
そもそも「見当識」とは?
見当識とは、日付や現在の時刻、場所や周囲の状況、人物の把握などを総合的に判断し、自身が現在置かれている状況を把握し理解する能力のことをいいます。これらの能力が欠如してしまい、さまざまな日常生活を送る中で障害となってしまうと「見当識障害」と診断されます。
見当識障害は認知症の症状の1つでもあります。たとえば、レビー小体型認知症の場合、見当識障害がとても目立つ傾向にあるとされていたり、アルツハイマー型認知症の場合も物忘れの次に起こしやすい障害とされています。
認知症の症状の1つ「見当識障害」で現れる3つの症状
見当識障害には大きく分けて3つの症状があります。
◇今がいつなのか解らなくなる「時間」の見当識障害
日付や時間を間違えることが多く、24時間の中で朝昼夜の判断や今の季節の認識ができなくなります。
そのほか、遅刻しがちになったり、朝食を食べた記憶が無く家族に何度も尋ねたり。また、時間感覚欠如により外出の準備ができない。季節外れの服を着てしまう。などといった症状も見られるようになります。
◇どこにいるのか解らなくなる「場所」の見当識障害
建物や風景の識別ができない「街並み失認」と、家や目的地までの道順が解らなくなり迷ってしまう「道順障害」が出現します。これらにより、目的地は解っているのに、そこにたどり着くためにどこをどう通ればよいかの判断ができなくなります。
◇誰であるか認識ができない「人」の見当識障害
見当識障害が現れると、人を間違えることが多くなります。家族や友人、知人等のつながりが解らなくなったり、自分の名前や産まれてこれまでの記憶や認識があいまいになったりする障害です。
「見当識障害」は認知症の中核症状
見当識障害が起こると、理解力や判断力が低下します。情報処理能力が低下してしまうため、普段なら何でもないような些細なことで戸惑ったり、物事を進めることができなくなります。
たとえば銀行ATMの簡単な操作ができなくなったり、電話や訪問セールス、詐欺行為などを見抜くことができずに被害に遭ってしまったりといった事例もあります。
このように、見当識障害は認知症の中心的な症状である「中核症状」とされ、認知症の評価をおこなう「知能評価スケール(HDS-R)」の項目 にも初期症状の特徴として挙げられているのです。