34歳で芸能業界から医療業界へ転職。調剤事務員の自分らしい働き方

社会人経験を経て、第二のキャリアとして医療や福祉の仕事に就いた人に話を聞くインタビュー企画。今回は30代で医療業界へ転職し、調剤薬局で働きながら登録販売者の資格を取得した女性に話を聞きました。

34歳で芸能業界から医療業界へ転職。調剤事務員の自分らしい働き方

目次

話を聞いたのはこんな人

調剤事務員のMさんのプロフィール

夫と愛犬とともに関東地方で暮らすMさん。短大卒業後は宝飾販売と芸能関連の仕事で働き、34歳でクリニックの医療事務として転職したことをきっかけに医療業界に足を踏み入れました。

長く働ける仕事を求め、医療業界へ

調剤事務員のMさん 取材中の様子

──販売や芸能など、まったく異なる業種からクリニックへ転職されたのはなぜでしょうか?

Mさん:結婚を機に、長く安定して働ける仕事に就こうと思ったのがきっかけでした。それまでやっていた芸能の仕事は、遅番だと夜10〜11時頃に帰宅するような働き方でしたので。

クリニックや病院の受付というと、中年の女性が長く勤めているイメージがありましたし、母はケアマネジャーで、友人に看護師が多いので、医療や福祉に携わる人が身近にいた影響もあったかもしれません。

とはいっても、そのクリニックは1年足らずで退職してしまったのですが……。

──退職の理由は何だったんですか?

実は婦人科系の病気が見つかり、開腹手術を受けたんです。自宅からクリニックまで少し距離があったので、術後の通勤が負担になってしまい……もっと近くで働ける職場に移ろうと思い、転職することにしました。

──それで次の職場として調剤薬局を選んだのですね。

ええ、自宅から歩いて通える距離の薬局で調剤事務の募集があったので。35歳で今の薬局に転職して、今年で8年目になります。

主な仕事内容は、受付、会計、処方箋の入力、調剤報酬請求、OTC医薬品の在庫管理などです。薬剤師が忙しいときは調剤補助として薬のピッキングをすることもあります。

*OTC医薬品…処方箋なしで購入できる医薬品のこと
*薬のピッキング…処方箋の内容に従って医薬品を棚から取り出し、必要量を揃えること

──薬のピッキングもされるんですね。覚えるのは大変ですか?

いえ、うちの薬局の場合、陳列が名前順になっていて照らし合わせて探せるので、それほど大変ではないですよ。効能別に分けられていたら、名前で判断がつかないので大変だと思いますが。

──なるほど。Mさんは2年前に登録販売者の資格を取得されたようですが、業務で必要になったのでしょうか。

会社から資格を取るよう言われたわけではないんです。ただ、勤め先で(OTC医薬品の一部である)要指導医薬品を販売・管理しているので、医薬品についての知識がもう少しあるといいなと思いました。

登録販売者の資格を持っていれば、薬剤師が忙しいときに代わってOTC医薬品をお客さんに案内できますし、発注時にも役立つだろうと。今から薬学部に入るのは難しいですが、登録販売者なら独学でも試験に合格すれば取れますし、コロナ禍のステイホーム期間で時間もあったので、挑戦してみようと思ったんです。

tips|登録販売者とは?

登録販売者とは、一般用医薬品(市販薬)の販売を担う専門資格です。一般用医薬品のうち第1類医薬品は薬剤師にしか販売が認められませんが、第2類・第3類医薬品は登録販売者でも販売が可能です。

登録販売者の資格は、都道府県ごとに実施される登録販売者試験に合格することで取得できます。

>登録販売者について詳しくはこちら

──調剤事務をしながら登録販売者の資格を取る人は多いんですか?

私の周りではそれほど……。30店舗ほど展開している会社ですが、調剤事務で登録販売者を持っているのは2〜3人くらいで、まだまだ少ないです。

働きながら登録販売者資格を取得

──試験に向けた勉強期間はどのくらいでしたか?

