなう
- ・児発管とサビ管の違い
- 2. 児童発達支援管理責任者になるには?
- ・5年以上の実務経験と2つの研修修了が必要
- ・実務経験について
- ・研修について
- 3. 児童発達支援管理責任者の仕事内容
- ・個別支援計画の作成と見直し
- ・相談業務
- ・技術指導業務
- ・送迎業務
- ・管理者業務
- 4. 児童発達支援管理責任者の勤務先
- ・通所系サービス
- ・訪問系サービス
- ・入所系サービス
- 5. 児童発達支援管理責任者の働き方
- ・児発管の一日
- ・児発管の休日
- 6. 児童発達支援管理責任者の給料
- ・【全国平均】児発管の月給・時給・年収の相場
- ・【エリア別】児発管の月給・時給・年収の相場
- 7. 児童発達支援管理責任者の将来性
1. 児童発達支援管理責任者とは?
障がいを持つ子どものために、個別支援計画の作成と提供サービスの管理をおこなう
児童発達支援管理責任者(以下、児発管)とは、障がいを持つ子どもが福祉サービスを利用する際に必要な個別支援計画を作成し、提供サービスを管理する専門職です。
児発管は障害児支援施設へ1名以上配置することが義務付けられています。指導員との兼任はできませんが、管理者との兼任は可能です。
個別支援計画は子どもや保護者の意向、子どもの適性、障がいの特性などを踏まえて作成されます。サービスの提供が始まったあとも経過をモニタリングし、半年に一度は計画の評価と修正をおこないます。
身体障害や知的障害など障がいにもさまざまな形がありますが、近年は発達障害*による療育*の利用者が増えています。
*治療と教育(保育)を合わせた言葉で、それぞれの発達の状態や障がいの特性に合わせて必要な支援、訓練をおこなうことを指す。発達支援とおおむね同じ意味で用いられる
児発管とサビ管の違い
児童発達支援管理責任者(児発管)とサービス管理責任者(サビ管)は共に障がいを持つ方のために個別支援計画を作成することを主な業務としていますが、児発管が18歳未満の子ども(障害児)を対象とするのに対して、サビ管は18歳以上の大人(障害者)を対象としています。
2. 児童発達支援管理責任者になるには?
5年以上の実務経験と2つの研修修了が必要
児発管になるには、5年以上の実務経験と、基礎研修と実践研修の修了が必要です*。さらに、児発管になったあとも5年毎に更新研修を受けなくてはなりません。
全体像を図解すると次のようになります。

