児童福祉法とは? ポイントや改正についてわかりやすく説明

児童の権利を保障し、児童や保護者のあらゆる支援事業の根幹となるのが「児童福祉法」です。どんな法律なのかの基礎知識と、最新の改正内容を詳しく説明します。

児童福祉法とは? ポイントや改正についてわかりやすく説明

目次

1.児童福祉法とは

児童の福祉を保障するための法律 

児童福祉法とは、18歳未満の児童の福祉・権利を保障し、国民の責任を定めた法律であり、福祉六法のひとつです。児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)の精神に基づき、子どもの権利を守るための義務を保護者だけでなく国民全体、国と地方自治体にも課しています。

また、児童福祉法は児童相談所や保育全般、障がい児支援、養子縁組(里親)についても定めています。学校教育以外の場面における児童の暮らしを支える基盤となる法律だといえます。

「子どもの権利条約」の考え方
子どもの4つの権利 4つの原則
  • 生きる権利
  • 育つ権利
  • 守られる権利
  • 参加する権利
  • 差別の禁止
  • 生命、生存および発達に対する権利
  • 子どもの最善の利益
  • 子どもの意見の尊重

児童福祉法に定められている3職種 

児童福祉法では児童福祉施設のほか、児童福祉司、児童委員、保育士についてその責務や資格要件を定めています。

児童福祉司

児童福祉司は児童相談所の業務を中心的に担う職種で、児童や保護者からの相談対応や調査、指導などの支援をおこないます。児童福祉司はいわゆる任用資格であり「児童福祉司」という資格はなく、以下のいずれかに該当している必要があります。

なお、実際に働くには地方公務員(一般職、福祉職など)として採用され、児童相談所に配属されて初めて児童福祉司として仕事をすることができます。

児童委員

児童委員は地域の児童が安心して暮らせるよう見守りや妊娠中からの相談・支援をおこなう人であり、民生委員が児童委員を兼任します。児童を専門的に担当する場合は「主任児童委員」の指名を受け、支援に取り組んでいます。

児童委員(民生委員)になるには、20歳以上で市町村議会の選挙権がある住民である必要があり、民生委員推薦会と都道府県知事の推薦を経て、厚生労働大臣から委嘱されることで就任できます。

保育士

保育士は、専門的知識と技術をもって児童の保育・保護者への保育の指導をおこなう専門職であり、名称独占の国家資格です。

>保育士について詳しくはこちらの記事で解説しています

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2.児童福祉法の改正ポイント【2024年施行】

1947年の制定以降、児童福祉法は時代に合わせて繰り返し改正されてきました。

2021年度の児童相談所での虐待相談対応件数は20万7,659件(速報値)で、2020年度に続き20万件を超え過去最多となりました。これを受け、2024年4月施行の改正では児童虐待防止・対応の充実が重点的に変更されています。

児童福祉法の主な改正点

ポイント1|包括的な子育て支援強化

こども家庭センターの設置

子ども家庭センターはすべての妊産婦・子育て世帯・子どもの包括的な支援をおこなう施設で、市区町村が設置します。相談業務のほか、支援が必要な子ども・妊産婦への支援計画(サポートプラン)作成も担います。

これに伴い子ども家庭総合支援拠点と子育て世代包括支援センターを見直し、こども家庭センターに集約される見込みです。

さらに、子ども家庭福祉の現場で十分な専門性を持った人材を輩出するため、2024年から認定資格「こども家庭ソーシャルワーカー」の運用が始まります。

訪問などによる子育て支援事業の新設・拡充

市区町村が中心となり、訪問・通所・短期入所による子育て支援事業を新設・拡充します。支援や保護が必要な児童は約23万人、出産前に出産後の養育支援が必要と認められる妊婦は約8,000人いると推測されており、支援の充実が図られます。

新設する子育て支援事業

  • 子育て世帯訪問支援事業(子育ての情報提供、家事・養育の援助)
  • 児童育成支援拠点事業(学校・家以外の子どもの居場所支援)
  • 親子関係形成支援事業(子どもの発達に応じた支援、トレーニングなど)

拡充する子育て支援事業

  • 子育て短期支援事業(保護者が子どもと一緒に入所・利用できるようにする)
  • 一時預かり事業(レスパイト利用ができることを明確化)

