障害児入所施設とは?福祉型と医療型の違いや、入所の流れ、職員配置について解説

虐待などの理由から家庭での養育が困難な障がい児を保護し、必要な支援をおこなう障害児入所施設。提供するサービスによって、福祉型と医療型に分かれています。それぞれの特徴や対象者、支援内容、入所の流れ、仕事内容について解説します。

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目次

1.障害児入所施設とは?

障がいのある子どもに必要なサービスを提供する入所施設

障害児入所施設とは、家庭での生活が困難な障がいのある子どもを保護し、日常生活に必要な知識や技能を教える児童福祉施設です。以前は、知的障害や肢体不自由など、障がいの種類によって施設が分けられていました。複数の障がいに対応し支援を強化するため、2012年に児童福祉法が改正され、「障害児入所支援」と「障害児通所支援」に一元化されました。

障害児入所施設の一元化
*(医)は医療提供をおこなう施設
*障害児入所施設は都道府県が、障害児通所施設は市区町村が実施主体

障害児入所施設が担う主な機能は以下のとおりです。

  1. 発達支援機能
  2. 自立支援機能
  3. 社会的養護機能
  4. 地域支援機能

これらに加え、本来家庭から得られる学びや安らぎを家庭に代わり提供することも主な役割です。

福祉型と医療型の違い

障害児入所施設は、福祉型と医療型に分かれています福祉型が、食事や排泄介助などの日常的な支援や、機能訓練をおこなうのに対し、医療型は、これらに加えて病気の治療や看護をおこなう点が異なります。また、医療型は医療法上の病院の指定を受けています。

対象者

障害児入所施設の対象は、虐待や保護者の病気などで家庭での養育が困難な、0〜18歳までの障がいのある子どもです。障がいには、身体障害、知的障害、精神障害、そして発達障害が含まれます。

18歳を超えた入所者へは、グループホームなどの障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスへの移行を目指し、就労支援や自立訓練の実施が求められています。しかし、受け入れ先の確保や適応が困難な場合もあることから、ただちに退所させるようなことがないよう配慮し、満20歳まで利用することが可能です。

2.障害児入所施設の現状

障害児入所施設の数

障害児入所施設数の推移
厚生労働省|令和4年社会福祉施設等調査より作成

障害児入所施設は全国に464ヶ所あり、そのうち福祉型が243ヶ所、医療型が221ヶ所となっています(2022年時点)。過去5年間の推移では、どちらの施設数もほぼ横ばいです。

障害児入所施設の利用者数

障害児入所施設の入所者数の推移
厚生労働省|令和4年社会福祉施設等調査より作成

入所者数は1万3,749人で、そのうち福祉型が5,964人、医療型が7,785人です(2022年時点)。過去5年間の推移を見ると、福祉型が減少傾向にあるのに対し、医療型は年ごとの増減が大きく見られます。

年齢別入所者の割合
厚生労働省|令和4年社会福祉施設等調査より作成

入所者の年齢別内訳を見ると、福祉型は4歳〜18歳以上まで幅広い年齢層が利用していることがわかります。なかでも、12〜15歳の割合が最多となっています。


一方、医療型は17歳以下の割合が少なく、18歳以上が65.2%と過半数を占めているのが特徴です。この理由として、医療型は福祉型と比べて重症心身障害のある子どもが多いことから、18歳を過ぎても、家・施設での生活や受け入れ先の確保が難しいことなどが考えられます。

利用に至った経緯・内訳

入所理由別の児童数
こども家庭庁支援局家庭福祉課|児童養護施設入所児童等調査の概要より作成

障害児入所施設の入所理由として最も多かったのは「児童の障がい」で全体の49.6%という結果でした。次いで「父母いずれかの放任・怠だ」(27.6%)、「父母いずれかの精神疾患等」(24.7%)と続きます。

また、「父母いずれかの虐待・酷使」(23.6%)に、一般的に虐待と見なされる「放任・怠だ」「養育拒否」「棄児」を合計すると62.1%となり、虐待を経験している児童は少なくないことがわかります。

