目次
1.合格率が20年ぶりに30%超え
2024年度のケアマネジャー試験(介護支援専門員実務研修受講試験)の実施状況が12月26日に公開され、20年ぶりに30%を超えたことが明らかになりました。今年度の合格率は32.1%で、ケアマネジャー試験が始まってから過去5番目の高さとなります。また、受験資格が厳格化された2018年度には、過去最低の10.1%を記録しましたが、それ以降では最高水準となりました。
なお、2024年度の受験者は5万3,669人で、2023年度の5万6,494人から約5%減少しました。一方、合格者数は2023年度の1万1,844人に対し、2024年度は1万7,228人となり約45.5%増加しました。
2.専門家「基本的な知識を問う問題が多かった」
この章では、長年にわたり法定研修などの指導者として携わってきた、NPO法人介護の会まつなみ理事長の峯尾武巳さんに、試験各分野ごとの出題傾向について話を伺いました。
介護支援分野(問題1〜25)
「基本的な知識を問う問題が多かった印象です。過去に見られたような、法律の条文から出題するような問題はなく、しっかりと考えれば答えを見いだせる問題が増えました。そのため、過去問などで対策をした方にとっては、例年よりも簡単との印象があったかもしれませんね。また、ヤングケアラーやダブルケアなど、介護を取り巻く近年の状況についての選択肢もありました」
保健医療サービスの知識等(問題26〜45)
「感染症予防や栄養、口腔ケア、リハビリテーションなどから幅広く出題されています。ケアマネジャー試験は受験資格が厳しくなり、受験者の方は医療・介護分野の基礎教育をすでに受けているため、この分野の知識は業務のなかで身についているのではないでしょうか。また、選ぶべきでない選択肢がわかりやすい問題も多かったように感じました」
福祉サービスの知識等(問題46〜60)
「ケアマネジャーの業務に必要になる、ソーシャルワークに関する出題が目立ちました。生活保護や成年後見人制度、虐待防止などの知識が必要になりますが、問題としては難しくない印象でした。現在は重層的体制支援整備事業など、さまざまな政策が進められているので、合格には幅広い勉強が必要になります」
3.合格率上昇の背景に“深刻なケアマネ不足”
合格率上昇の背景として、峯尾さんはケアマネジャーの深刻な人手不足や業務環境の厳しさを挙げます。
「ケアマネジャーを取り巻く環境は、年々厳しくなっています。そのため、試験の難度を下げて担い手を増やそうと考えているのかもしれません。累計の合格者は増えていきますが、同時にケアマネジャーの高齢化も進んでおり、人手不足の状況です。さらに、介護福祉士に対する処遇改善交付金などの影響で、ケアマネジャーと現場の職員で給与が逆転している実態もあります」
また、試験の合格者の増加が、人手不足の解消に直結しない可能性について、次のように解説します。
「医師や看護師として働いている受験者のなかには、日々の業務に知識を活かしたいと考えて受験する人もいます。そのため、試験の合格者を増やすだけでは、現場のケアマネジャー不足が解決するとは限りません。現在のケアマネジャーは、本来の業務範囲を超え、さまざまな相談にも対応せざるを得ない状況です。今後、担い手を増やしていくには、国の主導による業務の整理や、利用者にケアマネジャー本来の役割の周知といった、さまざまな取り組みが求められます」
4. ケアマネジャーの働く環境に変化の兆し
深刻な人手不足のなか、ケアマネジャー試験の合格率が20年ぶりに30%を超えました。しかし、介護現場でのケアマネジャー不足が実際に解消されるかは、引き続き注目が必要です。
峯尾さんは「ケアマネジャーの仕事は、知識やスキルを引き継ぐことが重要です。これから定年を迎えるケアマネジャーも増えるので、業務を整理し、働きやすい環境を整える必要があります」と話します。
厚生労働省でもケアマネジャーの業務を整理するなど、業務環境を改善するための検討を続けています。ケアマネジャーの仕事を魅力的なものとし、志望者を増やすため今後、さらなる取り組みが期待されます。
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参考
厚生労働省|介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況等