目次
- 1. 診療放射線技師とは?
- ・放射線を用いた検査や画像診断、治療に携わる医療技術職
- ・診療放射線技師と臨床検査技師の違い
- 2. 診療放射線技師になるには?
- ・診療放射線技師免許が必要
- ・診療放射線技師国家試験の概要
- ・診療放射線技師国家試験の合格率の推移
- 3. 診療放射線技師の仕事内容
- ・検査・画像診断
- ・放射線治療
- ・放射線機器管理
- ・放射線被ばく管理
- 4. 診療放射線技師の勤務先
- ・総合病院
- ・専門病院やクリニック
- ・検査施設
- ・一般企業
- 5. 診療放射線技師の働き方
- ・診療放射線技師の一日
- ・診療放射線技師の休日
- 6. 診療放射線技師の給料
- ・【全国平均】診療放射線技師の月給・時給・年収の相場
- 7. 診療放射線技師の将来性
1. 診療放射線技師とは?
放射線を用いた検査や画像診断、治療に携わる医療技術職
診療放射線技師とは、病院やクリニックにおいて医師の指示のもとで放射線を用いた検査や画像診断、治療に携わる医療技術職です。英名はRadiological Technologist(Ragiological=放射線医学の、Technologist=科学技術者)です。
放射線の取り扱いには特別な注意が必要なため、日本で医師と歯科医師以外で人体に放射線を照射することが認められているのは診療放射線技師のみです。現代医学の世界では専門領域の細分化と分業化が進んでいるため、放射線を用いた検査はもっぱら診療放射線技師がおこなっています。
診療放射線技師が携わる業務は幅広く、一般X線撮影(レントゲン)以外にも乳房X線撮影(マンモグラフィ)や消化管造影検査、血管造影検査、CT検査、MRI検査、RI検査、骨密度検査、超音波検査、さらに、がんの三大療法の一つである放射線治療などがあります。
診療放射線技師と臨床検査技師の違い
診療放射線技師と臨床検査技師は共に検査に関わる医療技術職ですが、放射線を用いる検査を診療放射線技師が、放射線を用いない検査を臨床検査技師が担当します。
ただし、診療放射線技師は放射線は使用しない検査でも主に画像診断に分類されるもの(MRI検査、超音波検査、眼底写真検査)を実施できるため、整理すると次の表のようになります。
検査の種類 |
検査例 |
担当する技師 |
---|---|---|
放射線を用いる検査 |
レントゲン、マンモグラフィ、CT、消化管造影、血管造影など |
診療放射線技師 |
放射線を用いない検査 |
MRI、超音波、眼底写真* |
診療放射線技師 臨床検査技師 |
そのほかの検査 (生理機能検査、検体検査) |
心電図、脳波、病理、血液、遺伝子など |
臨床検査技師 |
また、“診療(診断と治療)”という名前のとおり、診療検査技師は検査だけでなく治療に携われる点も臨床検査技師と異なります。
2. 診療放射線技師になるには?
