障害者差別解消法とは?改正後2024年からの合理的配慮の義務化、罰則をわかりやすく解説

障がい者と接する人はもちろん、すべての人が知っておきたい「障害者差別解消法」について、法律で定められた内容や対象者、改正後の2024年4月からの変更点や罰則などについてわかりやすく解説します。

障害者差別解消法とは?改正後2024年からの合理的配慮の義務化、罰則をわかりやすく解説

目次

1.障害者差別解消法とは

障がいを理由とした差別の解消を目指す法律

障害者差別解消法は、正式名称を「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」といい、2013年に制定、2016年に施行されました。すべての国民が障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指すことを目的としています。

具体的には、行政機関や事業者などに対して、障がいのある人への「不当な差別的取扱い」の禁止と「合理的配慮」の提供を義務付けています

対象となる障がい者・事業者とは

この法律における障がい者は、障がい者手帳を持っている人に限らず、年齢制限もありません。身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、難病など心身の機能障害があり、日常生活や社会生活のなかで相当な制限を受けているすべての人が対象となります。

この法律における事業者などの対象者は、国や地方自治体などの行政機関、企業や団体などで、営利・非営利、法人・個人を問いません。個人事業主やボランティア活動グループなども対象となります。

2.【2024年度】障害者差別解消法の改正ポイント

障害者差別解消法で定められている主な内容は、障がいのある人への「不当な差別的取扱い」の禁止と「合理的配慮」の提供です。合理的配慮の提供については2021年の法改正を受け、2024年4月1日から事業者に対する努力義務が義務へと変更になりました。具体的な内容を見ていきましょう。

【改正後】障害者差別解消法の要点

不当な差別的取扱い合理的配慮の提供
行政機関等禁止義務
事業者禁止努力義務 → 義務
※2024年度より適用

不当な差別的取扱いの禁止

障がい者に対して正当な理由なく、または障がいを理由として、サービスの提供を拒否・制限したり、障がい者だけに条件をつけたりすることを禁止します。

具体的には以下のような事例が考えられます。

不当な差別的取扱いの例

不当な差別的取扱いについては、同法の制定当初から行政機関・事業者を問わず禁止されているため、今回の改正による変更はありません。

合理的配慮の提供の義務化

今回の改正を受けて、事業者などにおける合理的配慮の提供が「努力義務」から「義務」へと変更になりました。

これにより、行政機関や事業者がサービスを提供するにあたり、障がい者から社会的バリアを取り除くための対応が必要という意思表明があった際に、負担が重すぎない範囲でそのバリアを取り除く合理的な配慮(対応)をすることが義務付けられました。

具体的には以下のような事例が考えられます。

合理的配慮の提供例

同時に、合理的配慮の提供にはサービスの目的・内容・機能に照らし、次の3つを満たす必要があります。

〈合理的配慮における留意点〉

  1. 必要な範囲内で本来の業務に付随するものに限られること
  2. 障がいのない人と比較して同等の機会を提供するものであること
  3. サービスの目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと

例えば、飲食店において食事介助を求めた場合に、本来その店が食事介助のサービスを提供していないのであれば、介助を断ることは合理的配慮の提供義務には反しないと考えられます。

合理的配慮の提供では、障がい者と事業者が対話を重ね、互いに解決策を検討していくこと(建設的対話)が重要です。

対話のときに避けるべき言葉

tips|過去事例を参考に

どのような場合に「不当な差別的取扱い」や「合理的配慮」に該当するのかわからないときは、内閣府が公開している「障害者差別解消に関する事例データベース」を活用してみましょう。障がいの種別やシチュエーションに応じて事例を検索することができます。

>内閣府|障害者差別解消に関する事例データベース

3.障害者差別解消法の罰則

事業者が障がい者に対し、不当な差別的取扱いや合理的配慮をせずに障害者差別解消法に抵触した場合には、どのような罰則があるのでしょうか。

内閣府のQ&Aによると、事業者などが同法に違反した場合、ただちに罰則することはないとしています。ただし、同一事業者が違反を繰り返し、自主的な改善をおこなわない場合は必要に応じて報告を求めたり、助言や指導、勧告などの行政措置がとられることがあります(同法第12条)。さらにこの求めに対して無報告や虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料が科されます(同法第26条)。

4.障害者差別解消法に関する相談窓口

障がい者の差別解消に向け、政府や自治体は相談窓口を複数設置しています。障がい者と事業者の両者に向けた窓口がありますので、困ったことや相談したいことがある際に利用してみてください。

相談窓口対象者詳細
つなぐ窓口
※2025年3月まで設置
障がい者
事業者
電話:0120-262-701(10時〜17時/祝日・年末年始を除く)
メール:info@mail.sabekai-tsunagu.go.jp
詳細はこちら
みんなの人権110番
(全国共通人権相談ダイヤル)
障がい者電話:0570-003-110(平日8時30分〜17時15分)
詳細はこちら
事業分野別の相談窓口一覧事業者詳細はこちら

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参考

読者の方へのメッセージ

知らなかったでは済まない障害者差別解消法

障害者差別解消法では、障がいを理由にした差別を禁止し、合理的配慮をしないことも差別に含まれるとしています。この考えは、国連が定めた「障害者権利条約」に基づいています(日本は2014年に条約を結びました)。今回の改正では、行政機関や公共施設だけでなく、民間の会社やレストラン、ホテルだけでなく、社会全体に差別の禁止と合理的配慮が義務付けられた点が特徴です。

峯尾 武巳 (介護の会まつなみ 理事長) 2024/05/27

プロフィール

「なるほど!ジョブメドレー」は、医療介護求人サイト「ジョブメドレー」が運営するメディアです。医療・介護・保育・福祉・美容・ヘルスケアの仕事に就いている人や就きたい人のために、キャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。仕事や転職にまつわるご自身の経験について話を聞かせていただける方も随時募集中。詳しくは「取材協力者募集」の記事をご覧ください!
身体障害者療護施設、知的障害児施設、特別養護老人ホームの勤務を経て、2003年から2018年まで神奈川県立保健福祉大学にて介護福祉学を専門に教鞭を執った。介護支援専門員の養成には、制度開始前から指導者という立場で携わり、埼玉・東京・神奈川を中心に法定研修講師を務めている。その他、認定介護福祉士養成研修など数多くの研修会講師も勤め、多方面で活躍をしている。

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