保育士資格取得を目指す小澤さん
以前なるほど!ジョブメドレー編集部は、芸人を辞めて放課後等デイサービス(放デイ)で働く元ピスタチオの小澤慎一朗さんを取材しました。
小澤さんは取材の中で、「放デイで働きながら保育士資格の取得を目指している」と語りました。その理由を「SNSなどで保育の情報を発信するにあたり、より説得力を持たせるため」と話します。
その後編集部は、2023年10月の国家試験へ挑む小澤さんに半年間密着。仕事と勉強を両立する様子や、国試に向けた勉強方法を取材しました。
小澤さんの半年間を振り返る

小澤さんが本格的に勉強を始めたのは2023年1月。まずは参考書を購入し、読むことから始めました。選んだ書籍は『これだけ覚える!保育士重要項目 ’23年版』(成美堂出版)です。

その後は参考書をノートに書き写す「写経」に取り組みました。

初めて目にする単語は意味を調べ、書いて理解します。次第にノートが埋まっていきました。「イラストがあると理解しやすい」と図解を入れ、文字の色を変えながらインプットとアウトプットを繰り返します。

4月の取材時は疲れている様子で、勉強も進んでいませんでした。学校が春休みで放デイの出勤日が多く、芸能の仕事も重なったため勉強時間の確保が難しかったのです。

再度勉強に打ち込んだ5月。写経を進めるかたわら、過去問を解きながら得意科目と苦手科目をあぶり出し、苦手な分野を集中的に学びます。参考書籍は『1回で受かる!保育士過去問題集 ’23年版』(成美堂出版)です。

それ以降は地道に勉強を続けました。移動中などの空き時間は試験対策アプリを活用。主に取り組んだのは『保育士 |資格試験対策問題アプリ』です。
独自の勉強法もありました。勉強をしながら音声配信アプリ「Voicy」を配信し、わからないことをリアルタイムでリスナーに教わるというものです。また、独学で試験に合格したリスナーに勉強法を聞いて参考にしました。
家に帰れば一児の父。家庭と仕事を両立しながら勉強時間を捻出するのは、決して簡単なことではなかったはずです。
こうして地道な取り組みを続けるも、待っていたのは意外な結末でした。
「受験資格がありません」
2023年6月某日、小澤さんから一本の電話が入りました。
「10月の試験が受けられないかもしれません……」
保育士国家試験は年2回、前期(4月)と後期(10月)に実施されます。小澤さんが目指していたのは後期試験です。
受験申請をするために改めて応募要項を確認したところ、受験資格がないことが発覚しました。

保育士資格を取得するルートは3つあります。まず一般的なのは、保育士養成課程のある大学、短期大学、専門学校で所定の教育を修了するルートAです。次いで保育以外の学校を卒業して試験に合格するルートB。最終学歴が高校の場合、児童福祉施設で2年以上・2,880時間以上の実務経験を積んで試験に合格するルートCです(最終学歴が中学校の場合は実務経験が5年以上)。
小澤さんはルートCで挑む予定でしたが、受験申込の段階で所定の実務経験2年をクリアできていませんでした。その理由をこう語ります。
「試験日までに2年を達成すれば受験できると思っていたのですが、願書提出時点で2年以上働いていなければならなかったんです」
申請期日は公開されているのか
受験申請の期日について、保育士試験を運営する一般社団法人 全国保育士養成協議会に問い合わせたところ、以下の回答が寄せられました。
「ホームページやその他の案内では、受験申請期限日までに実務経験を満たす必要があることは記載されていません。放課後等デイサービスで勤務されている方が受験する場合は知事認定証明書が必要になりますので、都道府県ごとにお問い合わせいただくことになります」
次に、東京都の知事認定書の発行窓口である子供・子育て支援部保育支援課に、受験申請の期日の記載について質問しました。
「ホームページなどでは算定期間の記載をしておりません。放課後等デイサービスに勤務する方が受験を希望する場合、まず勤務施設が受験資格認定基準を満たしているかどうかを確認するためにお問い合わせいただきます。その際に勤務期間を確認し、受験資格の有無についてお伝えします」
両機関とも、今回の誤認識については前例がないとしながらも「期日の表記に関しては今後検討していく」との回答をもらいました。
なお、認可保育園、助産施設、乳児院などで勤務する人が受験時に施設に記入してもらう児童福祉施設勤務証明書には、「2年以上の勤務で総勤務時間数が2,880時間以上を受験申請の時点で満たすこと。 (高等学校卒業者)」と記載されています。
ホームページをはじめとした案内で、このような情報が明示的に記載されることを期待します。
これからどうする小澤さん?
思わぬ事態に直面した小澤さん。

──実務経験2年までどの程度足りなかったのでしょうか。
小澤さん:あと3ヶ月足りませんでした。
──受験資格がないことが判明したときは「まさか」という気持ちだったでしょうね。
もちろんショックでしたが、それよりも支えてくれた人たちが頭に浮かびました。ずっと応援してくれていた妻や放デイのスタッフ、Voicyで「頑張ってください!」と言ってくれたリスナーさんたちに対して申し訳ない気持ちでいっぱいで……。
──たくさんの人たちが支えてくれているんですね。
ええ。妻や放デイのスタッフにも伝えました。でも「また頑張ればいいから」と励ましてくれました。Voicyのリスナーさんには「小澤ならしょうがない(笑)」と笑われました。
──今後も試験取得に向けて勉強を続けますか?
そうですね、改めて勉強する時間ができたし、来年受験するまでに児童指導員任用資格を取りながらじっくりと準備をしていきます。
Voicyや最近始めたオンラインサロンを通して保育関係の人たちとつながって、保育士資格取得を目指す人たちのコミュニティをつくっていきたいです。支え合いながら勉強できたらいいなと思います。
──最後に、今後の意気込みと、これから試験を受ける人たちに向けてひとことお願いします。
勉強を始めたころは「いずれ資格が取れたらいいな」くらいの考えでしたが、今回の件で応援してくれる人、期待してくれている人がこんなにいるんだと実感しました。
その思いに応えるためにも「絶対に資格を取る」という意識が強くなりました。資格取得に向けてギアをもう一段上げて頑張ります。
10月の試験に挑む皆さん、くれぐれも体調には気をつけて、万全の状態で頑張ってください。今後実務経験を積んで受験しようと考えている皆さん、総勤務日数と総勤務時間だけは必ず確認してください。
◇◇◇
保育士国家試験の合格率は20%前後。実施回数が年2回あるとはいえ、独学で合格するのは大変な試験です。時間と費用をかけて専門学校に通う、通信教育を受けるなどの手段もあります。それぞれのライフスタイルに合った勉強法で、合格に向けた一歩を踏み出してください。
なるほど!ジョブメドレーでも独学で合格した人の勉強法と試験対策を紹介していますので参考にしてください。
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