5月の受験申し込みから9月の試験まで、約4ヶ月ですね。試験の1ヶ月前くらいからは毎日1時間ほど勉強していたと思います。

問題集と参考書を買って、過去問をひたすら解いて。スキマ時間にスマホアプリも活用しました。

登録販売者資格試験の学習に使用したテキスト3冊
登録販売者資格試験の学習に使用したアプリ「登録販売者 過去問完全解説」
学習に使用したテキストとアプリ

──登録販売者の試験は、都道府県ごとに合格率が30〜60%程度と差がありますよね。

そうなんです。私の受けた地域は合格率40%程度でした。

受験者は社会人が中心で、働きながら資格取得を目指す人も多いと思うので合格率がほかの医療福祉系の資格と比べて低いのかもしれませんね。30〜40代くらいの同世代が多かったです。

──学生のように勉強時間を確保するのが難しい世代ですよね。試験結果はどうでしたか?

一発で合格しました! 漢方と薬事が苦手でしたが、どうにもわからないときは同僚の薬剤師に質問して、助けてもらいました。

資格を取っても学びは続く

調剤事務員のMさん 取材中の様子

──無事資格を取得し、その後の業務内容に変化はありましたか?

OTC医薬品の入れ替えや発注管理などで薬剤師任せだったところが、こちらから提案して商品を選択することが増えました。とくにOTC医薬品の分類変更はわりと頻繁にあるので、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)のサイトをチェックして、分類変更があった際には対応しています。

また最近はセルフメディケーション推奨の動きで、お客さんからOTC医薬品や制度について質問されることが増え、私から説明することもあります。薬剤師は忙しいことが多いので。

──調剤事務から一歩踏み込んだ仕事ができるようになったのですね。ちなみに、資格手当などは出るのでしょうか?

今はまだ会社全体で資格保有者が少ないので、手当はないんですよね……。ドラッグストアなら出るところもあると思いますが。

──そうなんですね。でも、せっかく資格を取得したのなら手当もついて、より直接的に資格を活かせるドラッグストアへの転職は考えませんか?

考えたことはありますが、ドラッグストアだと土日出勤になってしまうのがネックなんです。今の薬局は日曜日が固定休なので。

ほかの薬局の求人も見るは見ますが、また新入社員からスタートとなると、お給料も下がるでしょうし……今の職場にそれほど不満もないので、このままでいいかなと思っています。

──勤続8年ですし、長く勤めやすい職場なんですね。入社時からどのくらい昇給したのでしょうか。

昇給は年1回で、入社時から比べると3〜4万円ほど上がったと思います。

在籍も長くなってきたので、ここ数年は他店の応援に行ったり新規店舗の立ち上げを頼まれたりすることも増えましたね。

──立ち上げや応援にまで行かれるんですね! スーパーバイザーのようです。

そんな大した肩書はありませんが(笑)。でも、新しく入社した人が覚えやすいようにマニュアルを作ってみたり、その資料がわかりやすいと言ってもらえたら他店にも広めたりと、地道に少しずつ、いろいろとやってみています。私が入社した頃は、見よう見まねで覚えるしかなかったので……。

──新人の方はとても助かっていると思います。ところで、Mさんから見て調剤薬局の事務として働くうえで、向き不向きはあると思いますか?

そうですね……事務といいつつ接客業なので、人と話すのが好きなほうがいいかもしれません。とくに薬局はお年寄りも多く訪れるので、相手のペースに合わせてちゃんとコミュニケーションを取れるといいですね。

あとは自分で調べることが苦にならないことでしょうか。調剤報酬は2年ごとに改定されますし、新しい制度やルールの導入も少なくありません。そういったときに「自分には関係ない」と知らんぷりせず、自分で調べて仕事を進められる人じゃないと難しいかもしれませんね。暗記までは必要ありませんが、本を見て調べたりすることは必要だと思います。

調剤事務員のMさん 取材中の様子
「医療業界に入って、“ずっと学び続けなきゃいけない仕事”なんだなと感じました」

──では最後に、今後の目標があれば教えてください。

ひとつは、近ごろ漢方薬の人気が高まっているので、もう少し漢方の知識を深めたいと思っています。どの商品を入荷するか考える際にも役立ちますから。

また、社内で登録販売者の地位向上を目指していきたいとも思っています。登録販売者がいれば薬剤師が忙しいときの助けになりますし、業務の幅も広がります。会社としてもそれは歓迎すべきことだと思うので、これから取得を目指す人が少しずつ増えたらいいなと。

うちの薬局は役員にも気軽に話しかけられるような距離感なので、社員の資格取得を後押しするような提案をしていきたいと思っています。

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