
患者さんとのコミュニケーション
看護師として働くうえで、患者さんとのコミュニケーションは欠かせません。病院であれば、その日の受け持ち担当をして、医療処置や看護ケアの場面などで患者さんと関わります。その際、安全安楽に入院生活を送れるようにサポートしたり、看護の視点で治療上必要な指導を行ったり、声かけをしたりすることが看護師の役割です。
◆つまづきやすいポイント
患者さんとのコミュニケーションでつまづきやすいポイントとして、立場や知識の違いから会話の食い違いが起こりやすいことがあげられます。
たとえば、治療上の理由からベッド上で安静を保ってほしい場合。「ベッド上で安静にしていてください」と伝えただけでは、患者さんは「ベッド上で身動きが取れないのか?」「ベッド上で起き上がることは平気なのか?」と個々に解釈の違いがみられます。
看護師などの医療従事者であれば、「ベッド上で安静」の意味するところはある程度統一されていますが、患者さんはそうではありません。
このような食い違いは、普段の業務に慣れてしまい、患者さんの視点を忘れてしまうと起こりやすくなります。今回あげたケース以外にも、看護師と患者さんの認識の違いは多くあり、インシデントにつながることもあるため注意が必要です。
◆対処法
看護師が日常的に使っている言葉でも、患者さんには正確に伝わらないものがあることを知りましょう。また、患者さんへの説明や指導を行う際にも以下のように具体的な数値やかみ砕いた言葉で伝えるように工夫する必要があります。
例)
・「ベッド上安静です」→「ベッド上で起き上がることは大丈夫ですが、足を下ろしたり、歩くことはできません」
・「検査まで絶飲食です」→「検査の予定は13時なので、これから食べたり飲んだりはできません。ガムや飴も禁止になります」
情報伝達に必要なポイントは、過去のインシデント事例や経験から得られる部分もあるため、日ごろから患者さんがどんなことで誤解をしやすいのか注意して観察しましょう。
看護師同士のコミュニケーション
看護師同士では共通言語も多いため、比較的スムーズにコミュニケーションが取れると思いますが、なかでも注意が必要なものがあります。
◆つまづきやすいポイント
病院であれば、看護師それぞれに受け持ち患者さんがいることが多いです。しかし、受け持ち以外の患者さんの対応をするときや、看護師同士で仕事を依頼するときにはコミュニケーション不足のリスクがあります。
たとえば、受け持ち以外の患者さんからナースコールがあり、「トイレに行きたい」と訴えがあった場合。その患者さんの情報を知らずに、言われるがまま対応をしてしまったら、実は安静中だったということも。これは看護師同士や看護補助者同士でもよくあることです。
また、自分の手が空かずに、別の看護師へ代わりに検査への付き添いを依頼する場合。患者さんの名前を苗字でしか伝えず、同じ苗字の患者さん間違いを起こしてしまうこともあります。
◆対処法
前述のケースに共通するのは、自分の受け持ち以外の患者さんへの対応をするときは、より慎重になる必要があるということです。
事前に情報を確認したり、受け持ち看護師へバトンタッチをしたりして、なるべく対応は受け持ち看護師が行うように徹底します。
また、患者さんの訴えを鵜呑みにすることも危険です。患者さんによっては、勘違いをしている人や認知症などにより正しい判断ができない人もいます。
「大丈夫だろう」と思って確認をせずにいると、インシデントにつながる危険があるため、注意が必要です。さらに、別の看護師へ仕事を依頼するとき、別の看護師から仕事を依頼されるときはお互いに会話を復唱して、具体的に確認をとりましょう。
たとえば、患者さんの名前は部屋番号とフルネームで確認。依頼される側の看護師がスムーズにできるように、具体的に指示を出すことや、チェックリストなどでわかりやすく申し送りをすることでコミュニケーション不足を改善できます。
他職種とのコミュニケーション
看護師同士ではなく、医師をはじめとする他職種とのコミュニケーションでつまずきやすいポイントや対処法を整理しましょう。
◆つまずきやすいポイント
他職種とのコミュニケーションでつまずきやすいのは、情報伝達の場面です。情報伝達ミスの要因には、「言った・言わない」の認識の相違、聞き間違いなどがあります。
実際に、情報伝達が円滑になされていなかったり、コミュニケーション不足による認識の違いがあったりして、インシデントを起こしてしまうこともあります。看護師は医師と患者さんとの板挟みになりやすい職種でもあるため注意しましょう。
◆対処法
看護師は医師などの他職種と関わる機会が多く、コミュニケーション不足のリスクを下げるためにできることがあります。まずはきちんと情報を記録すること。報告した患者さんの情報は定時記録だけではなく、経時記録として書くことで、自分が行ったことの証拠となります。
また、医師以外の他職種とのコミュニケーションにおいては、専門用語が伝わらない場合もあるため、患者さんと接するときと同じように具体的に・わかりやすく伝えることも必要です。
さらに、あらかじめ緊急度や重要性を伝えてから報告することで、患者さんの情報把握が容易になります。また、日ごろから声掛けをするなどして、コミュニケーションを積極的にとっていき、関係性を築くことも大切です。
まとめ
看護師と患者、看護師同士、他職種とそれぞれのコミュニケーション不足について紹介しましたがいかがでしたか?人から人へと伝達する情報は100%伝えることがとても難しいのです。
認識のすれ違いが起こることを前提に、どのような工夫をしていけばいいのか、この記事を参考にして実践してみてください!