1. 2021〜2022年の介護職の賃金データを集計
「他業種と比べて給料が低い」と長年言われ続けている介護職。しかし近年では慢性的な人材不足を解消しようと、頻繁に待遇の見直し・改善がおこなわれています。直近では2022年2月より介護職員の月給を平均9,000円上げるための原資として「介護職員処遇改善支援補助金*」が支給されることになりました。
>2022年2月から賃上げ! 介護職、看護職、保育士などの処遇改善で給料はいくら上がる?
*補助金を導入した事業所インタビュー記事
>【介護職の賃上げ】事業所に聞く「2月開始の補助金、どう分配した?」
待遇改善のため数々の政策が打ち出されていますが、気になるのは「実際、介護職員の給料はどれだけ上がっているのか?」という点です。そこで今回は医療介護の求人サイトジョブメドレーとハローワークに掲載されている求人約20万件のデータを集計しました。
*集計対象は毎月決まって支払われる賃金(基本給 + 役職手当等)。月によって支給額が異なる残業手当や賞与などは含まない
2. 全国平均賃金の推移

常勤(月給) |
前期間との差額 |
|
---|---|---|
2021年7月 |
20万7,167円 |
– |
2021年10月 |
20万7,673円 |
+506円 |
2022年1月 |
20万8,426円 |
+753円 |
2022年4月 |
20万9,666円 |
+1,240円 |
非常勤(時給) |
前期間との差額 |
|
---|---|---|
2021年7月 |
1,160円 |
– |
2021年10月 |
1,166円 |
+6円 |
2022年1月 |
1,177円 |
+11円 |
2022年4月 |
1,181円 |
+4円 |
2021年7月〜2022年4月までの全国平均賃金の推移を見ると、常勤・非常勤ともに右肩あがりに増加していることがわかりました。とくに賃上げ補助金の支給対象期間でもある2022年4月分を見ると、常勤については+1,240円と大幅な増額となっています。
ただし2月開始の補助金については、基本給や決まって支払われる手当としてではなく「特別手当」などの名目で支給した事業所も多いと考えられるため、今回の集計データには反映されていない可能性があります。
3. 都道府県別の平均賃金
常勤(月給)
2022年4月の都道府県別の平均月給を高い順で並べると、次のようになりました。

続いて2月の賃上げを経て、都道府県ごとにどれほど変化があったのか見てみましょう。2022年1月と4月の平均月給を比較し、その差額をランキング形式にまとめました。
都道府県別2022年1月・4月の平均月給とその差額
順位 |
都道府県 |
2022年1月 |
2022年4月 |
前期間との差額 |
---|---|---|---|---|
1位 |
福井県 |
200,494円 |
205,842円 |
5,348円 |
2位 |
山梨県 |
204,961円 |
208,192円 |
3,231円 |
3位 |
宮崎県 |
176,434円 |
179,539円 |
3,105円 |
4位 |
岐阜県 |
208,140円 |
211,207円 |
3,067円 |
5位 |
茨城県 |
204,152円 |
207,214円 |
3,062円 |
6位 |
広島県 |
199,219円 |
201,653円 |
2,434円 |
7位 |
新潟県 |
193,983円 |
196,357円 |
2,374円 |
8位 |
大阪府 |
219,484円 |
221,845円 |
2,362円 |
9位 |
東京都 |
235,868円 |
237,994円 |
2,126円 |
10位 |
埼玉県 |
225,050円 |
227,048円 |
1,999円 |
11位 |
熊本県 |
183,076円 |
184,910円 |
1,834円 |
12位 |
神奈川県 |
232,015円 |
233,755円 |
1,740円 |
13位 |
山形県 |
182,887円 |
184,621円 |
1,734円 |
14位 |
秋田県 |
178,483円 |
180,166円 |
1,683円 |
15位 |
静岡県 |
207,396円 |
209,063円 |
1,666円 |
16位 |
北海道 |
