目次
1.保育園第三者評価とは
第三者機関がサービスを評価し公表すること
保育園(保育所)第三者評価とは、公正・中立な第三者機関が専門的かつ客観的な立場から保育園の運営体制や保育内容を評価し、公表することです。
2000年の社会福祉基礎構造改革(現、社会福祉法の改正)により始まった制度です。保護者が保育園を選ぶ際の参考となる情報を提供し、保育の質の向上、子どもの権利擁護につなげることを目的としています。評価対象は認可保育所、認証保育所、認可外保育所、認定こども園です。
保育園以外では特別養護老人ホームや障害者支援施設、社会的養護施設などの福祉施設でおこなわれており、総じて福祉サービス第三者評価と呼ばれています。評価をおこなうのは、都道府県が認証した評価機関です。法人格があること、福祉サービスを提供していないことなどが認証条件となっています。
評価をもとにサービスの改善ができる
第三者評価を受けることで、事業者側はサービス内容の見直しや改善をおこなうことができます。また、公表することで運営の透明性を保護者に示すことができるため選ばれやすくなり、事業所側にとってもメリットがあります。
第三者評価の受審は義務ではない
保育園における第三者評価の受審は法律で定められていないため、義務ではなく任意です。全国社会福祉協議会の調査によると、2022年における受審保育所数は2,272件で全体の約6%という結果でした。東京都では上限60万円まで費用を補助しているなど、受審支援策がある地域もありますが、地方などでは補助が出ないところも多く、なかなか受審が進まないのも実情です。
2.第三者評価の流れ

保育園第三者評価を受けるには、まず事業所がある都道府県が認証した評価機関に申し込み、契約をします。次に、職員の自己評価や保護者への評価を依頼したあと、評価機関の訪問を受け、設備面の調査や園長、職員に対しての聞き取り調査の対応をします。すべての評価項目が集まったら取りまとめがおこなわれ、園長からのコメントや評価機関からのフィードバックと合わせて公表される流れです。もし、事業所が公表に同意しなかった場合は公表されません。
評価結果は、各都道府県の第三者評価推進機構のホームページか、福祉医療機構のホームページ(WAM NET)で公表されます。
3.第三者評価の内容
主な評価項目
保育園の第三者評価の内容は、保護者にアンケートをおこなう「利用者調査」と、事業所で働く職員や経営層の自己評価をもとに第三者機関が評価した「事業評価」の結果で構成されています。
事業評価のなかには「サービス」と「組織マネジメント」に関する項目があります。

上記内容以外に、第三者機関による講評や保護者コメントの抜粋、利用希望者へのPR、評価を受けた事業所側の取り組み紹介などが記載されているところもあり、都道府県ごとに公表内容は若干異なります。
アンケートの質問例と書き方
職員がおこなう自己評価や保護者アンケートは匿名で回答し、全職員、全保護者を対象としています。回答は選択式以外にも自由記述も可能なため、細かな実情まで伝えられるようになっています。
保護者アンケートの質問例
- 保育園の保育目標、保育方針を知っていますか?
- 入園時に保育目標や方針、一日の過ごし方などについて十分な説明はありましたか?
- お子さんの発達や意欲を促すような遊具・玩具が十分に用意されていると思いますか?
- 職員の接遇や態度は適切と感じますか?
職員アンケートの回答方法は園内で統一されているところもあれば、個々の職員に委ねられているところもあります。
職員アンケート(自己評価)の質問例
- 事業所が目指していること(理念・ビジョン・基本方針など)を周知していますか?
- 経営層は事業所が目指していることの実現に向けて、自らの役割と責任を職員に伝えていますか?
- 登降園時に、家庭での子どもの様子を保護者に確認していますか?
- 行事等の実施にあたり、子どもが興味や関心を持ち、自ら進んで取り組めるよう工夫していますか?
4.転職活動にも役立つ第三者評価
客観的に保育園の運営状況や保育内容などを評価する第三者評価。補助金が出ない地域では、まだまだ受審件数が少ないなどの課題があります。より透明性のある運営や保育がおこなえるよう、各地での実施が望まれます。
保育園第三者評価にはこれから保育園選びをする保護者だけでなく、保育士が転職する際にも参考となる情報が公表されています。転職活動の際、応募を検討している保育園を事前にチェックしてみるのも良いでしょう。