HPKIカードとは? 医師・薬剤師への導入が進む背景、申請方法を解説

医療分野のICT化に伴い、保有資格を電子的に証明する「HPKIカード」の普及が進んでいます。医師・薬剤師をはじめ今後多くの医療福祉職で必要となりうるHPKIカードの導入背景と機能について理解を深めておきましょう。

HPKIカードとは? 医師・薬剤師への導入が進む背景、申請方法を解説

目次

1.HPKIカードとは

HPKIカードとは、医療福祉分野の公的資格を証明するための物理的なカードのことです。カードにはICチップが搭載されており、電子証明書が格納されているほか、電子署名などにも活用できます。HPKIとは「Healthcare Public Key Infrastructure」の略称で、日本語では「保健医療福祉分野の公開鍵基盤」と訳されます。

対象資格は、国家資格27種類と管理者等資格5種類です。電子処方箋やオンライン資格確認などの医療分野におけるICT化に対応するため、まずは医師、歯科医師、薬剤師資格での導入が始まっています。

HPKIカードの対象資格

国家資格(27種):医師、歯科医師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、看護師、保健師、助産師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、歯科技工士、管理栄養士、社会福祉士、介護福祉士、救急救命士、精神保健福祉士、臨床工学技士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、歯科衛生士、義肢装具士、柔道整復師、衛生検査技師、公認心理師

管理者等資格(5種):病院長、診療所院長、管理薬剤師、薬局開設者、その他の保健医療福祉機関の管理責任者

HPKIカードは、厚生労働省が定めた基準に準拠した認証局(医師なら日本医師会認証局、薬剤師なら日本薬剤師会認証局など)により発行されます。

HPKIカードの記載事項(例)

  • 資格証の名称
  • 資格の登録番号(医籍登録番号、薬剤師名簿登録番号など)
  • 氏名
  • 生年月日
  • 顔写真
  • カードID
  • カード発行日
  • カード有効期限
  • 資格保有者であることを証明する文言

※記載事項はカードの種類によって異なる場合があります

2.HPKIカード導入の背景

HPKIカード導入の始まりは2004年、厚生労働省に設置されていた医療情報ネットワーク基盤検討会が取りまとめた最終報告書の中で提言されました。当時は個人情報保護法(2005年全面施行)や電子署名法(2001年施行)などの制定により、安全な医療情報の取り扱いが求められ始めたころでした。報告書の中では、今後の医療福祉分野でのIT化推進が不可欠であり、署名自体に公的資格の確認機能を有する公開鍵基盤の必要性が説かれました。

これを受け、HPKI認証局の運用ルールや専門家会の設置などの整備とともにHPKIカードの導入が徐々に進められてきました。そして2023年1月の電子処方箋の解禁、同年4月から原則義務化した保険医療機関・保険薬局におけるオンライン資格確認などの医療分野のIT化の加速を受け、さらなる普及促進が進んでいます。

3.HPKIカードでできること

HPKIカードを使うと、次のようなことができるようになります。

  • 医療機関等での採用時の資格確認
  • 災害における医療チーム派遣時などの資格確認
  • HPKI電子署名(電子処方箋、医療文書保管、医療文書交換)
  • 講習会受付(出欠管理システム)
  • 研修会受講履歴・単位管理
  • ログイン認証(地域医療連携、ITシステムへのログイン認証)

電子署名が可能になることにより、電子カルテの普及も進むと考えられます。これまで紙カルテの保管や検索にかかっていた膨大なコストの削減、紛失・改ざんリスクの低減などの効果が期待されています。

4.HPKIカードの申請方法・費用

HPKIカードの発行は、厚生労働省の基準をクリアした認証局から申し込みが可能です。

新規発行手数料はカードの種類や認証局により異なり、5,000円〜3万円程度が目安となります。日本医師会や日本薬剤師会では会員割引制度を設けているほか、時期によっては補助金が適用される場合もあります。

5.HPKIセカンド電子証明書とは

HPKIカードの発行を補完する形で、HPKIセカンド電子証明書の普及も進んでいます。HPKIセカンド電子証明書とは、生体認証機能付きのスマートフォンとHPKIカードを紐づけることで電子認証ができるシステムのことです。HPKIカード本体がなくても電子署名が可能になります。

HPKIカードは物理的なカードのため、破損や紛失などにより業務が滞る事例が報告されていました。また世界的な半導体(ICチップ)の供給不足もあり、HPKIカードの新規発行が遅れている現状もあります。これらの問題に対処するためにも、即時発行が可能なセカンド電子証明書の提供が始まりました。

6.ICT化は待ったなし。早めの発行手続きを

医療分野でのICT化は待ったなしに進んでいます。厚生労働省は電子処方箋を2025年3月末までにおおむねすべての医療機関・薬局への導入を完了させるよう計画しており、日本医師会や日本薬剤師会は医師・薬剤師へのHPKIカード発行を促進しています。まだ発行が済んでいない人は、早めに申請を進めましょう。

今後はそのほかの医療福祉職でもHPKIカードの導入が進むことが予想されます。業界全体のICT化により、業務効率化や情報管理の安全性の向上が期待されます。

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参考

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