実務経験について
実務経験についておおまかに説明すると、相談支援業務、直接支援業務、国家資格等を必要とする業務のいずれかの実務経験が5年以上あること、障がい者や子どもを対象とした相談支援業務または直接支援業務が3年以上あることの2点を満たす必要があります。
詳しく解説すると次のようになります。
〈相談支援業務〉
相談支援業務とは、利用者の日常生活の自立に関する相談に応じ、助言や指導などの支援をおこなうことを指します。
児発管になるには、次の事業所で相談支援業務に従事した期間が5年以上、そのうち障がい者や子どもを対象とする期間が3年以上必要です。
- 相談支援事業(地域生活支援事業/障害児相談支援事業/身体障害者相談支援事業/知的障害者相談支援事業)
- 相談施設(児童相談所/児童家庭支援センター/身体障害者更生相談所/精神障害者社会復帰施設/知的障害者更生相談所/福祉に関する事務所/発達障害者支援センター)
- 福祉施設(障害児入所施設/乳児院/児童養護施設/児童心理治療施設/児童自立支援施設/障害者支援施設/精神保健福祉センター/老人福祉施設*/救護施設*/更生施設*/介護老人保健施設*/介護医療院*/地域包括支援センター*)
- 就労支援施設(障害者職業センター/障害者就業・生活支援センター)
- 教育機関(幼稚園/小学校/中学校/義務教育学校/高等学校/中等教育学校/特別支援学校/高等専門学校)
- 医療機関(病院/診療所)
*障害者や子どもを対象とする相談支援業務に従事した期間に含まれない施設
〈直接支援業務〉
直接支援業務とは、利用者の入浴、排泄、食事などの介護をおこなうこと、または、利用者が日常生活を送ったり仕事に就いたりするために必要な教育や訓練をおこなうこと(リハビリや療育も含まれます)を指します。
児発管になるには、次の事業所で直接支援業務に従事した期間が通算5年以上、そのうち障がい者や子どもを対象とする期間が通算3年以上必要です。
- 福祉事業(障害児通所支援事業/児童自立生活援助事業/放課後児童健全育成事業/子育て短期支援事業/乳児家庭全戸訪問事業/養育支援訪問事業/地域子育て支援拠点事業/一時預かり事業/小規模住居型児童養育事業/家庭的保育事業/小規模保育事業/居宅訪問型保育事業/事業所内保育事業/病児保育事業/子育て援助活動支援事業/障害福祉サービス事業、/老人居宅介護等事業*)
- 福祉施設(障害児入所施設/助産施設/乳児院/母子生活支援施設/保育所/幼保連携型認定こども園/児童厚生施設/児童家庭支援センター/児童養護施設/児童心理治療施設/児童自立支援施設/障害者支援施設/老人福祉施設*/介護老人保健施設*/介護医療院*/療養病床関係病室*)
- 障害者雇用施設(特例子会社*/助成金受給事業所*)
- 教育機関(幼稚園/小学校/中学校/義務教育学校/高等学校/中等教育学校/特別支援学校/高等専門学校)
- 医療機関(病院/診療所)
*障害者や子どもを対象とする直接支援業務に従事した期間に含まれない施設
ただし、次の資格を保有していない場合は直接支援業務に従事した期間が通算8年以上必要となります。
保育士/児童指導員任用資格/社会福祉主事任用資格/精神障害者社会復帰施設指導員任用資格/介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)以上
〈国家資格等が必要な業務〉
次の国家資格等が必要な業務に通算5年以上従事している場合、障がい者や子どもを対象とする相談支援業務または直接支援業務に従事した期間が通算3年以上で実務要件を満たします。
医師/歯科医師/薬剤師/保健師/助産師/看護師/准看護師/歯科衛生士/理学療法士/作業療法士/言語聴覚士/視能訓練士/義肢装具士/あん摩マッサージ指圧師/はり師/きゅう師/柔道整復師/管理栄養士/栄養士/社会福祉士/介護福祉士/精神保健福祉士
なお、国家資格等が必要な業務に従事した期間と相談支援業務または直接支援業務に従事した期間は同時期でもOKです。
研修について
研修は勤務先の事業所(児発管として働こうとする事業所)経由で受講を申し込みます。
研修の受講要件とカリキュラムは次のとおりですが、都道府県によって異なる場合がありますので、研修を受講する際は必ずお住まいの地域の情報をご確認ください。
〈基礎研修〉
基礎研修は先に挙げた実務要件に2年満たない段階から──つまり、相談業務や直接支援業務に従事した期間がルートA・Bの場合は通算3年以上、ルートCの場合は通算1年以上で受講可能です。
基礎研修は次の2つの研修から成り、主に児発管の基本姿勢とサービス提供のプロセスについて学びます。
- 相談支援従事者初任者研修の講義の一部(11.5時間)
- 児童発達支援管理責任者基礎研修の講義と演習(15時間)
〈実践研修〉
実践研修を受講するには、実務要件を満たすと同時に、過去5年間に2年以上相談支援業務または直接支援業務に従事した経験が必要です。
実践研修では、サービス提供に加え人材育成や多職種・地域連携についても学びます。
- 児童発達支援管理責任者実践研修の講義と演習(14.5時間)
〈更新研修〉
更新研修を受講するには、現に児発管として働いているか、過去5年間に2年以上児発管として働いた経験が必要です。
更新研修では、自らの業務を振り返ると共にサービスの質の向上や人材育成のためのスーパービジョンについて学びます。
- 児童発達支援管理責任者実践研修の講義と演習(13時間)
3. 児童発達支援管理責任者の仕事内容
個別支援計画の作成と見直し
児発管の主な業務は個別支援計画の作成と見直しです。具体的には次のようなプロセスで、子どもや保護者、関連機関と協力しながら計画の作成・実行・見直しをおこないます。

相談業務
支援の過程で子ども本人はもちろん、その家族(両親やきょうだいなど)からの相談に応じます。
技術指導業務
サービスを提供する責任者として、ほかの指導員に対して技術指導をおこないます。
送迎業務
放課後等デイサービス(放デイ)や児童発達支援(児発)などの通所施設の場合、事業所と学校や自宅間の送迎サービスをおこなっていることがあります。
管理者業務
児発管が事業所の管理者を兼任する場合、見学者対応や契約業務、請求業務、従業員の労務管理、事業所の収支管理などをおこなわなくてはなりません。
求人情報だけでは、業務内容が詳しくわからないケースも多くあります。入職後のミスマッチを防ぐためにも、面接では「どのようなキャリアプランを描いているのか」「どのような経験を積みたいのか」を伝えられるよう準備しておきましょう。
4. 児童発達支援管理責任者の勤務先
児発管は障害児支援サービスを提供する事業所に配置が義務付けられており、通所系・訪問系・入所系に分けることができます*。そして、障害児支援サービスの9割が通所系となっています。