診療放射線技師免許が必要
放射線の取り扱いには専門的な知識と技能が不可欠なため、診療放射線技師として働くためには国家試験に合格し、診療放射線技師免許を取得しなくてはなりません。
診療放射線技師国家試験を受験するには、高校卒業後、診療放射線技師の養成校(4年制大学や3年制専門学校)に進学して、所定のカリキュラムを修了する必要があります。
なお、診療放射線技師の養成校は全国診療放射線技師教育施設協議会のWebページで確認できます。
>全国診療放射線技師教育施設協議会|会員校一覧
診療放射線技師国家試験の概要
診療放射線技師国家試験は例年次のスケジュールで実施されています。
- 12月中旬〜1月上旬:書類提出
- 2月中旬:試験日
- 3月下旬:合格発表
試験問題は1問1点で全200問出題されます。合格基準点は採点除外問題がなければ毎年一定の120点(正答率60%)です。
そのほか、国家試験に関する最新情報は以下の記事で解説しています。
>【2025年】第77回診療放射線技師国家試験の日程と概要、過去の結果と合格率
診療放射線技師国家試験の合格率の推移
診療放射線技師国家試験の過去5年間の合格率は74〜87%の間で推移しています。
直近、2024年2月に実施された第76回診療放射線技師国家試験の結果は次のとおりです。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
全体 | 3,565人 | 2,834人 | 79.5% |
新卒 | 3,208人 | 2,767人 | 86.3% |
既卒 | 357人 | 67人 | 18.8% |
このように既卒者の合格率は新卒者の4分の1以下となっています。一発合格を目指すには無理のない学習計画と体調管理が大切です。
また通常、診療放射線技師の養成校では卒業試験を実施しています。卒業試験に合格しないと国家試験を受験できないため、実質的に国家試験の“足切り”となっています。
3. 診療放射線技師の仕事内容
診療放射線技師の主な仕事は放射線を使用した検査ですが、業務を安全に遂行するための機器管理や被ばく管理も大切な仕事の一つです。
検査・画像診断
診療放射線技師の主な業務となります。医師の指示に基づいて患者さんの体内を撮影し、病気の早期発見や病巣の特定に貢献します。診療放射線技師がおこなう検査には次のようなものが挙げられます。
- 一般X線撮影(レントゲン):X線を用いて主に胸部(肺)や口腔を撮影します
- 乳房X線撮影(マンモグラフィ):乳房を圧迫して撮影し、腫瘍の有無や石灰化の有無を調べます
- 消化管造影検査:バリウムが口から食道・胃・十二指腸へ流れていく様子をX線を連続して照射して撮影します
- 血管造影検査:大腿動脈などから目的の部位に向けてカテーテルを挿入し、造影剤を投与することで血管内腔を撮影します
- CT検査:体の断面や内臓や骨格、血管の3D画像を撮影します
- MRI検査:磁気共鳴画像診断装置と呼ばれる装置で体の断面を撮影します
- RI検査(核医学検査):放射性医薬品を静脈注射などによって投与し、目的の臓器に集まった放射性物質から放出される微量の放射線(ガンマ線)をガンマカメラで撮影することで、臓器の形や働きを検査します
- 骨密度検査:照射したX線がどのくらい吸収されたかによって骨密度を測定します(DXA法)。X線を使用せず、かかとから超音波を当てる測定法もあります(超音波法)
- 超音波検査:腹部、乳房、心臓、乳腺、甲状腺などに超音波を当て、その反射波(エコー)を画像にします
放射線治療
リニアックと呼ばれる装置を使って高エネルギーX線を幹部に照射し、がん細胞を破壊します。放射線治療は手術、抗がん剤治療と並んで、がんの三大療法とされています。
放射線機器管理
放射線機器が安全に使用できるよう、点検や品質管理をおこないます。
放射線被ばく管理
診療放射線技師は患者さんが浴びる放射線量を適切に管理・記録し、放射線検査や治療を受けるメリットが被ばくのリスクを上回る場合に限り放射線を照射することになっています。
tips|診療放射線技師法の改正について
主に医師の負担軽減を目的に診療放射線技師法が改正され、検査のために必要な医行為の一部(静脈路の確保や医薬品の投与、抜針、止血など)を診療放射線技師が実施できるようになりました(参考:厚生労働省)。
この改正診療放射線技師法は2021年10月1日から施行されていますが、実際にこれらの医行為をおこなうには所定の研修を修了する必要があります。
4. 診療放射線技師の勤務先
総合病院
中規模〜大規模の総合病院に勤務する場合、さまざまな症例に触れながら診療放射線技師に必要な知識や技能を幅広く身に付けることができます。
