ガイドヘルパーとは?
「ガイドヘルパー」は移動介護従事者の通称(外出介護員と呼ばれることもあります。)で、障害のある方の外出介助をする職種です。介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)は、介護保険制度上の資格ですが、ガイドヘルパーは障害者総合支援法に基づいています。
ガイドヘルパーのおもな仕事内容は、視覚障害、全身性障害、知的障害や精神障害のため1人で移動することが困難な方が安全に外出できるようにサポートすることです。具体的な利用シーンとしては、買い物や通院、通勤・通学のほか、散歩や旅行などの余暇活動などがあげられます。
ガイドヘルパーの役割
ガイドヘルパーは日常生活に密接な「移動」を手助けする重要な役割を担っています。利用者にとっての「移動」は、仕事や学校に通ったり、銀行や役所に手続きに出かけたりといった必要最低限のことを行うためだけではなく、その人らしいライフスタイルを実現するためにも必要となります。
不便なく移動できる人にとっては、おいしいご飯を食べに出かけたり、気分転換したいときに気軽に街に散歩に出かけたりすることができますが、移動自体に困難を抱える人にとってはすぐには実現できなかったり、周囲に迷惑をかけてしまうことを躊躇して、あきらめてしまうことすらあるのです。
ガイドヘルパーは移動をサポートすることで、利用者が「やりたい」と思ったことを実現するお手伝いをしています。そして、障害のある方たちの社会参加や自立した生活を実現することにつなげています。
ガイドヘルパーの種類
ガイドヘルパーの資格は、対象とする障害によって以下の3つに分けられます。それぞれの資格の特徴をお伝えしましょう。
1. 視覚障害者(児)ガイドヘルパー
視覚障害者ガイドヘルパーとは、視覚障害により、移動をすることに著しい困難を有する障害者などを対象としたガイドヘルパーです。外出の際に同行し、移動のサポートを行うほか移動時および外出先において必要な情報を提供することも行います。ことばでの状況の説明や代読、外出先での代筆も含まれます。また、排泄や食事など、外出先で必要となる生活動作のサポートも行います。
2. 全身性障害者(児)ガイドヘルパー
全身性障害者ガイドヘルパーとは、四肢の機能障害があり、1人での移動に困難がある人のサポートを行う職種です。脳血管障害や事故などの後遺症がある人や、生まれつきの脳性麻痺、脊髄や頚椎の損傷、ALSや筋ジストロフィーなどの進行性疾患の方など、さまざまな方が対象となります。移動のほか、排泄や食事など、外出先で必要となる生活介護も行います。
3. 知的障害者(児)ガイドヘルパー
知的障害者ガイドヘルパーとは知的障害や精神障害がある人(児)が外出する際にサポートをする職種です。知的障害といってもコミュニケーションのとり方や興味を持つもの、記憶力や判断力などは人それぞれで、その方の特徴に合わせたサポートが必要となります。中には、小中学生程度の年齢から余暇活動に利用している子どももおり、ガイドヘルパーとのコミュニケーションを通して、自立や社会参加への一歩ともなっていきます。
ガイドヘルパーになるにはどうすればいいの?
移動を安心かつ安全にサポートできるよう、ガイドヘルパーは一定の知識やサポート技術を身につける必要があります。これらは、研修を通して学んでいき、研修修了時に都道府県よりガイドヘルパーの資格が与えられます。また、障害の種類によって学ぶべき内容は異なるので、研修課程は分かれています。
1. 視覚障害者ガイドヘルパー
視覚障害者ガイドヘルパーは、同行援護従業者養成研修という名称の研修で専門知識を学びます。一般課程と応用課程があり、それぞれの課程を単独で受講することもできます。ガイドヘルパーとして働きたい人は一般課程の受講のみでも大丈夫ですが、サービス提供責任者として働きたい場合は応用課程も修了する必要があります。研修の概要は次のようになります。
・視覚障害者(児)福祉サービス
・同行援護の制度と従業者の業務
・障害、疾病の理解
・障害者(児)の心理
・情報支援と情報提供
・代筆代読の基礎知識
・同行援護の基礎知識
・演習(移動支援の基本技術・応用技術、場面別の移動支援の技術)
自治体が主催する研修のほか、都道府県が指定した福祉系の学校、社会福祉協議会などで実施されています。ただし、費用は主催団体によって異なり、自治体が実施する研修では、非常に安価で実施されていることもあります。
2. 全身性障害者ガイドヘルパー養成研修
全身性の疾患のある利用者は移動にあたって身体介護が必要なことが多いため、研修の内容にも盛り込まれています。そのため、すでに、介護福祉士、ホームヘルパー1・2級、介護職員初任者研修課程修了など、取得している資格によって科目免除の対象となり、費用が安くなることもあります。研修の概要は次のようになります。