188,094円 |
189,758円 |
1,663円 |
17位 |
福岡県 |
192,880円 |
194,519円 |
1,639円 |
18位 |
奈良県 |
212,899円 |
214,428円 |
1,529円 |
19位 |
栃木県 |
206,860円 |
208,352円 |
1,492円 |
20位 |
福島県 |
188,989円 |
190,473円 |
1,484円 |
21位 |
島根県 |
184,069円 |
185,375円 |
1,306円 |
22位 |
富山県 |
194,163円 |
195,355円 |
1,192円 |
23位 |
青森県 |
177,868円 |
178,974円 |
1,106円 |
24位 |
千葉県 |
222,483円 |
223,530円 |
1,048円 |
25位 |
長崎県 |
176,623円 |
177,571円 |
948円 |
26位 |
岩手県 |
180,365円 |
181,290円 |
925円 |
27位 |
和歌山県 |
189,686円 |
190,420円 |
734円 |
28位 |
兵庫県 |
211,669円 |
212,394円 |
725円 |
29位 |
三重県 |
204,918円 |
205,633円 |
715円 |
30位 |
沖縄県 |
179,975円 |
180,625円 |
651円 |
31位 |
山口県 |
182,498円 |
183,141円 |
643円 |
32位 |
愛知県 |
222,399円 |
222,998円 |
599円 |
33位 |
宮城県 |
195,063円 |
195,631円 |
569円 |
34位 |
京都府 |
210,280円 |
210,802円 |
522円 |
35位 |
岡山県 |
194,132円 |
194,563円 |
431円 |
36位 |
滋賀県 |
211,027円 |
211,369円 |
342円 |
37位 |
高知県 |
177,642円 |
177,918円 |
276円 |
38位 |
鹿児島県 |
186,758円 |
187,033円 |
275円 |
39位 |
愛媛県 |
188,453円 |
188,503円 |
50円 |
40位 |
香川県 |
198,634円 |
198,672円 |
37円 |
41位 |
長野県 |
199,005円 |
198,965円 |
-39円 |
42位 |
大分県 |
182,574円 |
182,146円 |
-428円 |
43位 |
石川県 |
200,631円 |
200,154円 |
-477円 |
44位 |
佐賀県 |
179,135円 |
178,489円 |
-646円 |
45位 |
群馬県 |
204,456円 |
203,662円 |
-794円 |
46位 |
鳥取県 |
186,673円 |
185,696円 |
-977円 |
47位 |
徳島県 |
189,200円 |
187,828円 |
-1,372円 |
最も昇給額が大きかったのは、福井県の「5,348円」。全国平均の昇給額(1,240円)の4倍以上と大幅アップです。
一方で前期間の金額を下回ってしまった地域は7県ありました。
非常勤(時給)
2022年4月の都道府県別の平均時給(非常勤)です。

続いて2022年1月と4月の平均時給を比較し、その差額をランキング形式にまとめました。
都道府県別2022年1月・4月の平均時給とその差額
順位 |
都道府県 |
2022年1月 |
2022年4月 |
前期間との差額 |
---|---|---|---|---|
1位 |
宮城県 |
1,114円 |
1,149円 |
35円 |
2位 |
福井県 |
1,085円 |
1,116円 |
31円 |
3位 |
石川県 |
1,101円 |
1,119円 |
18円 |
4位 |
佐賀県 |
972円 |
988円 |
16円 |
4位 |
新潟県 |
1,052円 |
1,068円 |
16円 |
6位 |
愛知県 |
1,185円 |
1,198円 |
13円 |
6位 |
和歌山県 |
1,064円 |
1,076円 |
13円 |
6位 |
青森県 |
1,007円 |
1,019円 |
13円 |
