目次
1.会計年度任用職員とは
会計年度任用職員とは、2020年4月の地方公務員法の改正により導入された非常勤の地方公務員のことです。従来の臨時職員や嘱託職員と呼ばれる非常勤職員に代わって設置されました。
法改正以前、非常勤の地方公務員は年々増加が続いていました。その任用状況は自治体ごとに異なり、採用方法が不明確なため適切な任用がされない、貢献度の高い職員であってもボーナスを支給できないといった問題がありました。これらを解消すべく新たに導入されたのが、会計年度任用職員です。
会計年度任用職員の求人は、自治体のサイトやハローワークなどで広く公募されます。応募後は書類選考、面接、筆記試験などを経て採用が決定します。
2.会計年度任用職員の勤務条件
【任用形態】フルタイムとパートタイムの2種類
会計年度任用職員は勤務時間によってフルタイムとパートタイムの2種類に分けられ、勤務条件に次のような違いがあります。
フルタイム 会計年度任用職員 |
パートタイム 会計年度任用職員 |
|
---|---|---|
週の勤務時間 | 38時間45分 (1日7時間45分×5日) |
38時間45分未満 |
任期 | 最長1年 | |
条件付き採用期間 (試用期間) |
1ヶ月(常勤職員は6ヶ月) | |
再任用(更新) | 2回まで | |
給与の種類 | 給料 | 報酬 |
期末手当(ボーナス) | あり | |
時間外勤務手当 | あり | |
退職手当(退職金) | あり ※6ヶ月以上勤続が条件 |
なし |
副業・兼業 | 不可 | 可 |
【任期】最長1年、更新は2回まで可能
会計年度任用職員の任期は、会計年度に合わせて最長1年間(通常4月1日〜翌年3月31日まで)となっています。従来の一部の非常勤職員(臨時的任用職員)の任期は最長6ヶ月でしたが、それより長い勤続が可能になりました。
また勤務成績が良好な場合は、最大2回まで再任用ができ、最長3年間の勤務を続けることができます。なお以前の制度では再任用の際、退職日から2〜3ヶ月程度の経過期間を設ける必要がありましたが、新しい制度ではこの空白期間が不要となり、すぐに任期を再開できるようになりました。
ただし、2回の再任用を終えてからも働き続けたい場合には、初回同様に再度求人に応募し、選考を経て採用される必要があります。
tips|労働契約法の「5年ルール」は適用されない
民間企業などに勤める有期雇用労働者(契約社員やパート・アルバイトなど、期間の定めのある労働者)の場合、同じ職場で5年以上勤めると無期雇用契約に転換できる通称「5年ルール(無期転換ルール)」が適用されます。しかしこの労働契約法は公務員には適用されないため、会計年度任用職員として更新を続けて5年以上働いても、無期雇用には転換されません。
【待遇】ボーナスあり、退職金はフルタイムのみ
会計年度任用職員の給与は任用形態により名称が異なります。フルタイムの場合は「給料」、パートタイムの場合は「報酬」として支給されます。
給与額は同じ職務をおこなう常勤職員の給料表を基準とし、さらに本人の知識や技術、経験などをふまえて決定します。再度の任用時も初回同様に経験年数などを考慮するため、実質的な昇給となる可能性もあります。
またこれまで非常勤の地方公務員に支給されなかったボーナス(期末手当)が、会計年度任用職員ではフルタイム・パートタイムを問わず支給可能になりました。さらに、時間外勤務手当のほか、宿日直手当、休日勤務手当、夜勤手当も同様に支給されます。
退職金(退職手当)に限っては、6ヶ月以上勤続したフルタイムの職員のみが対象となっており、パートタイム職員には支給されません。
【休暇・休業】年次有給休暇をはじめとした制度が利用可
休暇や休業については、国の非常勤職員と差がつかないよう、必要な制度が導入されています。
〈年次有給休暇〉
フルタイム・パートタイムを問わず取得可能。勤務状況により付与日数は異なる。
〈育児休業〉
以下のすべての条件を満たせば取得可能。
- 子が1歳6ヶ月になる日まで任期が継続し、かつ任用の終了が明らかでないこと
- 各自治体が定める勤務日数を満たす
〈その他の休暇・休業等〉
国の非常勤職員に準拠し付与する。
夏季休暇や年末年始休暇などの長期休暇については自治体や勤務先によって異なりますので、各募集要項を確認するようにしましょう。
【社会保険】パートタイムも共済組合の対象に
会計年度任用職員は、次の条件を満たすことで社会保険に加入できます。とくに公務員が加入する健康保険である共済組合については、2022年10月より適用範囲が拡大され、これまで適用外だったパートタイム職員も加入対象となりました。
〈社会保険(共済組合)の加入条件〉
- 1週間の所定勤務時間および1ヶ月の所定勤務日数が常勤職員の4分の3以上、かつ勤務期間の見込みが2ヶ月を超える
または
- 以下の条件をすべて満たす
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 給料(報酬)の月額が8万8,000円以上
- 2ヶ月以上の任用期間が見込まれる
- 学生でない
雇用保険については、通常の公務員は雇用保険法が適用されないため加入できません。しかし、会計年度任用職員のパートタイム職員、任期6ヶ月未満のフルタイム職員については、次の条件を満たすことで雇用保険が適用されます。任期が継続して6ヶ月以上あるフルタイム職員の場合は、退職手当が支給されます。
〈雇用保険の加入条件〉
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の任用期間が見込まれる*
- 学生でない
*フルタイム職員は、任用開始から6ヶ月未満が対象(継続して6ヶ月以上の場合は退職手当の支給対象)
【服務・懲戒】服務規程が適用され、懲戒処分の対象に
会計年度任用職員には地方公務員法が適用されます。そのため守秘義務や職務に専念する義務などの服務規程を遵守する必要があり、懲戒処分などの対象にもなります。
〈会計年度任用職員に適用される服務規程〉
- 服務の根本基準(地方公務員法第30条)
- 服務の宣誓(同法第31条)
- 法令等及び上司の職務上の命令に従う義務(同法第32条)
- 信用失墜行為の禁止(同法第33条)
- 秘密を守る義務(同法第34条)
- 職務に専念する義務(同法第35条)
- 政治的行為の制限(同法第36条)
- 争議行為等の禁止(同法第37条)
- 営利企業への従事等の制限(同法第38条)*
*パートタイムの会計年度任用職員は対象外
【副業・兼業】パートタイムのみ可
上述の服務規程にもあるとおり「営利企業への従事等の制限」、つまり副業や兼業が禁止されています。ただし対象となるのはフルタイム職員のみで、パートタイム職員は副業や兼業が認められています。
3.会計年度任用職員の実態
職種別の割合は「医療福祉職」が2割弱

