目次
1.かかりつけ薬剤師とは?
かかりつけ薬剤師とは、患者や家族からの同意のもとで、服薬指導や在宅医療のサポートをする薬剤師です。患者の薬剤服用歴などを管理し、薬物療法や健康・介護に関する相談にも対応しながら、地域に根ざした支援をおこないます。
かかりつけ薬剤師制度ができた背景
日本では、薬物療法の安全性や効果を高めるために、病院と薬局がそれぞれ医薬品をチェックする医薬分業が採用されてきました。ただし、2015年に厚生労働省が発表した「患者のための薬局ビジョン」によると、複数の医療機関や薬局を利用する患者が多く、患者の服薬歴を十分に把握できないなど、制度運用上の課題があると指摘されています。
また、日本の高齢化が進むにつれて、複数の薬を服用することで起こるポリファーマシーの問題も顕在化しています。高齢者はさまざまな疾患を抱え、複数の薬局を利用することが多いため、薬剤師は残薬調整が困難になり、多剤投与のリスクなどが発生します。これらの課題を解決するため、服薬情報を一元管理し、適切なアドバイスをおこなう「かかりつけ薬剤師」制度が2016年に誕生しました。
しかし、制度創設から10年が経ち、同意取得の形骸化や服薬実態との乖離などの課題が指摘されるようになりました。そのため、2026年度の診療報酬改定では、より患者への支援や継続的な関与を重視した仕組みに見直されます。
2.かかりつけ薬剤師の役割
服薬情報の一元管理
かかりつけ薬剤師は、患者の服薬情報を把握して、重複投与や相互作用を防止する役割を担います。患者へのヒアリングを通じて、市販薬やサプリメントなど、処方薬以外の服用状況も総合的に把握し、より包括的な健康管理をサポートします。
また、2026年度の診療報酬改定以降は、電話や患者宅への訪問などでの服薬管理・残薬状況の継続的な確認を重視します。
夜間・休日の対応による在宅医療のサポート
かかりつけ薬剤師は、患者の急な体調変化や薬の副作用、誤飲、服用のタイミングなどの相談に、24時間体制で対応します。また、夜間や休日の救急外来などで処方箋を受け取った患者への調剤に対応することもあります。
これまでは、担当の患者に対して、1人のかかりつけ薬剤師が24時間対応する必要がありました。しかし、2024年の診療報酬改定以降、やむを得ず患者に対応できない場合は、同じ薬局に勤める別の薬剤師が対応することも可能とされています。
医療チームとの連携
かかりつけ薬剤師は、服薬情報や処方内容を確認し、処方医へのフィードバックや処方変更の提案などをおこないます。
また、地域住民からの健康相談は、居宅介護支援事業者や訪問看護ステーションなどの多職種と連携し、地域包括ケアシステムの一員として適切に対応します。
3.かかりつけ薬剤師になるための条件は?