9位 |
岐阜県 |
1,075円 |
1,087円 |
12円 |
9位 |
山梨県 |
1,141円 |
1,153円 |
12円 |
9位 |
宮崎県 |
1,009円 |
1,021円 |
12円 |
9位 |
大阪府 |
1,256円 |
1,268円 |
12円 |
13位 |
茨城県 |
1,062円 |
1,073円 |
11円 |
13位 |
三重県 |
1,104円 |
1,114円 |
11円 |
13位 |
香川県 |
1,099円 |
1,110円 |
11円 |
16位 |
滋賀県 |
1,110円 |
1,120円 |
10円 |
16位 |
熊本県 |
1,047円 |
1,057円 |
10円 |
16位 |
京都府 |
1,228円 |
1,238円 |
10円 |
16位 |
高知県 |
1,080円 |
1,090円 |
10円 |
20位 |
神奈川県 |
1,255円 |
1,264円 |
9円 |
21位 |
大分県 |
1,053円 |
1,061円 |
8円 |
22位 |
千葉県 |
1,215円 |
1,222円 |
7円 |
22位 |
山口県 |
1,025円 |
1,031円 |
7円 |
24位 |
北海道 |
1,045円 |
1,051円 |
6円 |
25位 |
長野県 |
1,079円 |
1,084円 |
5円 |
26位 |
兵庫県 |
1,180円 |
1,184円 |
4円 |
26位 |
富山県 |
1,096円 |
1,100円 |
4円 |
26位 |
山形県 |
1,074円 |
1,078円 |
4円 |
29位 |
栃木県 |
1,068円 |
1,070円 |
2円 |
29位 |
福島県 |
1,049円 |
1,051円 |
2円 |
31位 |
広島県 |
1,111円 |
1,112円 |
1円 |
32位 |
静岡県 |
1,096円 |
1,096円 |
0円 |
32位 |
鹿児島県 |
1,069円 |
1,069円 |
0円 |
32位 |
沖縄県 |
1,052円 |
1,051円 |
0円 |
35位 |
島根県 |
1,021円 |
1,020円 |
-1円 |
35位 |
東京都 |
1,352円 |
1,350円 |
-1円 |
35位 |
秋田県 |
1,016円 |
1,014円 |
-1円 |
38位 |
岡山県 |
1,063円 |
1,060円 |
-3円 |
39位 |
群馬県 |
1,073円 |
1,069円 |
-4円 |
39位 |
愛媛県 |
1,102円 |
1,098円 |
-4円 |
41位 |
岩手県 |
1,017円 |
1,011円 |
-6円 |
41位 |
奈良県 |
1,118円 |
1,112円 |
-6円 |
43位 |
福岡県 |
1,109円 |
1,101円 |
-8円 |
44位 |
徳島県 |
1,185円 |
1,172円 |
-13円 |
45位 |
埼玉県 |
1,204円 |
1,190円 |
-14円 |
46位 |
長崎県 |
1,042円 |
1,017円 |
-25円 |
47位 |
鳥取県 |
1,099円 |
1,059円 |
-39円 |
昇給額が最も大きかったのは宮城県の「+35円」。また常勤の昇給額で1位だった福井県が2位にランクインしています。
一方で、前期間と比べ昇給額が下回った地域は13都県ありました。
4. 施設形態別の平均賃金
常勤(月給)
2022年4月の施設形態別の平均月給を高い順で並べると、次のようになりました。

続いて2月の賃上げを経て、施設形態ごとにどれほど変化があったのか見てみましょう。
施設形態別2022年1月・4月の平均月給とその差額
順位 |
施設形態 |
2022年1月 |
2022年4月 |
前期間との差額 |
---|---|---|---|---|
1位 |
訪問入浴 |
225,420円 |
234,326円 |
8,906円 |
2位 |
小規模多機能型居宅介護 |
199,361円 |
201,827円 |
2,466円 |
3位 |
グループホーム |
199,326円 |
200,990円 |
1,664円 |
4位 |
障害者施設 |
211,582円 |
213,244円 |
1,662円 |
5位 |
