会社がつくる保育園? 企業主導型保育施設のメリット・デメリット

現在、待機児童の問題が表面化し、その対策が急務となっています。そこで始まったのが、「企業主導型保育事業」です。ここでは、企業主導型保育事業の特徴、企業側や利用者、保育士のメリットやデメリットなどについてお話しします。

企業主導型保育画像

「企業主導型保育事業」開始の背景

「企業主導型保育事業」とは、簡単にいうと、企業が保育所を設置して運営を行うことを内閣府が助成する制度です。待機児童を減らし、子どもをもつ親の仕事と子育てのサポートすることを目的として、平成28年度(2016年)からはじまりました。

“会社がつくる保育園”の特徴

企業主導型の保育施設には、どのような特長があるのでしょうか? 以下に主なポイントをまとめてみました。


<主な特徴>

・従業員の働き方に応じた保育サービスが提供できる(夜間や休日、1日4〜5時間や週2〜3回などの短時間保育への対応も可能)
・複数の企業が共同で設置・利用できる
・地域の子どもの受け入れができる
・認可保育施設と同等の助成が受けられる(※以下の条件を満たす必要あり)

<主な条件>

・一般事業主(子ども・子育て供出金を負担している事業者)であること
・以下(1)〜(3)のいずれかに当てはまること

(1)業員向けに新たに保育施設を設置する場合
(2)既存施設で新たに定員を増やす場合
(3)既存施設の空き定員を他企業向けに活用する場合

保育士などの職員配置数は何人?

企業主導型の保育施設では、保育の質を確保するために、以下のように保育士などの職員配置の基準が定められています。


・0歳の乳児3人に1人以上
・1−2歳の幼児は6人に1人以上
・3歳の幼児20人に1人以上
・4−5歳の幼児30人に1人以上

上記の区分に応じた数の合計に「1」を加えた数以上の保育者を配置することが必要とされ、最低2人を配置することが決められています。


また、職員の半数以上は保育士の資格を持つ者とされ、保育士以外の職員は地方自治体などが行う研修を受けなければなりません。

企業主導型保育施設の設備基準

企業主導型保育事業の保育施設では、設備の基準が以下のように決められています。


0−1歳児では、乳児室1.65m²/人、ほふく室3.3²/人の広さを確保する必要があります。2歳児以上では、保育室または遊戯室1.98²/人の広さを確保する必要があります。


これは、定員20名以上の事業所内保育施設と同等の基準となります。その他、屋外遊技場や給食に関する事項も事業所内保育施設と同じ基準が設けられています。

院内保育園や事業所内保育園との違い

企業が従業員のために設置する保育施設であるというポイントは同じですが、施設の位置づけや職員数、資格の違いなどがあります。1つずつ見ていきましょう。


1. 認可施設か認可外施設か


「事業所内保育施設」は、地域型の保育事業として市町村の認可が必要となります。事業所で働く従業員の利用であっても、市町村による「保育の必要性」の認定が必須です。短時間勤務やパートタイムなど、保育の認定を受けられないケースでは利用できません。


「企業主導型保育施設」は認可外の保育施設です。保育施設と利用者の直接契約ができ、保育認定されていない従業員でも利用可能です。そのため、週に数日間のみの利用など、認可施設では受け入れが難しい保育も対応可能となります。


2. 保育者の数はほぼ同じ


事業所内保育施設、企業主導型保育施設、認可外保育施設の各施設について、内閣府の「企業主導型保育事業の概要」で説明されています。


それによると、定員20名以上の事業所内保育施設では、0歳児3人に1人、1−2歳児6人に1人、3歳児20人に1人、4−5歳児3人に1人の保育士を配置しなければなりません。


企業主導型保育施設では、定員20人以上の保育所の配置基準+1名以上、最低2人の保育者を配置しなければなりません。


資格に関しては、定員20名以上の事業所内保育施設では、全員保育士(保健師・看護師のみなし特例1人まで)、定員19名以下の事業所内保育施設では、半分の人数が保育士である必要があります。


企業主導型保育施設では、半分の人数が保育士であることが決められています。また、保育士の資格がない職員には、研修が義務付けられています。


3. 地域枠(従業員以外の利用者枠)


事業所内保育施設では、地域枠(従業員以外の利用者枠)が定員の4分の1程度と設定されています。


企業主導型保育施設では、定員の2分の1までの範囲で、独自に地域枠が決められます。また、従業員だけで定員に達する場合、地域枠を作らないことも可能です。

企業主導型保育事業のメリット

企業主導型保育事業における「企業」「利用者」「保育士」のメリットをまとめてみました。


<企業>
・従業員の就労状況に応じた対応が可能である
・妊娠中、子育て中の離職率の低下につながり、人材を確保できる
・従業員の満足度が向上する
・地域住民にも施設を開放することによって、地域貢献につながる
・複数の企業で共同設置すると、単独で運営するよりもリスクを低減できる
・認可施設と同じように助成が受けられる

<利用者>
・利用者の就労スタイルに合わせて子どもを預けることができる
・認可保育園と同様のレベルの料金で利用できる
・社宅や職場近くに保育施設が設置されることが多く、便利に利用できることが多い
・職員数や設備には、一定の基準が設けられているので安心できる

<保育士>
・保育士自身の子育てにも理解がある場合が多い
・通勤に便利な環境が期待できる
・企業主導型保育事業の施設は、新設のことが多く、一緒に作り上げていけるという充実感を持つことができる
・企業主導型保育事業では、保育する子どもの人数が少ない場合が多く、子どもたちに深く関わることができる
・発熱など、子どもの迎えが必要な場合、保護者と連絡がつきやすい
・保育士の研修制度が充実している施設もあり、スキルアップにつながる
・大手運営会社では、保育士の給与や福利厚生などの待遇面が期待できる
・大手会社運営の場合、経営が安定しており長期的に安心して就労できる可能性が高い

企業主導型保育事業のデメリット

今度は逆に、企業主導型保育事業における「企業」「利用者」「保育士」のデメリットをまとめてみました。


<企業>
・認可施設ではないため、保育施設の設置や園児・保育士の募集まで、すべて自分たちで行う必要があり、運営面で負担が生じることが考えられる
・認可保育園が加入できる公的な保険に加入できない

<利用者>
・認可施設と違い、保育の質が運営企業に委ねられる
・小規模のため園庭を持つ施設が少ない

<保育士>
・従業員の半数に保育補助(研修制度あり)として無資格のスタッフが配置されることがあり、保育の負担が増す可能性がある

企業も利用者も働く人も、企業主導型保育の特徴やメリット・デメリットをよく理解して、それぞれのライフスタイルに合った選択を考えてみてはいかがでしょうか?


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