目次
- 1.子の看護休暇とは
- 子どもの看護が必要なときに休める制度
- 子の看護休暇と介護休暇の違い
- 育児を理由に仕事を辞める人が多いのは看護・介護・保育職
- 2.子の看護休暇を取得できる人
- ほぼすべての従業員が取得できる
- 対象外となる人
- 3.取得できる日数と給与の有無
- 子ども1人あたり年間5日
- 改正により時間単位での取得が可能に
- 有給か無給かは事業者が決める
- 4.子の看護休暇の取り方
- 申請に必要な情報
- 申請は事後でもOK
- 5.子の看護休暇に関するQ&A
- Q.5日で足りなくなったらどうする?
- Q.交代制勤務でも時間単位で取得できる?
- Q.子の看護休暇が無給の会社だと、有給休暇を使ったほうがいい?
- Q.参観日や入園説明会でも使える?
- Q.ほかの休暇と同日に連続取得することは可能?
- 6.おわりに
1.子の看護休暇とは
子どもの看護が必要なときに休める制度
子の看護休暇とは、子どもが病気やケガをした際に取得できる休暇のことで、育児・介護休業法で仕事と育児を両立するための権利と位置付けられています。休む理由には、風邪やインフルエンザなどの病気以外にも、予防接種や健康診断などの病院付き添いも含まれます。また、年次有給休暇とは別に付与されます。
子の看護休暇と介護休暇の違い
子の看護休暇は介護休暇と同じく育児・介護休業法によって定められています。介護休暇との主な違いは、取得可能な対象者と日数、ケアの対象となる人や内容にあります。
介護休暇 |
子の看護休暇 |
|
---|---|---|
対象者 |
要介護の家族を介護する従業員 |
小学校就学前の子を養育する従業員 ※2025年4月以降は小学校3年生まで拡大 |
ケアの対象となる人 |
事実婚を含む配偶者 自身の親と配偶者の親 祖父母 兄弟姉妹 子(養子含む) 孫 |
小学校就学前の子 |
日数 |
年間93日/1人あたり |
年間5日 ※未就学児が2人以上の場合は10日 |
対象となる内容 |
2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態(要介護2以上または厚生労働省が定める判断基準を満たす場合) |
疾病/負傷/予防接種/健康診断など ※ 2025年4月以降は行事参加の場合も取得可能に |
どちらもケアの対象に子どもが含まれていますが、子の看護休暇の場合、対象となる子どもの年齢に制限があります。
一方、介護休暇では年齢に制限はありませんが、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態であるなど判断基準を満たす場合にのみ認められます。
子どもがそれぞれの条件を満たす場合、いずれの休暇制度を利用するかは従業員の判断に委ねられます。
育児を理由に仕事を辞める人が多いのは看護・介護・保育職
2018年に厚生労働省がおこなった調査によると、出産・育児を理由に退職した人は、看護・介護・保育などの、「専門職・技術職」に就いている人の割合が24.2%ともっとも高いという結果でした。

なかでも、正社員では看護職の42.6%、フルタイムの非正社員では介護職が15.0%と多い傾向にあります。

医療・福祉業界ではつねに人手不足と言われています。育児が理由の離職を防ぎ、従業員が長く働き続けるためには、仕事と育児の両立をサポートするための制度や職場環境の整備が求められています。
2.子の看護休暇を取得できる人
ほぼすべての従業員が取得できる
子の看護休暇は正職員だけでなく、パートやアルバイト、契約職員などさまざまな雇用形態の人が取得できます。家族などほかに看護できる人がいても、基本的に雇用側は従業員の申し出を拒むことはできません。
対象外となる人
ただし、以下に当てはまる人は対象外となります。
・日雇い
・入職後6ヶ月未満*
・1週間の労働日数が2日以下
・時間単位での取得が難しい仕事に就いている**
*…2025年4月以降は取得可能に
**…病院などの交代制勤務にあり、途中で抜けることが難しい業務に関しては時間単位での取得は難しいとされるケースがありますが、1日単位での取得は可能
3.取得できる日数と給与の有無
子ども1人あたり年間5日
子の看護休暇は、小学生になる前の子ども1人につき5日、2人以上いる場合は最大10日取得可能と定められていますが、事業者の判断で日数を多く設けることもできます。
改正により時間単位での取得が可能に
2021年に育児・介護休業法が改正され、それまで半日単位でしか取得できなかった子の看護休暇が、時間単位でも取得できるようになりました。これにより、予防接種や健康診断など比較的短時間で済む用事の場合は1時間から取得でき、より使い勝手が良くなったといえます。
有給か無給かは事業者が決める
子の看護休暇は年次有給休暇とは別に設けられており、給与の有無については事業者側が決められます。有給休暇とした場合や育児・介護休業法を上回る日数を取得可能とした中小企業には助成金が支給されます。また、従業員が申し出た際に、雇用側が不当に拒むことや降格、解雇など従業員の不利益につながる処置を取ることは違法とされています。
4.子の看護休暇の取り方
申請に必要な情報
従業員は申請時に以下の情報の提出が求められます。
・自身の名前
・子の名前と生年月日
・子の看護休暇の取得年月日(時間単位の場合は取得時間も必要)
・病気やケガの証明または予防などの理由
申請は事後でもOK
子の看護休暇は予期せぬタイミングで必要となるケースもあります。緊急を要する場面も多いことから、電話やメールでの申請も認められるなど事業者側の配慮が求められます。
また、病気やケガの事実がわかる証明書類については、医師の診断書以外にも、薬を購入した際の領収書などでも認めるといった柔軟な対応が必要です。
5.子の看護休暇に関するQ&A
シフト制の場合は取得可能なのか、年次有給休暇とどちらを使うべきかなど子の看護休暇に関するQ&Aをまとめました。
Q.5日で足りなくなったらどうする?