ポイント2|虐待防止・児童相談所の体制強化

児童虐待の増加による児童相談所の負担増大を解消するため、民間事業などとも協力し、支援が強化されます。

子どもの意見を聴く取り組みを実施・強化

都道府県の業務として「子どもの権利擁護の環境整備」を明確化し、児童相談所がおこなう措置などの各段階において、子どもの意見の聴き取りを実施します。これまでは児童相談所の対応の過程でどのタイミングで意見聴取をおこなうか決まっていなかったり、各相談所によって実施の有無にバラつきがあったりすることが課題となっていたためです。

また、子どもの意見表明を支援する事業そのものを児童福祉法による制度に位置づけ、自治体は体制整備に努めることとされています。

児相による一時保護開始時に司法審査を導入

児童相談所が一時保護をおこなうときに、適正性・透明性を確保するため裁判官による司法審査が導入されます。

一時保護とは、虐待の疑いがある場合に子どもを親から引き離して保護するもので、これまでは児童相談所の判断のみでおこなわれていました。そのため緊急性が高い場合に子どもの安全確保につながる一方、虐待ではなく事故によるケガなどだった場合、保護者が反論の機会なく長期的に親子が引き離されることになり、子どもの権利条約違反の観点からも問題視されていました。

そこで今回の改正では、一時保護要件を明確化したうえで、事前(緊急性が高い場合は事後)に裁判官が発行する一時保護状に基づいて実施することになりました。

ポイント3|18歳以上の自立支援の強化 

児童養護施設や障害児入所施設で暮らしてきた児童に関して必要に応じて22歳まで支援が延長されるほか、自治体の移行調整の責任、生活・就労相談の場の提供について明確化されました。

児童福祉法では「児童」を18歳未満と定めており、児童養護施設や障害児入所施設による支援が終了するタイミングとなっています。しかし実際には18歳から住居や収入を確保して完全に自立した生活を送ることは難しく、柔軟な支援や適切な支援先へつなぐ必要性が指摘されてきたことが背景です。

ポイント4|日本版DBS導入の取り組み 

ベビーシッターによる強制わいせつ事件などを受け、教育・保育に携わる仕事に就く場合に性犯罪歴がないことを証明する「日本版DBS」制度導入への議論が本格化しています。このうち児童福祉法では、保育士の登録取り消し事由や欠格期間について改正がおこなわれました。

*DBS:Disclosure and Barring Service(前歴開示および前歴者就業制限制度)
児童福祉法改正(2024年4月施行)による保育士の欠格期間などの変更点
改正前 改正後
禁錮以上の刑に処せられた場合の欠格期間 刑の執行が終わった日から2年 期限なし
罰金刑に処せられた場合の欠格期間 刑の執行が終わった日から2年 刑の執行が終わった日から3年
登録取消・免許失効の欠格期間 登録取消の日から2年 登録取消の日から3年
登録取消の事由 取消事由に「わいせつ行為をおこなったと認められる場合」を追加
わいせつ行為をした者の再登録の制限 欠格期間を過ぎれば再登録申請が可能 わいせつ行為で登録を取り消された者については、その後の事情から再登録が適当な場合に限り再登録が可能
わいせつ行為により登録取消・免許失効した者の情報把握(データベース) 規定なし わいせつ行為により登録取消となった者の情報が登録されたデータベースを整備するなど、雇用者が情報を把握できる仕組みを構築

なお、ベビーシッターに関しては児童福祉法に基づく事業停止命令の情報公表を定めることで、利用者への情報提供が図られています。

3.児童福祉法に基づく児童福祉サービス一覧

児童福祉法で定める児童福祉施設は以下のとおりです。児童本人だけでなく親の支援も含まれるほか、障がい児支援についても障害者総合支援法と併せて施設・制度の根拠となっています。