総合病院の放射線科は技師の育成方針がしっかりしており、最初の数年で一般X線撮影に始まり、CT検査やMRI検査、さらに消化管造影検査、血管造影検査、RI検査と段階を踏んですべての検査領域を経験することができます。その後どの領域で専門性を磨くか決め、認定資格の取得などを目指すケースが多いようです。
国立病院や大学病院などの中核病院であれば、最新の診療技術に触れることができるのも魅力です。
ただし、月に数回は当直、ないしはオンコールがあります。
専門病院やクリニック
専門病院やクリニックに勤務する場合、胸部X線撮影、CT検査、MRI検査、消化管造影検査が中心となります。婦人科の場合は乳房X線撮影と骨密度検査、整形外科の場合は一般X線撮影と骨密度検査など、診療科目によって検査に偏りがあることもあります。
スタッフが限られているため、患者さんの案内や事務作業など撮影以外の業務を任されるケースが多いものの、一般的に残業が少なく当直もないため働きやすい職場と言えます。
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検査施設
病院の健診・検診センターや健診クリニック、保健所などの検査施設に勤務する場合、胸部X線撮影、乳房X線撮影、CT検査、MRI検査、消化管造影検査が中心となります。施設内だけでなく、検診車で企業や学校を巡回することもあります。
中核病院の健診・検診センターになると、最新機器を使って高度な専門性を求められる検査に携わることも可能です。
残業が少なく週休2日でワークライフバランスが取りやすい点も魅力です。
一般企業
診療放射線に関する知見を活かして、一般企業で活躍する診療放射線技師もいます。
最も多いのが、医療機器メーカーでアプリケーションスペシャリストとして働くケースです。専門知識を活かして診療放射線機器の導入支援などをおこないます。
また電力会社や原子力関連企業、大学の研究室など、業務で放射線を扱う企業や団体に就職する診療放射線技師もいるようです。
5. 診療放射線技師の働き方
診療放射線技師の一日
総合病院の放射線科に勤務する場合を例に取ると、診療放射線技師の一日はおおむね次のようになります。
なお、病院の場合は入院患者の急変や緊急搬送による検査依頼に備えて当直やオンコールもあります。
診療放射線技師の休日
診療放射線技師の休日は勤務先によって異なり、病院の場合は4週8休、クリニックの場合は日曜祝日+平日1日の週休2日制、保健所や健診・検診センターなどの検査機関や医療機器メーカーなどの一般企業の場合は土日祝日の完全週休2日制となることが一般的です。
6. 診療放射線技師の給料
ジョブメドレーに掲載されている求人から診療放射線技師の賃金相場を算出しました。なお、残業手当など月によって支給額が変動する手当は集計対象外のため、実際に支払われる賃金はこれより多くなる可能性があります。
【全国平均】診療放射線技師の月給・時給・年収の相場
2023年11月時点の全国の診療放射線技師の時給・月給・年収の相場は次のとおりとなりました。
下限平均 |
上限平均 |
総平均 |
|
---|---|---|---|
パート・アルバイトの時給 |
1,593円 |
1,919円 |
1,756円 |
正職員の月給 |
22万6,607円 |
30万5,414円 |
26万6,011円 |
正職員の年収* |
317万2,505円 |
427万5,791円 |
372万4,148円 |
なお、過去に「なるほどジョブメドレー」でインタビューした診療放射線技師Eさんの場合、循環器専門病院に就職した1年目の年収は360万円。その後スキルアップのために総合病院へ転職し、経験を積んだのちに元の病院に戻った結果、14年目には年収650万円となっていました。
7. 診療放射線技師の将来性
患者さんの体を傷つけることなく検査や治療が可能な診療放射線は現代医学に欠かせない技術です。
とくに病気の予防や早期発見・早期治療の重要性があらためて強調されるなか、定期健康診断や検診に携わる診療放射線技師の活躍の場はますます増えそうです。
また、医療従事者の中でも診療放射線技師は男性の多い職種ですが、近年は乳がん検診(マンモグラフィ)への関心の高まりから女性技師の需要も増えています。
診療放射線技師は、一部の間で「撮影ボタンを押すだけの人」という意味で「スイッチマン」と揶揄する声もありました。しかし実際のところ、医師の依頼の意図を正しく理解してより良い画像を撮影するには、多くの症例を経験すること、新たな技術を習得し続けることが重要な職種です。
認定資格の取得を通じて専門性を追求する道もあり、自らの技術が適切な治療につながったときには大きなやりがいを感じられるでしょう。
参考
- e-Gov法令検索|診療放射線技師法