A.就学前の子どもは病気にかかりやすいことや、予防接種も頻回あることから、年5日では足りない可能性もあります。その場合には年次有給休暇を使う、病児・病後児保育、ベビーシッターなどの預かりサービスを利用する、祖父母など預けられる親族にお願いするなどの方法があります。
Q.交替制勤務でも時間単位で取得できる?
A.夜勤や交替制勤務の人は時間単位での取得が難しいと判断されることもあります。
しかし、育児・介護休業法では子の看護休暇を取得しやすいよう、欠員補充のためのスタッフを余裕をもって配置するなどの体制作りを事業者側に求めています。
また、従業員が申し出れば夜勤や時間外勤務は免除となります。注意点として勤続年数が1年未満や、深夜に子どもを見てくれる同居の家族がいると対象外となります。免除されるかどうかは、就業規則や人事部に確認してみましょう。
Q.子の看護休暇が無給の会社だと、有給休暇を使ったほうがいい?
A.有給休暇か子の看護休暇を選ぶかは従業員本人の選択に委ねられ、無給では困る場合や、有給休暇が余っているので使いたいという希望があれば有給休暇を選べます。有給休暇の残りが少ない人や、短時間で済む用事には看護休暇を使うなど状況に合わせて判断してください。
ただし、子の看護休暇の制度を使わず欠勤となると、評価や査定に影響が出る可能性があります。制度を利用すれば、事業者側も従業員の状況を把握できるほか従業員の不利益にもなりませんので、正当な理由があれば子の看護休暇を利用しましょう。
子の看護休暇、年次有給休暇、欠勤の主な違いは次のとおりです。
子の看護休暇 |
年次有給休暇 |
欠勤 |
|
---|---|---|---|
取得可能日数 |
5日/年 |
10日/年* |
なし* |
給与の有無 |
事業者による |
あり |
なし |
取得理由 |
子どもの疾病/負傷/予防接種/健康診断 など |
問われない |
体調不良などの本人都合 |
評価や査定の対象 となるか |
ならない |
ならない |
なる |
*無断欠勤が続くと懲戒対象になる可能性がある
Q.参観日や入園説明会でも使える?
A.これまで、子の看護休暇が取得できるのは子どもの健康に関わる理由(病気やケガの看病、病院の受診や予防接種の付き添い)に限られていました。しかし、育児・介護休業法の改正により、2025年4月以降は行事参加の場合も取得可能となります。
Q.ほかの休暇と同日に連続取得することは可能?
A.子の看護休暇と半日有給休暇制度などを同日内に連続取得することも可能です。例えば午前中に子の看護休暇を使い、午後半休を取得するというケースです。また、介護休暇との併用も条件を満たしていれば可能です。
子の看護休暇の注意点は、中抜けができないことです。朝出勤して途中で子の予防接種などに付き添い、また仕事に戻るということは認められていません。
6.おわりに
幼い子どもは体調を崩しやすく、突然看護が必要となるケースも少なくありません。子の看護休暇は、育児をしながら仕事を続けられるよう従業員に与えられた権利です。時間単位での取得が可能になったことで、今後ますます柔軟な働き方の実現が期待できます。
雇用側には、より多くの従業員が必要に応じて休暇を取得できるよう社内での理解を進めるほか、弾力的な制度運用が求められています。
参考
- 厚生労働省|「育児・介護休業法のあらまし(令和4年3月作成)」より「 Ⅳ子の看護休暇制度」
- 厚生労働省|「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 及び 次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律の概要」
- 厚生労働省|「両立支援等助成金支給申請の手引き(2020年度版)」
- 厚生労働省|「労働者アンケート調査結果」より「2.出産・育児等を機に離職した仕事について」