
1.MRとは
2.MRの仕事内容
3.MRになるには
3-1.仕事をするうえで必須の資格はない
3-2.MR認定試験とは
3-3.MRの人数・男女比
3-4.薬剤師資格保有者の割合
4.MRの平均年収(国内大手製薬企業5社)
5.最後に
1.MRとは
MRとは「Medical Representative」の略です。日本語では「医薬情報担当者」と訳されます。MRは製薬企業の営業担当者として製薬会社に所属する人とCSO企業(Contract Sales Organization:医薬品営業マーケティング受託機関)に所属して、そこから製薬会社に派遣される人(コントラクトMR)に分かれます。
医薬品情報を扱う窓口として一定の需要はあるものの、MRの総数は減少傾向にあります。

2.MRの仕事内容
MRの役割は「医薬品情報の提供と収集」をおこない、自社(または営業代行する製薬企業)の医薬品の普及につなげることです。医薬品には医師の処方が必要な「医療用医薬品」と「一般用医薬品(OTC医薬品)」がありますが、MRが扱うのは医療用医薬品です。
営業担当者といっても「薬を販売する仕事」ではなく「医薬品情報を扱う仕事」であるという点をおさえておきましょう。以下で具体的な内容を紹介します。

<医薬品情報の提供>
MRは医薬品の基礎情報(効能・用法・用量など)や相互作用、使用上の注意点などが記載された「添付文書」に関する情報提供をおこないます。添付文書の内容に改訂があった際にはただちに最新の情報を提供しなければなりません。
<医薬品情報の収集>MRは医薬品情報を提供するだけではなく、医療機関から医薬品の有効性(効き目や効果的な使い方)や安全性(副作用など)に関するフィードバックを受けます。得られた情報は自社の製品開発に活かしたり、副作用などが出た際には、厚生労働省への報告をおこなったりします。
3.MRになるには
3-1.仕事をするうえで必須の資格はない
MRになるために必須となる資格はありません。そのため、製薬企業の採用試験に合格すればMRになることができますが、応募条件を「大学卒業以上」としている企業がほとんどです。とくに大手の製薬企業は人気があり、入社難易度も高いといえます。
3-2.MR認定試験とは
厚生労働省認可の「公益財団法人MR認定センター」は、MRに必要な専門知識を客観的に評価するため、1997年から毎年「MR認定試験」を主催しています。MR認定試験に合格すると、MR認定証が発行されます(5年ごとに更新手続きが必要)。
MR認定証がなくてもMRの仕事に就くことはできますが、多くの製薬企業では入社後にMR認定証の取得が義務付けられ、座学などによる研修がおこなわれます。また、病院によってはMR認定証がないと入館できない場合もあるため、入社1年目の12〜1月頃にMR認定試験を受験するのが一般的です。
2022年度のMR認定取得者数は4万8,962人で、全体の98.6%に達しています(参考:MR認定センター|2023年版MR白書)。
■試験概要(日程・受験資格・出題科目)MR認定センターの登録企業勤務かどうかにかかわらず、条件を満たせば受験資格が得られます。それぞれの受験資格は以下のとおりです。
1. MR認定センターに登録している企業に在籍している人
【受験資格条件】
在籍する製薬企業または CSO企業で導入教育を受講・修了する。
2. MR認定センターの登録企業に在籍していない人
【受験資格条件】
認定センターの教育研修施設で基礎教育(300時間)を受講・修了する。
【MR認定証交付条件】
試験合格後、導入教育(実務教育150時間)を修了し、MRとしてMR経験(6ヵ月)が必要となる。
MR認定試験の問題は、認定センターが販売している「認定テキスト」から出題されます。
試験科目は(1)医薬品情報(2)疾病と治療(3)MR総論に分かれており、すべての科目で一定以上の水準(非公表)に達することで合格となります。医師、歯科医師、薬剤師のいずれかの資格をもつ人は(1)と(2)の科目が免除されます。
■合格率2022年12月におこなわれたMR認定試験の受験者数は全体で1,232人、合格者数1,010人、合格率82%となっています。
区分 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
新規受験 | 1,035人 | 878人 | 84.8% |
再受験 | 197人 | 132人 | 67% |
合計 | 1,232人 | 1,010人 | 82% |
近年の受験者数は減少傾向にあります。合格率は年度によってばらつきがあるものの、再受験者に比べて新規受験者の合格率が安定的に高い割合を示しています。

参考:MR認定センター|これまでの試験結果
※2020年は新型コロナウイルス感染蔓延のため、代替の「2020年度IBT形式MR認定試験」が実施された
3-3.MRの人数・男女比
MR業務についている人の数は全体で62,433人。そのうち男性は53,185人、女性は9,248人となっています(2018年3月31日時点)。

参考:MR認定センター|MR白書2018「MRの概要について」
※同調査における男女比の公表は2017年度までとなっています。
3-4.薬剤師資格保有者の割合
MR4万9,682人のうち薬剤師の資格をもつ人は4,268人で全体の8.7%となっています。また、医師、歯科医師、看護師などの有資格者は237人で0.5%でした。薬剤師資格を持っていない人でも、十分に挑戦の機会がある資格であることがわかります(参考:MR認定センター|MR白書2023 「MRの概要について」)。
4.MRの平均年収(国内大手製薬企業5社)
売上収益 |
従業員数 |
平均年齢 |
平均年収 |
|
---|---|---|---|---|
武田薬品工業 |
4兆274億円 |
単体5,486人 |
42.8歳 |
1,097万円 |
アステラス製薬 |
1兆5,186億円 |
単体4,867人 |
42.4歳 |
1,061万円 |
大塚HD |
1兆7,379億円 |
単体147人 |
43.6歳 |
1,040万円 |
第一三共 |
1兆2,784億円 |
単体5,756人 |
45.3歳 |
1,119万円 |
エーザイ |
7,444億円 |
単体3,043人 |
43.6歳 |
1,050万円 |
国内大手製薬企業5社の平均年収はMR以外の職種も含む金額です。あくまで参考程度にとらえておきましょう。
5.最後に
MRが減少している背景には、有効性・安全性の情報が蓄積された新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を使っており、品質、効き目、安全性が同等とみとめられている「ジェネリック医薬品」(後発医薬品)の普及が進んでいること、処方する医師や患者の母数が限られる抗がん剤などのスペシャリティ領域が伸長したことなどにより、MR自体の役割が縮小しつつあるという事情があります。
また、厚生労働省は製薬企業の「医療用医薬品に関する販売情報提供活動」における不適切なプロモーションを抑制するために「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」を発表しました。同ガイドラインは2019年4月1日より適用されています。
そのため、今後はMR一人一人にはより高い専門性が求められることが予想されます。「数から質への転換期」において、患者主体の医療に貢献できる人、新しい医療制度や法律などの理解を深め、医師・薬剤師と信頼関係を築ける人には活動の幅が広がるでしょう。
製薬企業のMRにはその専門性を高めるだけでなく、事業部長やマネージャーなどの管理職へのステップアップや医薬品のマーケティング担当・流通担当などへのキャリアパスも考えられます。就職・転職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。