総務省が2020年4月におこなった調査によると、会計年度任用職員に多い職種は「一般事務職員」が約3割。次いで「技能労務職員」「保育所保育士」と続きます。
医療福祉職では「放課後児童支援員」「看護師」「医療技術員*」もランクインしており、保育士と合わせて全体の約17%を占めています。
任用形態はパートタイムが9割
フルタイム・パートタイムの2つの任用形態がある会計年度任用職員ですが、同調査によると、パートタイム職員が約9割と大多数を占めていることがわかりました。

実際の求人例
医療介護福祉の求人サイトジョブメドレーでは、会計年度任用職員の求人を扱っています。実際にジョブメドレーに掲載されている求人をいくつか紹介します。
保育士(村営の託児所)の求人例
- 勤務地:長野県
- 任用形態:フルタイム会計年度任用職員
- 任用期間:1年(更新なし)
- 給与:月給 174,000円 〜 199,900円、賞与あり
- 選考内容:書類選考、面接
看護師/准看護師(町立認定こども園)の求人例
- 勤務地:奈良県
- 任用形態:パートタイム会計年度任用職員
- 任用期間:1年(更新なし)
- 給与: 時給 1,580円、賞与なし
- 選考内容:書類選考、面接
医療事務/受付(診療所)の求人例
- 勤務地:福島県
- 任用形態:フルタイム会計年度任用職員または契約職員
- 任用期間:1年~5年(原則更新)
- 給与:月給 149,300円 〜 186,500円、賞与あり(年2回・計2ヶ月分)
- 選考内容:書類選考、面接
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経験者の声
ここからは、実際に会計年度任用職員として働いている経験者の体験談を紹介します。


4.会計年度任用職員の今後
2020年の新設から間もない会計年度任用職員は、まだ発展途上であるといえます。
総務省が2022年4月におこなった実態調査によると、常勤職員との勤務時間の差が1日あたり15分しかないにも関わらずパートタイムとして任用されているケースが一定数報告されています。こうした状況を総務省は適切でないとし、任用状況を見直す必要性を指摘しています。
また現在、会計年度任用職員のボーナスは「期末手当」として支払われていますが、常勤職員や非常勤の国家公務員のボーナスは「期末手当」と「勤勉手当」から構成されており、賃金格差が生じている状況です。そこで総務省は、早ければ2024年度から会計年度任用職員のボーナスに勤勉手当も加えることを通知しています。
民間企業で同一労働同一賃金が推進されていることを受け、地方公務員においても待遇や制度に関する見直し・改善は今後も続くと考えられます。
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参考
- e-Gov法令検索|地方公務員法
- e-Gov法令検索|地方公務員の育児休業等に関する法律
- 総務省|会計年度任用職員制度等