1.居宅介護支援事業所(ケアプランセンター)とは
居宅介護サービスの相談・計画の拠点
居宅介護支援事業所とは、介護保険サービスを受ける要介護者の在宅介護に関する相談や計画、連絡・調整を総合的に引き受ける事業所です。主任ケアマネジャーやケアマネジャーが常駐しており、サービスを受けるために必須のケアプラン(介護サービス計画書)を作成するためケアプランセンターとも呼ばれています。
「居宅」とは自宅のほかに、軽費老人ホームや住宅型有料老人ホームなどの居室も含まれます。居宅介護支援事業所の利用料は介護保険から支出されるため、利用者の負担はありません。
保険給付対象となる居宅サービスだけでも10種類以上あり、利用者や家族が仕事や療養の傍ら、適切な取捨選択をするのはなかなか難しいのが現実です。ケアマネジャーはアセスメントや専門知識をもとに、特定の事業者やサービスに偏重しない中立的な視点から、利用者に必要なサービスを検討します。
また、アセスメントや関係者との話し合いの結果、居宅での介護が難しいと判断した場合は、介護保険施設(特別養護老人ホームなど)に入所するための紹介をおこないます。
tips|居宅介護支援事業所と地域包括支援センターの違い
居宅介護支援事業所と地域包括支援センターはいずれも高齢者に関する業務に取り組みますが、要介護度によって担当が分かれています。
居宅介護支援事業所では要介護1〜5の人を対象に「介護サービス計画書」を作成するのに対し、地域包括支援センターでは要支援1・2の人を対象とした「介護予防サービス計画書」を作成します。
そのほか、地域包括支援センターについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
2.居宅介護支援事業所の利用の流れ
要介護認定を受け、介護サービスを使うことが決まったら、居宅介護支援事業所の業務がスタートします。

介護保険申請の代行
介護サービスや介護予防サービスを受ける(=介護保険を使う)には、自治体の介護保険申請窓口で要介護(支援)認定を申請しなければなりません。利用者や家族が自身でおこなうこともできますが、さまざまな事情で難しい場合、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが申請代行をおこないます。
なお、介護保険申請時には主治医意見書が必要となるため、主治医(かかりつけ医)がいない場合利用者が新たに病院を探すことになり、手続きに時間を要することがあります。
ケアプラン(居宅サービス計画書)の作成
ケアマネジャーは、介護方針の骨子となる「ケアプラン(居宅サービス計画書)」を作成します。ケアプランは第1〜7表から成り、相談内容、支援の方向性、目標、具体的なサービス内容などが集約されています。
ケアプランの詳しい作成方法は、こちらの記事で解説しています。
サービスの連絡・調整
ケアプランが決まったら、各種介護サービスの契約をおこない、利用を開始します。そのための連絡・調整も居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当します。
居宅介護で介護保険給付が適用されるのは、以下の12サービスです。
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
- 特定施設入居者生活介護
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
サービスの利用が始まったら、ケアマネジャーが居宅に訪問し、ケアが計画に沿って実施されているか、介護ニーズの変化がないかなどを確認する「モニタリング」をおこないます。居宅介護支援においては月1回以上の実施が義務付けられていますが、昨今では新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、柔軟な対応が認められています。
3.居宅介護支援事業所の人員基準
ケアマネジャー(介護支援専門員)1人につき利用者35人
居宅介護支援事業所では少なくとも1人の常勤ケアマネジャーを配置しなければならず、ケアマネジャー1人につき35人までの利用者を担当することができます。以降は「利用者の数が35人またはその端数を増すごとに増員」、つまり36〜70人であればケアマネ2人、71〜105人でケアマネ3人となります。
ケアマネジャーを複数人配置する場合は全員が常勤である必要はありませんが、介護保険施設の常勤ケアマネジャーと兼務することはできません。
管理者は主任ケアマネジャー
平成30年度(2018年度)介護報酬改定において、居宅介護支援事業所の管理者は主任ケアマネジャーであることが要件となりました。ケアマネジメントの質向上と、居宅介護支援事業所の人材育成を促進することが目的です。
それまでの管理者を急に変更することは難しいため、当初は令和2年度(2020年度)まで管理者を続けることができる経過措置期間とされていました。しかし主任ケアマネジャーに必要な「実務経験5年以上」の条件が満たせないなど、思うように管理者の移行が進まず、経過措置期間が令和9年度(2027年度)まで延長されました。
また、離島などとくに人員確保が困難な地域では、管理者が主任ケアマネジャー以外でも認められる場合があります。
特定事業所加算を受けている場合
特定事業所加算とは、質の高いケアマネジメントを提供している事業所に上乗せされる介護報酬です。具体的には専門性の高い人材確保、職員の研修の実施、事業所間連携などが評価の対象となります。
特定事業所加算Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Aで人員基準は異なりますが、いずれも加算を受けるためには通常より人員配置を充実させる必要があります。
居宅介護支援事業所は、いわゆる「一人ケアマネ」として管理者兼務の主任ケアマネ1人で立ち上げることも可能ですが、きめ細かいケアマネジメントの提供をおこなうには、やはり人員の充実は欠かせません。
加算の種類による人員基準の例
- 特定事業所加算(Ⅰ)では、管理者ではない、常勤かつ専従の主任ケアマネジャーの配置が2名以上
- 特定事業加算(Ⅱ)の常勤かつ専従のケアマネジャーの配置は3名以上
参考:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」
なお、介護保険制度改正や介護報酬改定により、人員基準や加算要件は変更される可能性があります。居宅介護支援事業所で働いたり、新たに立ち上げたりするときは、必ず公的機関が発表している最新情報を確認してください。
4.最後に
居宅介護支援事業所は、居宅での介護を始めるときも、始まったあとも、利用者やその家族にとってなくてはならない存在です。ケアマネジメントをする人数によっては非常に多忙な仕事でもありますが、利用者のQOLに貢献する職務として、やりがいも大きいでしょう。
居宅介護支援の現場で働くケアマネジャーのリアルな一日は、こちらの記事で取材しています。
▼居宅介護支援事業所のケアマネの一日密着動画をみる
また、居宅介護支援事業所で働くケアマネジャーの年収相場は、介護付き有料老人ホームについで、ほかの施設よりも高めになっています。

高まり続ける介護の需要に応え、質の高いケアマネジメントが提供できるよう、制度面の後押しも強化されています。ジョブメドレーではケアマネジャーの求人を多数掲載しています。居宅介護支援事業所への就職・転職をお考えの方はぜひご覧ください。