通所系サービス
通所系のサービスには、小学校就学前の子どもを対象とする児童発達支援(児発)と、小学校〜高校に就学中の子ども*を対象とする放課後等デイサービス(放デイ)があります。
児発では、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練などをおこないます。
放デイでは、放課後や休校日(土曜日、夏休みなど)を利用して、生活能力向上のために必要な訓練や創作活動、作業活動、地域交流などをおこないます。
事業所によってそれぞれ特色ある療育プログラムを提供しているため、自分の経験や得意分野を活かせる事業所を探してみてもいいでしょう。
tips|児童発達支援“事業所”と児童発達支援“センター”の違い
児童発達支援事業には通常の“事業所”と“センター”があります。
児童発達支援“事業所”は身近な療育の場として、利用者が通いやすいよう地域内に数多く整備されています。
それに対して、児童発達支援“センター”は地域の障害児支援の中核を担います。“事業所”と同じく療育サービスを提供すると同時に、関係機関と連携しながら次のような支援もおこなっています。
- 地域内の障害児とその家族に対する相談支援
- 地域内の事業所に対する支援
- 居宅訪問型児童発達支援などの訪問支援
訪問系サービス
訪問系のサービスには、子どもの自宅を訪問する居宅訪問型児童発達支援と、保育所などを訪問する保育所等訪問支援があります。
居宅訪問型児童発達支援では、重度の障がいにより外出が難しい場合、子どもの自宅を訪問して児発や放デイ同様の支援をおこないます。
保育所等訪問支援では、障がいを持つ子どもが集団生活に適応するために専門的な支援を必要とする場合に、保育所や幼稚園、認定子ども園などを訪問して、子ども本人や施設のスタッフに対して必要な支援をおこないます。
入所系サービス
障害児入所施設では、障がいを持つ子どもを保護*すると共に、日常生活の指導や知識技能の付与をおこないます。
障害児入所施設には福祉型と医療型があり、肢体不自由児や重症心身障害児など、医療的なケアが必要な場合は医療型に分類されます。
5. 児童発達支援管理責任者の働き方
児発管の一日
集団療育をおこなっている放課後等デイサービスを例に取ると、児発管の一日はおおむね次のようになります。

児発管の休日
通所支援(児発や放デイ)の場合、カレンダー通り土日祝日がお休みの事業所も一部にありますが、多くが日曜祝日を休みとし、土曜日は開いています。そのため児発管の休日も日曜祝日+月曜日〜土曜日の間に1日の週休2日制となることが多いようです。
年末年始は通常お休みとなるほか、夏季休暇を取得できる事業所もあります。
6. 児童発達支援管理責任者の給料
ジョブメドレーに掲載されている求人から児発管の賃金相場を算出しました。なお、残業手当など月によって支給額が変動する手当は集計対象外のため、実際に支払われる賃金はこれより多くなる可能性があります。
【全国平均】児発管の月給・時給・年収の相場
2024年12月時点の全国の児発管の時給・月給・年収の相場は次のとおりとなりました。
下限平均 |
上限平均 |
総平均 |
|
---|---|---|---|
パート・アルバイトの時給 |
1,628円 |
1,792円 |
1,696円 |
正職員の月給 |
29万7,577円 |
36万6,463円 |
32万6,743円 |
正職員の年収* |
416万6,078円 |
513万482円 |
457万4,402円 |
児発管の賃金相場は、正職員で児童指導員より30%程度高い水準となっています。
【エリア別】児発管の月給・年収の相場
児発管の賃金相場をエリア別に見ると首都圏に次いで北関東が高い結果となりました。


7. 児童発達支援管理責任者の将来性
児童福祉法と障害者自立支援法が改正され、障害児支援をめぐる環境が大きく変化したのは2012年のことです。
〈改正のポイント〉
- 障害児の定義を見直し、発達障害児を支援対象に含める
- 障害児支援事業から障害の種類(知的障害、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、重症心身障害)による区別をなくし、通所系と入所系の事業にそれぞれ再編
- 通所系の事業として放デイと保育所等訪問支援を創設
- 障害児支援事業所に児発管を1名以上配置し、個別支援計画を作成する
この改正によって生活圏内でサービスを利用しやすいように施設の整備が進められた結果、障害児支援事業所は2013年から2021年までの8年間で約4倍に急増しました。

障害児支援はこのように量の拡充が急速に進んだ一方で、質の拡充には多くの課題が残っています。
児発管についても施設の急増に人材の育成が追いつかず、さまざまな経過措置が取られてきました。しかし、それも2022年3月末で終了となり、児発管として働くには実務経験に加え基礎研修と実践研修の修了が必須となります。
さらには児発管になったあとにも5年毎に更新研修が必要になるなど、児発管には障害児支援の要としてより質の高いサービスを提供することが求められています。
保育士や児童指導員などとして障害児支援に携わっている方、児発管の実務要件を満たす方は積極的にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
