目次
1.人間中心設計とは
人間の利便性を重視して設計すること
人間中心設計(HCD:Human Centered Design)とは、製品・システム・サービス・アプリなどを開発する際、ユーザーにとっての使いやすさを重視した思考のことをいいます。見た目の美しさや作り手の都合で設計するのではなく、ユーザーの利便性を第一に考えるということです。
人間中心設計は国際規格であるISOで規格化され、「ISO 9241-210: 2010」では以下のように定義しています。
システムの使い方に焦点を当て、人間工学やユーザビリティの知識と技術を適用することにより、インタラクティブシステムをより使いやすくすることを目的とするシステムの設計と開発へのアプローチ
引用:人間中心設計の国際規格ISO 9241-210: 2010のポイント
人間中心設計とユーザーエクスペリエンスの違い
人間中心設計と混同されやすい言葉にユーザーエクスペリエンス(UX:User eXperience)があります。ユーザーエクスペリエンスは製品やシステムを利用することで得られる「楽しい!」「使いやすい!」など、ユーザー体験の設計のことです。
人間中心設計の目的はより良いユーザーエクスペリエンスを目指すこと。つまり人間中心設計は、モノづくりにおいてのプロセスの一つと考えてよいでしょう。
2.人間中心設計の具体例
人間中心設計は身近なサービスや商品に活用されています。事例を見てみましょう。
レミパンプラス
料理愛好家の平野レミさんが考案した多用途型のフライパンです。ユーザー自身も気づいていない使用上の課題を人間工学や認知心理学の視点から特定し、フライパンのハンドルにお玉を一時置きできるようにするなどのデザインで解決をしました。
楽天ペイ
プロトタイプ段階でユーザーに1対1の面談式インタビューを繰り返し、「安全に加えて安心感が得られないといけない」「簡単よりもお得感」などのインサイトを発見。実際にサービスに反映しました。その結果、ユーザーの導入店への来店頻度が上がったことから、企業へのメリットを示すこともできました。
らくらくホン、らくらくスマートフォン
2000年代に普及した富士通株式会社の携帯電話「らくらくホン」「らくらくスマートフォン」も人間中心設計に基づいた商品です。視力や聴力へ配慮し、誰にでも使いやすい機能性、押しやすさを考慮したキーデザインを採用。また、機種変更をしても基本的な操作方法が変わらないという安心感が受け入れられました。
3.医療現場における人間中心設計
人間中心設計は医療、福祉、介護の分野でも取り入れられています。医療現場では医療機器の操作性、アラーム音、作動状態、医療用具の視認性など、リスク管理の観点からさまざまな工夫が施されています。例えば、点滴の輸液パックについては文字色を明瞭にしたり、残量目盛を確認しやすく配置したりするなどして安全性が向上されています。
4.人間中心設計の基本プロセス
人間中心設計における開発は、調査 → 分析 → 設計 → 評価の4つの活動を基本プロセスとし、反復的におこないます。
このサイクルを何度も繰り返しながら改善することでユーザーの利便性が向上されます。
5.第一に「誰が使うのか」を考える
人間中心設計とはいうものの、すべての人を満足させるプロダクトを作るのは非常に難しいものです。開発を進めるなかで、「誰が使うサービスなのか」「その人が本当に困っていることは何か」を見極め、より良いものづくりを目指していくことが大切です。