そもそも保育園にはどんな役職がある?
保育園の役職は園の規模や職員数によって異なりますが、基本的には園長、主任、保育士(クラス担任)という構造になっています。規模の大きい園では園長の補佐として副園長、主任の補佐として副主任が設けられたり、複数の系列園を統括する理事長、事務処理関係をおこなう事務長がいたりする場合もあります。
現場の保育士の役割としては、複数担任の場合はクラスリーダー(クラスの責任者)や主に0、1、2歳クラスを統括する乳児リーダー、3、4、5歳児クラスを統括する幼児リーダー、園の構造によってフロア別にフロアリーダーが設けられていることもあります。
また、2017年から保育士の処遇改善の取り組みの一環として新役職制度が導入され、「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」という3つの役職が設置されました。
副主任保育士と専門リーダーは経験年数おおむね7年以上の中堅保育士が対象で、都道府県が実施するキャリアアップ研修を計60時間以上受講することで役職に就くことができます。
副主任保育士と専門リーダーとして手当てが支給されるのは、園長と主任を除く職員数の3分の1が対象となっており、保育士の新たな役職として注目されています。
保育園の園長になるには?
現場の保育士として採用され、経験年数と共に園長までキャリアアップしていくかというと、そうではありません。
家族経営の園では、理事長、園長、副園長などの幹部は親族内で引き継がれることが多いため、保育士→リーダー職→主任と、経験年数を積んでも主任止まりとなる場合も多いのです。園長職を目指す場合、管理職候補として採用されたり、保育園の運営団体を選んだりすることも重要となってきます。
保育園の園長の仕事は?
園長は保育園を運営する経営力と、保育の知識が必要となる仕事です。以下で主な役割を見ていきましょう。
<園長の主な役割>
・行政とのやり取り
補助金の申請や書類の届け出などをおこないます。
・園の予算計画・事業計画
国・自治体から出る補助金等の収入、人件費、教材費、消耗品、光熱費等の支出を計算して予算計画を立てます。
・人事・採用活動
求人のため、保育士養成校の担当者と話をしたり、ハローワークや派遣会社とのやり取りをしたりします。採用面接、見学者やボランティアの受け入れもおこないます。
・会議
系列園や法人・企業の会議へ出席する他、園内での職員会議等もおこないます。
・保育士の指導、シフト管理
保育士との面談や研修、シフト管理をおこなうこともあります。
・書類の確認
行政や運営団体の書類、保育園で必要となる指導計画書や企画書、記録に目を通して最終チェックをおこないます。
・保護者対応
各行事での挨拶、園児にトラブルや事故、ケガがあった際は、園の責任者として対応が求められることもあります。
・安全管理
園内の設備の点検や、給食の検食など、保育園の安全管理も園長の仕事です。
また実際に、認可保育園の園長先生に各業務についてお話を伺ってきました。
<園長歴5年 I先生>
現場で保育士として11年経験していましたが、園長になって苦労したことは事業計画や予算計画の部分です。
処遇改善の内容などは、園長として当然理解していなければならない項目です。毎年のことなので今は慣れましたが、最初は膨大な資料を読み込む日々でした。
会議は多いときには月10回程度出席します。人事や採用という面では、職員の状況を把握するため、積極的に職員との面談の時間を設けて意見を聞いたり、日頃の感謝を伝えていくなど、良好な関係が築けるようにしています。
園長になるための要件は?
公立保育園の園長になる場合は、公務員試験に合格して公立保育園の正規職員となり、年数を積んでから昇格試験に合格して園長になるというのが一般的なルートです。公立保育士から園長になるため、保育士資格は必須となります。
一方、私立保育園の場合は必要となる資格がなく、保育士資格や現場経験がなくても園長職に就くことができます。
園長になるまでのルートは?
園長になるルートは大きく分けて4つあります。
①家族経営の後継ぎ
家族経営をおこなっている園では、創設者の親族や子どもに受け継がれていく場合が多いです。保育士として長くその園に勤めても、親族でなければ園長になれないこともあります。
②主任などから昇格
家族経営にこだわりのない園や、企業が運営する保育園では、勤務年数や経験年数によって園長まで昇格していくこともあります。
③求人から
新規開園のタイミングで、園長職、または園長候補として求人が出ていることもあります。近年は保育園が増加傾向にあり、企業主導型保育施設も増えているので、園長候補として採用をおこなうことも増えてきました。
④新規開園
自分で保育園を開園すれば、自分自身が園長職に就くことができます。
長く勤めていても園長になれるとは限らないので、どのルートから園長を目指すかを考えることがポイントですね。
園長に必要なことは?
園長の仕事内容を考えると、経営視点での管理能力や制度的な知識が必要となります。また、職員や保護者など人と多く関わる立場ですので、コミュニケーション能力やリーダーシップも求められます。
私立の保育園では無資格でも園長になることができますが、保育に対する知識や理解がないと、実際に子どもたちに保育をおこなう保育士との間にズレが生じてしまい、結果的に保育の質や職員の満足度が下がってしまう場面も見てきました。
保育園の経営と保育者としての視点がバランス良く保たれているのが理想の園長ではないでしょうか。
園長の役割についても、認可保育園の園長先生にお話を伺いました。
<園長歴5年 I先生>
園長は「組織の調整役」だと思っています。園長として意識していることは、「誠意」と「ブレない姿勢」です。園長の立場になるとあらゆることを動かせる力を持つので、その立場に驕らないよう日々意識しています。
「ブレない姿勢」を保つために、言っていることとやっていること、以前に言ったこととのズレがないよう、会議の議事録を取ったり、保育の目的や意識してほしいこと、職員同士で大切にしていきたいことなどをマニュアルとしてまとめたりしています。また、職員一人ひとりの人生を預かっているという覚悟も必要ですね。
園のリーダーであり、仕事の方向性を示す立場である園長の姿勢は重要であると考えます。保育に限らず、勤務体制や園長の一つひとつの言動など、小さなことから職員の不信感が生まれ、結果的に仕事の質が下がったり、人間関係の悪化、退職(=保育士不足)につながってしまいます。
職員を大切にする園長の下で仕事をしていると職員一人ひとりの満足度が高まり、その満足度は子どもへと還元されます。
自身も保育士として働いていた経験から、日頃の保育や取り組みについて「良かったね」「頑張っていたね」と、一言声をかけられるだけでも園長とのつながりを感じられ、非常に満足度が高まりました。
園長は職員と顔を合わせる回数も少ない立場なので、積極的に現場での出来事を把握したり、保育士との関係づくりをおこなっていくと組織としてうまく成り立っていくのではないかと考えます。
幅広い知識や人間力が必要となる職種ですが、園長は職員一人ひとりの人生に関わり、子どもたちの未来をつくることができるやりがいのある仕事ですよ。