なお、障害児入所施設では、虐待を発見したり疑われたりした場合には、保護者不在のケースを対象に措置入所をとることがあります。

3.障害児入所施設の支援内容

福祉型障害児入所施設

福祉型の施設では、主に以下の支援をおこなっています。

  • 支援計画の作成と実施
  • 愛着形成、安全・安心な生活のための環境整備
  • 日常生活動作(ADL)の支援
  • 対人コミュニケーション方法の指導
  • 高いケアニーズ、行動上の課題が生じた子どもへの対応
  • 家族支援

・支援計画の作成と実施

退所後を見据えて、アセスメントに基づいて支援計画を作成します。本人の希望や利益を優先することを念頭に、一人ひとりの特性に応じた計画の実践・点検・評価をおこないます。

・愛着形成、安全・安心な生活のための環境整備

とくに乳幼児や低年齢児、被虐待児は愛着形成が不十分なケースもあるため、特定の職員が一人の子どもにかかわる、小さな訴えも聞く姿勢を持つなどして信頼関係を築きます。また、ケガがないよう環境面の整備や安全教育をおこないます。

・日常生活動作(ADL)の支援

食事や移動、排泄、着替え、入浴、金銭管理、通院・服薬管理、行事への参加や充実した余暇などの機会を提供し、指導をおこないます。

・対人コミュニケーション方法の指導

将来的な自立に向けて、対人関係を適切につくりあげるためのコミュニケーション方法を教えるのも大切な役割の一つです。コミュニケーションの楽しさを感じてもらえるよう、発言に同意するなど肯定的な接し方を心がけます。

・高いケアニーズ、行動上の課題が生じた子どもへの対応

虐待経験などにより、不安障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えていたり、リストカットなどの自傷行為をおこなう子もいます。こうした行動上の課題が見られる子どもに対し、環境整備や心理面での支援を継続的におこないます。

・家族支援

児童相談所などの関係機関や専門家と連携し、ペアレントトレーニングの提供や、家族の意向の把握、家庭環境の整備をおこないます。

医療型障害児入所施設

医療を提供する医療型障害児入所施設では、福祉型の支援内容に加えて、主に以下の支援をおこなっています。

  • 手術や医療的ケアの評価
  • 病気の治療・看護
  • リハビリテーション
  • 病気・障がいの状態に配慮した活動や機会の提供

・手術や医療的ケアの評価

気管切開などの外科的手術や、呼吸器の管理を含む医療的ケア、機能訓練の評価や再検討をおこないます。

・病気の治療・看護

個々の病気の治癒に必要な治療や看護を実施します。

・リハビリテーション

身体機能の向上を目的に、作業療法士理学療法士言語聴覚士などのリハビリテーション専門職と協働し、医師の指示に基づいたリハビリをおこないます。

・病気・障がいの状態に配慮した活動や機会の提供

病弱・身体虚弱など子どもの特性に応じて、休息と活動のバランスを見ながら可能なかぎり体験的な活動を提供します。

4.障害児入所施設を利用する

利用の流れ

障害児入所施設利用の流れ

障害児入所施設を利用するには、福祉型・医療型にかかわらず、まずは住んでいる地域を管轄する児童相談所に相談します。施設に関する説明を聞いたうえで、希望する施設を選び、利用申請をおこないます。施設の定員状況によっては、利用できない場合もあります。児童相談所から受給者証が届いたら、契約を交わして利用開始となります。

利用料

利用にかかる費用は、世帯の所得に応じて異なります。

世帯の状況

負担上限月額

生活保護受給世帯

0円

市町村民税非課税世帯

0円

市町村民税課税世帯

(収入が約920万円以下の世帯)

9,300円

上記以外の世帯

3万7,200円


上記以外にも、食費、光熱水費、日常生活用品の費用が別途必要です。

5.障害児入所施設で働く

職員配置

障害児入所施設の職員配置は以下のとおりです。

 

