目次
1.【1月】異次元の少子化対策 表明
2023年1月、岸田首相が年頭記者会見で「異次元の少子化対策」に取り組むことを発表しました。2030年に向け少子化対策を「待ったなしの課題」と捉え、以下の3つの方針を掲げました。具体的な施策は、2023年6月に閣議決定した「こども未来戦略方針」で公開しています。
- 児童手当を中心とした経済的支援強化
- 幼児教育・保育の質・量の強化、すべての子育て家庭を対象としたサービスの拡充
- 育児休業制度強化を含む働き方改革の推進・制度充実
2.【3月】子ども福祉の新資格「こども家庭ソーシャルワーカー」に決定
2023年3月、児童福祉法改正により新設される資格の名称が「こども家庭ソーシャルワーカー」に決定しました。子どもの福祉に関して十分な専門性を持つ人材を輩出するため、2022年の改正で実務経験者を対象とした認定資格の導入が盛り込まれていました。
>こども家庭ソーシャルワーカーについて詳しくはこちらで解説!
3.【4月】男性の育休取得状況の公表義務化
育児・介護休業法改正により、2023年4月からは従業員1,000人以上の企業における男性の育休取得状況を公表することが、事業主に義務付けられました。雇用形態にかかわらず、1年以上勤務しており今後も引き続き働く見込みがある従業員が対象です。
該当する企業は、以下のどちらかを年に一度、Webサイトなど一般の人が閲覧できる形で公表しなければなりません。
- 育児休業等の取得割合(配偶者が出産した男性従業員のうち育休を取得した割合)
- 育児休業等と育児目的休暇の取得割合(配偶者が出産した男性従業員のうち育休または未就学児の育児目的の休暇を取得した割合)
>改正育児・介護休業法について詳しくはこちらの記事で解説!
4.【4月】こども基本法 施行
国内初の子どもに関する包括的な基本法となる「こども基本法」が2022年6月に可決・成立し、2023年4月に施行されました。1994年に児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)を批准して以降、最低限の法整備はおこなわれたものの包括的な基本法がなく、子どもに関する問題は児童虐待防止法など個別の施策で対応していることが課題となっていました。
こども基本法では「心と身体の成長段階にある人」をこどもと定義し、年齢を決めていないのが特徴です。6つの理念を軸に、こども大綱の策定や国・自治体の責務などについて定めています。

理念の1〜4は子どもの権利条約の4つの原則に基づき、5・6は家庭や社会の役割を示しています。
5.【4月】こども家庭庁 発足
こども基本法の施行と同時に、2023年4月からこども家庭庁が発足しました。これまで文部科学省や厚生労働省などが別々に担ってきた子ども関連政策の司令塔の役割を一本化し、子ども・子育て当事者の視点にたって包括的に子育て政策を進めることを目指しています。
6.【4月】出産育児一時金が50万円に
年々出産費用が上昇していることを踏まえ、2023年4月から出産育児一時金が42万円から50万円に引き上げられました(妊娠週数22週未満で出産した場合、産科医療補償制度未加入の医療機関で出産した場合は48万8,000円)。
出産育児一時金は国民健康保険または会社の健康保険(組合)から支出されており、子ども1人につき1回給付されます。医療機関、健康保険組合または市町村の窓口で申請できます。
出産育児一時金について詳しくはこちらの記事で解説!
>出産育児一時金とは?申請方法と直接支払制度の仕組み、差額が出た場合について解説
健康保険について詳しくはこちらの記事で解説!
7.【4月】小規模保育事業で5歳まで受け入れ拡大
2023年4月21日に、原則3歳未満の受け入れだった小規模保育園(定員19人以下)において、5歳までの受け入れを全国に拡大することが通知されました。これまでは国家戦略特区のみで特例措置としておこなわれていた5歳までの受け入れを全国展開した形です。
>小規模保育事業について詳しくはこちらの記事で解説!
8.【6月】こども未来戦略方針が閣議決定
少子化対策の具体的な取り組みとして、2023年6月13日に「こども未来戦略方針」が閣議決定されました。2030年までが少子化を脱する「ラストチャンス」としたうえで、3つの理念を掲げています。
- 若い世代の所得を増やす
- 社会全体の構造・意識を変える
- 全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する
こども未来戦略方針では多岐にわたる施策が予定されていますが、とくに早期に取り組む「加速化プラン」において、2024年度中までにおこなう施策としては以下のものがうたわれています。
こども未来戦略方針「加速化プラン」で2024年度中に実施予定の施策 | |
---|---|
児童手当の拡充 | ・対象を中学卒業までから高校生年代まで延長し、保護者の所得制限を撤廃 ・第3子以降の給付額を1万5,000円から3万円に引き上げ ・併せて扶養控除の撤廃が検討されている |
大学無償化の拡充 | ・授業料等減免、給付型奨学金(いわゆる大学無償化)について、約380万円までとなっている世帯収入制限を約600万円まで引き上げ |
こども誰でも通園制度(仮称)の創設 | ・就労要件を問わず時間単位で柔軟に利用できる新たな通園給付制度を創設 |
こども家庭センターの人員体制強化 | ・子育てに困難を抱える世帯や、ヤングケアラー支援を担う「こども家庭センター(2024年度より実施)」の人員体制を強化 |
子育て支援の拡充が期待される
2023年前半は、止まらない少子化への危機感を背景に、たくさんの子育て支援策が打ち出されました。2023年後半、そして来年に向かっても、育児・介護休業法や児童福祉法の改正による子育て関連施策が検討・実施される見込みです。