・ホームヘルプサービスに関する知識
・ガイドヘルパーの制度と業務
・障害者(児)福祉の制度とサービス
・障害者(児)の心理
・重度脳性麻痺者など全身性障害者を介護する上での基礎知識
・移動介護にあたっての一般的注意
・演習(移動介助の方法、排泄や食事といった生活行為の介護)
他の研修と同様に、費用は実施される機関によって異なります。科目免除については、資格取得後に1年未満の場合のみ免除されるなど、研修を主催する団体によって条件が定められていることがあります。
3. 知的障害ガイドヘルパー研修
介護職員初任者研修課程修了(旧ホームヘルパー2級)の人は知的障害者(児)の外出介助を行うことができます。知的障害ガイドヘルパー研修は、すでに外出サポートを行っている人だけではなく、これから取り組みたいという人も対象としています。他の研修と同様に費用や日程は実施機関によりますが、概ね2日程度で取得できます。研修の概要は次のようになります。
・ホームヘルプサービスに関する知識
・ガイドヘルパーの制度と業務
・障害者(児)福祉の制度とサービス
・障害疾病の理解
・障害者(児)の心理
・移動介護の基礎知識 など
また、知的障害者や精神障害者の外出に関わる研修としては、別に行動援護従業者養成研修があります。行動援護は、その行動に適切なサポートが求められる知的障害や精神障害、発達障害のある人が、安全に外出できるように知識や技術を学びます。平成30年より仕事に携わるためには、研修の修了と、知的障害者(児)や精神障害者と直接接した実務経験1年以上が必須となりました。
いずれの研修も、研修受講料の助成制度があることもあります。研修の受講を考えている場合は、住んでいる市区町村のホームページや広報、社会福祉協議会なども確認してみましょう。また、複数の資料を取り寄せて比較をしてみてもいいでしょう。
ガイドヘルパーはどんな場所で働くの?
ガイドヘルパーの主な勤務先としては、居宅介護(ガイドヘルプサービス)を行っている訪問介護事業所や、障害者支援施設(通所・入所)があります。入所施設には、障害のある人がアパートや一軒家などで個々のプライバシーを確保しつつ共同で生活しているグループホームもあります。
ガイドヘルパーの資格を保有していることで、採用時に基礎的な知識があると判断してもらえます。また、未経験の場合も、就職した後に資格の取得をすることで、ガイドヘルパーとして移動支援の業務を任されるようになるでしょう。勤務先が研修費用を負担してくれるところもあります。
ガイドヘルパーの1日のスケジュール
通勤や通学、食材の買い物など目的が明確にあるような依頼は、短時間で済んでしまいます。同じ時間に何人もの利用者に対応することはできませんが、時間がずれていれば対応をすることができます。
そのためスケジュールをうまく組み合わせて、1日に何人もの依頼に対応することもあるでしょう。また、勤務先が複数の施設を運営しているような場合は、ガイドヘルパーの依頼がない時間は、他の施設の業務に入るなど柔軟に仕事をすることもあるでしょう。
視覚障害の方の外出に比べ、全身性障害の方の依頼では食事や排泄といった生活動作の介護が必要なこともあり、時間が長くなることがあります。また、土日祝日などの余暇活動では長時間の依頼もあります。
ガイドヘルパーのやりがい・キャリアパス
利用者には家族からは自立してグループホームに入居し、個人のプライバシーを守りながら暮らしている人もいます。また、在宅で生活をしていても、休日は家族とは別の時間を過ごしているという人もいます。高齢化にともない障害のある高齢者は今後増加していく見込みです。ガイドヘルパーに依頼される仕事内容はさまざまであり、今後もニーズが高まっていくことが予想されます。
ガイドヘルパーは、仕事内容が外出介助のため、男女や年齢を問わずフットワークの軽い方には向いているでしょう。また、休日の依頼では、余暇活動を希望されることも多いものです。希望がかなえられた利用者の笑顔と喜びを共有できることも、この仕事の醍醐味かもしれません。
資格は数日の研修で取得でき、現在すでに介護福祉士などの資格を所有している人は研修時に科目免除もあり、比較的取りやすい資格です。転職や就職を考えている人には、対象となる職場の選択肢が増えますし、現在の職場で仕事を続けていく上でも仕事の幅を広げることにもつながるでしょう。
ガイドヘルパーの資格取得に対する市区町村の支援が手厚くなっている今こそ、ガイドヘルパーになるチャンスともいえます。ガイドヘルパーに興味を持った方は、この機会に挑戦してみてはいかがでしょうか。