福祉型

医療型

児童指導員または保育士

児童指導員:1人以上

保育士:1人以上


以下の区分では、それぞれに定められた人数が必要

  • 主として知的障がい児または自閉症児を入所させる施設4:1人以上
  • 主として盲児またはろうあ児を入所させる施設4:1人以上
  • 主として肢体不自由児を入所させる施設 3.5:1人以上

児童指導員:1人以上

保育士:1人以上


以下の区分では、それぞれに定められた人数が必要


  • 主として自閉症児を入所させる施設6.7:1人以上
  • 主として肢体不自由児を入所させる施設(乳幼児 10:1人以上/少年 20:1人以上)

児童発達支援管理責任者

1人以上

医師

主として自閉症児を入所させる場合配置

必要数

嘱託医

1人以上

必要数

看護職員

(看護師/准看護師、保健師、助産師)

  • 主として自閉症児を入所させる施設20:1人以上
  • 主として肢体不自由児を入所させる施設1人以上

必要数

栄養士

1人以上

調理員

1人以上

職業指導員

職業指導をおこなう場合配置

主として肢体不自由のある児童を入所させる施設で職業指導をおこなう場合配置

心理担当職

障がい児5人以上に心理支援をおこなう場合配置

主として重症心身障がい児を入所させる施設に限り1人以上

理学療法士または作業療法士

主として肢体不自由のある児童または重症心身障がい児を入所させる施設に限り1人以上

*40人以下の障がい児を入所させる施設の場合は栄養士の、調理業務すべてを委託する場合は調理員の配置不要

児童指導員または保育士

入所児の親代わりとして、入浴・排泄介助などの生活支援や、余暇活動の提供、保護者会などの学校行事に参加します。24時間体制のため、交代制による夜勤や早出・遅出があるところがほとんどです。

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児童発達支援管理責任者

子ども一人ひとりの特性を把握し、個別支援計画の作成と提供サービスを管理します。また、保護者との面談を設けて相談対応をおこなうほか、児童相談所や学校など関係機関との連携をはかります。

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医師・嘱託医

入所する子どもの健康を管理し、必要に応じて治療をおこないます。また、個々の障がいに対応するため、精神科やリハビリテーション科などの医師が配置されることもあります。

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看護職員

児童の健康管理や必要な医療的ケア、感染症の予防が主な業務内容です。看護師や准看護師以外に、保健師、助産師も従事できます。

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管理栄養士/栄養士

栄養バランスを考慮したメニュー作りや、栄養指導、食材の発注などをおこないます。

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調理員

管理栄養士や栄養士が作成したメニューを調理、盛り付け、配膳します。食材管理や厨房の清掃なども業務の一つです。

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職業指導員

働くうえで必要な知識や技術を習得するための職業訓練の実施や、個々に合った仕事が選べるよう情報提供、相談対応をおこないます。

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心理担当職

虐待を経験した子どもへの心理的支援や、発達・心理アセスメント、保護者面談・相談対応などをおこないます。

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理学療法士・作業療法士

肢体不自由や重症心身障害のある子どもに対し、運動機能の回復や機能維持のための支援・訓練をおこないます。

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障害児入所施設の給料

次に、厚生労働省がおこなった調査を基に、障害児入所施設で働く職員の平均月給を紹介します。

 

常勤

非常勤

福祉型

38万8,580円

21万3,690円

医療型

39万4,530円

31万2,250円

厚生労働省|令和4年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査より
*上記金額は、基本給に手当と一時金(年額の12分の1)を足して算出

6.子どもの成長や自立を感じられる職場

障害児入所施設は、虐待や保護者の病気などさまざまな事情により、家庭での養育が難しい障がい児を保護し、育てる児童福祉施設です。身体介護などをメインで提供する福祉型と、病気の治療もおこなう医療型の2種類があります。

家庭に代わり長期的に子どもと関わることも多いため、成長や自立を間近で感じられる点にやりがいを感じる人もいるでしょう。多職種・多機関の連携により子どもたちを支える仕事に興味があれば、ジョブメドレーの求人をチェックしてみてください。

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参考

厚生労働省|障害児入所施設運営指針

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