1.相談支援専門員とは?
・障がいを持つ方と福祉サービスをつなぎ、生活を支える
相談支援専門員とは、障がいを持つ方が福祉サービスをうまく利用できるようサポートする職種です。
障害福祉サービスに関することをはじめ、住まいや地域生活といった暮らしに関することなど、さまざまな悩みに応じる“相談支援”を通して、障がいを持つ方の生活を支えます。
2.相談支援専門員になるには?
・相談支援従事者初任者研修を修了する
相談支援専門員になるには、相談支援従事者初任者研修を修了する必要があります。研修を受けるには一定の実務経験が必要となりますが、保有資格や従事している業務内容によってその期間は異なります。
なお、相談支援専門員の資格は更新制のため、取得後も5年ごとに相談支援従事者現任者研修を受講しなければなりません。
・相談支援従事者初任者研修
相談支援専門員の資格取得に必要な相談支援従事者初任者研修は、各都道府県で実施されています。開催日程や実施要領は各自治体のホームページなどをご確認ください。
講義・演習の研修時間は合計で42.5時間(7日間)、加えて約2ヶ月間の実習を要します。研修のカリキュラムは地域によって異なり、東京都の場合は次の通りです。
初任者研修の実習は“地域と繋がること”を目的とし、受講者が現在対応している相談支援の事例を一つ選定しておこないます。講義・演習の内容を踏まえながらアセスメント*の実施やサービス等利用計画案の作成をし、地域の基幹相談支援センター、相談支援事業所、自分が所属する事業所の先輩等からアドバイスをもらいつつ相談支援を実践していきます。
・相談支援従事者現任者研修
相談支援専門員の資格更新に必要な相談支援従事者現任者研修は、各都道府県で実施されています。開催日程や実施要領は各自治体のホームページなどをご確認ください。
講義・演習の研修時間は合計で24時間(4日間)、加えて約1ヶ月の実習を要します。研修のカリキュラムは地域によって異なり、東京都の場合は次の通りです。
現任者研修の実習は“自己決定、権利擁護、ネットワーク作り”を目的に、受講者が現在対応している相談支援の事例を一つ選定しておこないます。まずはグループスーパービジョン*を通して自分の支援に偏りがなかったか、アセスメントが適切であったかを確認します。その後地域の相談支援機関からスーパービジョンを受けつつ、研修で学んだことを事例内で実践していきます。
なお、相談支援従事者現任者研修は5年ごとに受講する必要があり、受講しなかった場合は相談支援専門員の資格を失います。
3.相談支援専門員の働き方
・仕事内容
相談支援専門員の仕事内容は、障がいを持つ方やその家族の相談に応じること(相談支援)です。主に相談内容に対する情報提供や助言、必要な障害福祉サービスの利用に繋げる支援や、関連機関との連絡調整などをおこないます。
相談支援は、相談内容に応じて基本相談支援、地域相談支援、計画相談支援、障害児相談支援の4種類に分かれます。
基本相談支援は、相談支援全体のベースであり、計画相談支援、地域相談支援、障害児相談支援へ繋ぐ起点となります。
地域相談支援には、施設や病院などを出て、自立した地域生活を目指す人を支援する地域移行相談支援と、既に自立した地域生活を送る人が、地域で暮らし続けるための地域定着相談支援があります。入居支援などのサポートのほか、24時間対応の連絡体制を設けて支援をおこないます。
計画相談支援には、障害福祉サービスの利用までをサポートするサービス利用支援と、既に提供が始まっているサービスを見直す継続サービス利用支援があります。サービス等利用計画(案)の作成やモニタリング、担当者会議などをおこないます。
障害児相談支援には、通所サービスの利用までをサポートする障害児支援利用援助と、既に利用開始した通所サービスの継続をサポートする継続障害児支援利用援助があります。障害児支援利用計画(案)の作成やモニタリングなどをおこないます。
・働く場所
相談支援専門員が働く場所は主に、地域の相談支援事業所や基幹相談支援センターです。
<相談支援事業所>
地域の相談支援をおこなう事業所です。一般相談支援事業所、特定相談支援事業所、障害児相談支援事業所の3種類があり、それぞれで提供する相談支援の種類が異なります。
相談支援事業所には、相談支援を単体でおこなっている場合と、訪問介護事業所などの別の事業所に併設している場合があります。
<基幹相談支援センター>
地域における相談支援の中核となり、総合的な相談支援業務をおこないます。障がいの種別や程度に関係なく助言・情報提供をおこなうため、「どこに相談すればいいのかわからない」といった場合に頼りになるのが基幹相談支援センターです。
基幹相談支援センターでは、相談内容に応じて地域の相談支援事業所を紹介することもあれば、反対に相談支援事業所側から対応困難なケースを依頼される場合もあります。
また活動の範囲は相談支援のみに留まらず、地域の相談支援体制を強化するための人材育成や、障がい者の虐待防止・権利擁護といった役割も担います。
・相談支援専門員の一日
計画相談支援事業所に勤務する相談支援専門員の一日の流れは次のようになります*。
なお、1件の訪問にかかる時間は訪問の目的によって異なります。過去にインタビューをした計画相談支援事業所で勤務する相談支援専門員の方は次のように話していました。
・相談支援専門員の休日
相談支援事業所で働く場合、シフト制なのか固定休なのかは事業所によって異なります。求人を探す際には休日に関する情報をしっかり確認しておきましょう。
基幹相談支援センターで働く場合、月〜金の平日を開所日としていることが多いため、土・日・祝休みが多いでしょう。ただし、基幹相談支援センターによって異なる場合もあるため、相談支援事業所と同様、求人を探す際には休日に関する情報をしっかり確認しておきましょう。
4.相談支援専門員の賃金相場
ジョブメドレーに掲載されている求人から相談支援専門員の賃金相場を算出しました。なお、残業手当など月によって支給額が変動する手当は集計対象外のため、実際に支払われる賃金はこれより多くなる可能性があります。
・【全国平均】相談支援専門員の月給・時給・年収の相場
2023年11月時点の全国の相談支援専門員の時給・月給・年収の相場は次のとおりとなりました。
上限平均 | 下限平均 | 総平均 | |
---|---|---|---|
パート・アルバイトの時給 | 1,575円 | 1,193円 | 1,384円 |
正職員の月給 | 32万2,813円 | 25万4,842円 | 28万8,827円 |
正職員の年収* | 451万9,376円 | 356万7,782円 | 404万3,579円 |
相談支援専門員の給与は、基幹相談支援センターに勤務する場合か、相談支援事業所に勤務する場合で異なります。また相談支援事業所が別の事業所と併設している場合、母体となる事業所の給与規定が影響することも考えられます。
5.相談支援専門員の将来性
厚生労働省の資料によると、2013年から2019年にかけて、障害福祉サービスの利用者は94.8万人から123万人と約3割増加しています。また2013年から2017年にかけて、相談支援事業所は約4,600ヶ所から約9,400ヶ所と約2倍の数に増加しています。地域全体で障がいを持つ方をサポートする社会において、相談支援専門員の活躍や、相談支援の担い手の拡大が期待されているのです。
障がいを持つ方の暮らしを支える相談支援専門員。今までの経験や保有資格を活かしてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
参考
- 厚生労働省|障害福祉分野の最近の動向
- 厚生労働省|相談支援専門員研修制度の見直しに関する今後の取り扱い