サービス付き高齢者向け住宅 |
201,815円 |
203,436円 |
1,621円 |
6位 |
有料老人ホーム |
220,355円 |
221,913円 |
1,558円 |
7位 |
ショートステイ |
205,408円 |
206,745円 |
1,337円 |
8位 |
訪問介護 |
212,588円 |
213,708円 |
1,120円 |
9位 |
クリニック・診療所 |
198,910円 |
199,914円 |
1,003円 |
10位 |
通所介護 |
203,647円 |
204,595円 |
949円 |
11位 |
介護老人保健施設 |
200,604円 |
201,474円 |
870円 |
12位 |
特別養護老人ホーム |
203,659円 |
204,514円 |
855円 |
13位 |
病院 |
210,875円 |
211,503円 |
628円 |
14位 |
通所リハビリテーション |
198,293円 |
198,647円 |
353円 |
施設形態別で見ると、すべての施設で増額となりました。昇給額が最も高かったのは訪問入浴の「+8,906円」で、2位とは大きな差をつけました。
非常勤(時給)
2022年4月の施設形態別の平均時給(非常勤)です。

月給で1位だった訪問入浴が4位に位置し、障害者施設が1位となりました。
施設形態別2022年1月・4月の平均時給とその差額
順位 |
施設形態 |
2022年1月 |
2022年4月 |
前期間との差額 |
---|---|---|---|---|
1位 |
訪問入浴 |
1,195円 |
1,229円 |
34円 |
2位 |
障害者施設 |
1,366円 |
1,390円 |
24円 |
3位 |
有料老人ホーム |
1,129円 |
1,138円 |
10円 |
4位 |
通所リハビリテーション |
1,044円 |
1,052円 |
8円 |
4位 |
小規模多機能型居宅介護 |
1,051円 |
1,059円 |
8円 |
4位 |
通所介護 |
1,062円 |
1,069円 |
8円 |
7位 |
訪問介護 |
1,358円 |
1,365円 |
7円 |
8位 |
特別養護老人ホーム |
1,068円 |
1,075円 |
6円 |
9位 |
グループホーム |
1,053円 |
1,058円 |
5円 |
10位 |
サービス付き高齢者向け住宅 |
1,171円 |
1,174円 |
3円 |
11位 |
病院 |
1,238円 |
1,238円 |
0円 |
11位 |
ショートステイ |
1,060円 |
1,059円 |
0円 |
13位 |
介護老人保健施設 |
1,082円 |
1,079円 |
-3円 |
14位 |
クリニック・診療所 |
1,126円 |
1,119円 |
-7円 |
昇給額の比較で見ると、常勤と同じく訪問入浴の「+34円」が最も高い結果となりました。
また昇給額がマイナスとなった施設は、介護老人保健施設、クリニック・診療所でした。
5. 今後どうなる? 介護職の給料
全産業よりも給料が低いと言われる介護職ですが、その差は徐々に縮まりつつあります。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、2012年の全産業と介護業界の平均月給の差額は約10万円でしたが、2020年には約6万円まで縮まりました。日本全体の賃金が伸び悩んでいるなか、介護は毎年改善されている数少ない業界の一つです。
また2022年2月より開始した「介護職員処遇改善支援補助金」は同年9月に終了しますが、その翌月には臨時の介護報酬改定がおこなわれ、新たに「介護職員等ベースアップ等支援加算」として処遇改善、特定処遇改善に次ぐ第三の加算として恒久的に組み込まれることが決定しています。加算率は2月の補助金の水準を維持し、収入の約3%(一人あたり月額平均9,000円)となる見込みです。
高齢化が進行する日本社会において、介護人材を確保・定着させることは喫緊の課題です。職員が長く安定して働き、介護の専門性を向上させていくためにも、今後も待遇の見直し・改善が図られていくと考えられます。
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