
退院調整看護師とは?仕事内容は?
大きな病院には、患者さんとその家族が在宅や地域で自分らしく過ごすことを支援するために、地域医療連携室、在宅支援外来、地域包括ケア病棟などの病院と地域をつなぐ役割を担っている場所があります。そこで働くのが退院調整看護師です。
退院調整看護師は名前のとおり、患者さんの退院支援と退院調整をおこないます。退院支援と退院調整の定義は以下のようになっています。
退院支援:患者が自分の病気や障害を理解し、退院後も継続が必要な医療や看護を受けながらどこで療養するか、どのような生活を送るかを自己決定するための支援
退院調整:患者の自己決定を実現するために、患者・家族の意向を踏まえて環境・ヒト・モノを社会保障制度や社会資源につなぐなどのマネジメントの過程
宇都宮宏子、三輪恭子編.これからの退院支援・退院調整¥ジェネラリストナースがつなぐ外来・病棟・地域.日本看護協会出版会.2011.
現場における具体的な役割としては、病棟の医師や看護師、ソーシャルワーカーなどと連携して、退院前の問題点の明確化と共有、退院前カンファレンスの実施、社会資源の調整などをおこないます。
退院調整看護師は医療ソーシャルワーカー(MSW)とどう違う?
どちらの職種も患者さんの退院支援、調整に取り組む職種であることには変わりません。しかし、看護師とソーシャルワーカーでは、患者さんの見方やアプローチの仕方が異なります。
看護師の場合は、患者さんの予想される身体状態から全体を把握するのに対し、ソーシャルワーカーの場合は、患者と家族の関係性から全体を把握する傾向にあるようです。こうした特徴をお互いの専門分野でカバーしつつ、地域における退院支援、調整のシステムを目指した協働が重要です。
退院調整看護師になるには資格が必要?
退院調整看護師はとくに資格が必要な業務ではありません。しかしながら、誰でもできる業務ではないので、ある程度病院で働いた経験があり、在宅や地域連携の経験がある看護師であると優遇されるかもしれません。
大きな病院では、病棟で主任や師長を経験した人が担当しているケースが多いです。また、資格ではありませんが、地域によっては、退院支援看護師育成プログラムなどの研修で認定される資格があり、こうした研修で知識やスキルを身に着ける方法もあります。
退院調整看護師としてスキルアップするには
退院調整看護師としてスキルアップするには、都道府県の看護協会でおこなわれている退院支援看護師育成プログラムや訪問看護、緩和、皮膚・排泄ケア認定看護師などの資格をとって、それぞれの専門性をもって取り組んでいる看護師もいます。退院調整部門の立ち上げにあたって、責任者となる方法もあります。
退院調整看護師に向いているのは
医療と生活の両方の視点で患者さんや家族と支援していくため、縁の下の力持ちのようなポジションや時に多職種に対してリーダーシップやマネジメントをおこなうことも必要となります。そのため、こうした調整役が好き、得意な人には向いている役割だと思います。
また、介護保険や社会福祉の知識も必要となってくるため、医学知識だけでなく地域や在宅に関する知識を学びたい人にとってもメリットは大きいでしょう。
一番大事なのは、患者さんと家族の思いをきちんと汲み取り、在宅や地域で望む生活ができるように現状だけでなく、今後の生活をイメージして支援していくことです。