かかりつけ薬剤師になるには、以下5つの条件を満たす必要があります。
- 薬剤師として保険薬局での勤務経験が3年以上あること
- 勤務先の薬局で週31時間以上勤めていること
- 勤務先の薬局に6ヶ月以上在籍していること
- 認定薬剤師資格を保有していること
- 医療にかかわる地域活動へ参加していること
1.薬剤師として保険薬局での勤務経験が3年以上あること
かかりつけ薬剤師として働くには、保険薬局での勤務経験が通算3年以上必要です。病院や診療所などの保険医療機関での勤務経験は、最大1年まで算入できます。
ただし、育児や介護などで休業していた期間は、勤務経験年数に含まれません。
2.勤務先の薬局で週31時間以上勤めていること
かかりつけ薬剤師は24時間対応が求められるため、基本的に常勤薬剤師として勤務している必要があります。
なお、育児・介護休業法による時短勤務中の薬剤師は、すでに別のかかりつけ薬剤師が勤務先にいる場合に限り、週24時間以上かつ4日以上の勤務で要件を満たすことができます。
3.勤務先の薬局に6ヶ月以上在籍していること
かかりつけ薬剤師が頻繁に変わってしまわないよう、勤め先の薬局に連続して1年以上在籍していることが条件となっています。
4.認定薬剤師資格を保有していること
継続的な自己研鑽(けんさん)の証明として、研修認定薬剤師や認定実務実習指導薬剤師などの研修認定を取得する必要があります。
なお、各資格の認定期間は3〜5年程度です。認定期間が終了する前に所定の単位を取得し、更新申請をおこないましょう。
5.医療にかかわる地域活動へ参加していること
かかりつけ薬剤師は、地域医療に関連する取り組みに参加することが求められます。地域活動として認められる活動は以下のとおりです。
地域活動の具体例
- 地域向けの健康フェアにおける相談対応
- 地域向けの薬や健康に関する研修会での講師
- 行政からの依頼による注射針や水銀体温計の回収
- 行政や学校などからの依頼による薬物濫用防止活動
- 委嘱を受けて行う学校薬剤師の業務
- 行政や地域医師会、歯科医師会、薬剤師会の協力のもとで実施している休日夜間薬局としての対応、休日夜間診療所への派遣 など
4.施設・薬局の施設基準
かかりつけ薬剤師として従事するためには、勤務する施設・薬局もいくつかの条件を満たしている必要があります。
常勤薬剤師や管理薬剤師の在籍期間
施設基準の届け出時点において、その薬局に在籍する常勤薬剤師の平均在籍期間が1年以上、もしくは管理薬剤師がその薬局に継続して3年以上在籍している必要があります。
患者のプライバシーに配慮した設備
かかりつけ薬剤師として服薬管理指導をおこなうためには、施設にも患者のプライバシーに配慮した構造が求められます。具体的には、ほかの患者に会話の内容が聞こえないように、パーテーションで区切られた独立したカウンターを設置するなどの対策が必要です。
5.かかりつけ薬剤師になるメリット・デメリット
メリット
報酬アップが期待できる
2026年の診療報酬改定では「かかりつけ薬剤師指導料」や「包括管理料」などが廃止され、服薬管理指導料の一部として、残薬解消のための「かかりつけ薬剤師フォローアップ加算」や「かかりつけ薬剤師訪問加算」などが新設されます。かかりつけ薬剤師としてこれらの業務をおこなうと加算を得られるため、薬局によっては待遇面での優遇が期待できます。
また、健康に関する幅広い知識や高いコミュニケーション力が求められるため、かかりつけ薬剤師としての実務経験があれば、転職時に評価されやすい傾向があります。
地域の患者と継続的に向き合える
かかりつけ薬剤師と患者の関係は長期にわたります。処方や調剤、健康に関する相談も一元的におこなうため、効果的な治療の提案や健康管理が可能になります。
また、かかりつけ薬剤師は、患者からの信頼があって初めて成り立つ仕事です。薬の説明だけでなく、患者の生活に寄り添うことが求められるため、これまでとは違うやりがいが見つかるかもしれません。
デメリット
かかりつけ薬剤師は、原則として24時間対応を求められます。業務時間外に患者から相談を受ける可能性もあるため、負担を感じることもあるでしょう。また、定期通院している患者から指名を受けた場合、特定の曜日に有休が取りにくくなる可能性もあります。
6.地域の顔の見える薬剤師へ
かかりつけ薬剤師は、薬剤師としての十分な経験を持ち、患者からの信頼を得ることで初めて担える役割です。高齢化に伴い、在宅医療のニーズが高まるなか、かかりつけ薬剤師は、地域の患者一人ひとりの健康を支える重要な存在として、今後もその活躍が期待されています。
また、かかりつけ薬剤師は、地域包括ケアシステムの一員として、健康や介護に関するさまざま知識・経験を習得できるため、キャリアアップを目指す薬剤師にとっては重要なステップといえます。
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