児童福祉法に基づく児童福祉サービス
助産施設 入院などが必要なものの経済的理由により入院・助産を受けることができない妊産婦を入院させ、助産を受けさせるための施設
乳児院 1歳未満の乳児を入院させ、養育や退院後の相談支援などをおこなうための施設(必要性が高い場合には未就学児まで受け入れる)
保育所 保育を必要とする乳幼児を通わせて保育をおこなう施設
母子生活支援施設 配偶者のいない、または近い状態にある女性とその子どもを入所させ、保護・自立支援、退所後の相談支援をおこなうための施設
児童養護施設 保護者がいない、虐待されているといった養護が必要な児童を入所させ、養護するとともに退所後の相談・自立支援をおこなう施設
児童心理治療施設 環境上の理由で社会生活への適応が困難になった児童に対し、心理に関する治療および生活指導をおこない社会生活への適応を支援する施設
障害児相談支援 障害児通所支援の利用申請時における計画案の作成、サービス利用中のモニタリングと必要に応じた計画の見直し・変更をおこなう
児童発達支援センター 障がい児を通わせて支援する施設で、福祉型では生活に必要な動作・知識・技能の訓練を、医療型では生活に必要な訓練および治療をおこなう
保育所等訪問支援 専門的な支援を必要とする障がい児が通う保育所や小中学校に訪問し、本人や教職員への支援、保護者への情報共有をおこなう
障害児入所施設 障がい児を入所させて支援する施設(福祉型、医療型)
放課後等デイサービス 放課後や学校休業日に、日常生活に必要な訓練や創作的活動、地域交流などの活動の場を提供する
児童自立支援施設 不良行為をする(恐れのある)児童や家庭環境に困難のある児童を入所または通わせて、必要な指導や自立支援、退所後の相談支援などをおこなう
児童家庭支援センター 地域の児童福祉に関する問題の相談に対し、専門的な対応が必要なものについて助言やほかの機関との連携を図り、総合的な援助をおこなう施設
児童館 児童に健全な遊びを与え、健全育成をおこなうための施設
小規模保育事業 6人以上19人以下の定員で、5歳までを対象にきめ細かな保育をおこなう
家庭的保育事業 3歳未満の児童を対象に、5人以下の規模で家庭的な雰囲気のもときめ細かな保育をおこなう
地域型保育事業
(居宅訪問型保育事業)
保育が必要な乳幼児の居宅で、家庭的保育者が保育をおこなう
事業所内保育事業 事業所が主体となって開設する保育所で、3歳未満の従業員の子どもと地域の子どもを対象とする
小規模住居型児童養育事業
(ファミリーホーム)
養育者の家庭で定員5人または6人の要保護児童を迎え入れ、児童間の相互作用を活かしつつ、きめ細かな養育をおこなう
里親支援センター 里親のリクルート・アセスメント、研修や里親と児童のマッチングなど、一貫して里親支援をおこなう施設(フォスタリング機関)※法改正により設置

児童福祉法に基づく給付の支給

療育の給付

結核にかかっていて長期の入院が必要な児童に対して、医療の提供(療育の給付)、学校教育の機会の確保・学用品の支給ならびに療養生活に必要な日用品の支給がおこなわれます。都道府県の健康福祉課などに医師の診断書や所得税額証明書などを添えて申請し、指定療育機関(病院)が入院先となります。

なお、世帯収入が一定以上の場合、一部自己負担が発生する場合があります。

障がい児支援の給付

障がい児支援については、以下の各サービス費用の一部が給付されます。サービス費用の自己負担は原則1割です。世帯収入に応じて月ごとの負担上限額も決まっており、生活保護世帯・住民税非課税世帯は0円、住民税の所得割28万円(世帯年収890万円程度)未満は月4,600円、所得割28万円以上は月3万7,200円です。

障害児通所支援の給付

  • 児童発達支援
  • 居宅訪問型児童発達支援
  • 医療型児童発達支援
  • 放課後等デイサービス
  • 保育所等訪問支援

障害児入所支援の給付

  • 福祉型障害児入所施設
  • 医療型障害児入所施設

障害児相談支援(利用計画作成)の給付

  • 障害児支援利用援助
  • 継続障害児支援利用援助

4.児童福祉サービスを利用するには

児童福祉サービス利用の流れ

児童福祉サービス利用の流れ

5.一層の子どもの権利擁護を

児童福祉法は、保育や児童の保護、障害福祉サービスなど児童に関する幅広い福祉・支援の根拠となる法律です。子どもの権利条約の理念や、海外で導入が進むDBS構築など、既存の福祉サービスに加え、国際水準に照らし合わせた改正も進んでいます。児童に関わる仕事をしている・これから就職したい人は、最新情報をしっかりチェックしておきましょう。

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参考

e-Gov「児童福祉法

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