
1.「看護師のクリニカルラダー」っていったい何?
「看護師のクリニカルラダー」とは、おもに看護師長もしくは指導者と一緒に活用する指標です。「ラダー(ladder)=はしご」の用語が意味するとおり、「現在の自分が看護師として何を望まれているのか」 「今後どのような学習をしていけばよいのか」という到達目標を段階的に示すものです。

現状、全国の病院で活用されているものではありませんが、看護協会が2014年から重点事業として取り組んでおり、導入している病院では、看護の質向上・自己学習や技術の習得状況の目安となっています。
2.「看護師のクリニカルラダー」はいつ活用する?
「看護師のクリニカルラダー」は、おもに病棟での師長もしくはプリセプター(先輩看護師)などの指導者との面談のときに活用されます。
看護師は指導者とラダーを確認することで日々の業務で見失いがちな自分の役割や今後の目標を再確認することができ、指導者はそれぞれの到達目標に応じた適切な評価をおこなうことができます。
3.パトリシア・ベナーの看護理論
「看護師のクリニカルラダー」の起源は、アメリカの学者パトリシア・ベナーが提唱した看護理論にあります。
ベナーはアメリカの1,000人以上の看護師を対象とした調査から、看護師のキャリアが「Novis(初心者)」「Advanced Beginner(新人)」「Competent Proficient (一人前)」「Proficient(中堅)」「Expert(達人)」の5段階に分類されることを発見し、看護師にとって「経験年数」ではなく「経験の質」が重要であると説きました。
そのため、日本の看護協会が開発した「看護師のクリニカルラダー」においても、レベル1の初心者からレベル5の達人までの5段階評価を採用しています。ラダーには「看護師歴◯年目」という表記はなく、あくまでも“看護師としての質”を重視した評価をおこなっているところがポイントです。
レベル | 段階 | 基本的な到達目標 |
---|---|---|
レベルⅠ | 初心者(novice) | 基本的な看護手順に従い必要に応じ助言を得て看護を実践する |
レベルⅡ | 新人(advanced beginner) | 標準的な看護計画に基づき自立して看護を実践する |
レベルⅢ | 一人前(competent) | ケアの受け手に合う個別的な看護を実践する |
レベルⅣ | 中堅(proficient) | 幅広い視野で予測的判断をもち看護を実践する |
レベルⅤ | 達人(expert) | より複雑な状況において、ケアの受け手にとって最適な手段を選択しQOLを高めるための看護を実践する |
(参考:日本看護協会版「 看護師のクリニカルラダー」)
4.看護師としてのキャリアアップを考える
パトリシア・ベナーは、看護師は経験年数ではなく、患者にコミットメントし、正確で的確な看護を実践できることが重要であり、それこそが看護の達人であると説きました。
看護師として働きはじめたばかりの人も、先輩看護師としての役割を持つ人も、「看護師のクリニカルラダー」の5段階を意識して、自身のキャリアを考えてみるのもいいかもしれません。