目次
- 1.有給休暇(年休)の基本ルールをおさらい
- 有給休暇とは
- 有給休暇の付与日数
- 有給休暇の取得期限
- 2.退職前に有給休暇を消化するための3つのステップ
- (1)有給休暇の残り日数をチェック
- (2)上司や人事担当者に相談する
- (3)引き継ぎのスケジュールを立てる
- 3.退職前に有給消化が間に合わない理由と対処法
- 【理由1】引き継ぎが終わらない
- 【理由2】業務が忙しい
- それでも有給消化を拒否されたら?
- 4.退職前の有給消化に関するQ&A
- Q.消化できなかった有給は買取ってもらえる?
- Q.有給消化中に保険証(資格確認書)は使える?
- Q.有給消化中に就職先で働ける?
- Q.有給消化期間の上限は? 40日分まとめて使える?
- Q.有給消化中に新しい有給は付与される?
1.有給休暇(年休)の基本ルールをおさらい
有給休暇とは
有給休暇とは、給与が支給される休暇です。この制度は、労働基準法第39条で定められており、正社員やパートタイムなどの労働区分を問わず、以下の要件に該当するすべての労働者が有給休暇を取得できます。
- 雇用された日から6ヶ月間、継続して勤務している
- 過去6ヶ月間の全労働日のうち、80%以上出勤している
また、有給休暇の取得日は労働者が自由に指定でき、会社はその指定された日に有給休暇を与えなければなりません。
有給休暇の付与日数
付与される有給の最低日数は、継続勤務年数や、週の所定労働日数などによって決まります。
正社員・フルタイム労働者の場合
継続勤務年数 |
||||||
---|---|---|---|---|---|---|
0.5年 |
1.5年 |
2.5年 |
3.5年 |
4.5年 |
5.5年 |
6.5年〜 |
10日 |
11日 |
12日 |
14日 |
16日 |
18日 |
20日 |
週の所定労働日数が4日以下かつ、週の所定労働時間が30時間未満の場合
継続勤務年数 |
||||||||
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0.5年 |
1.5年 |
2.5年 |
3.5年 |
4.5年 |
5.5年 |
6.5年〜 |
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週の 所定 労働 日数 |
4日 |
7日 |
8日 |
9日 |
10日 |
12日 |
13日 |
15日 |
3日 |
5日 |
6日 |
6日 |
8日 |
9日 |
10日 |
11日 |
|
2日 |
3日 |
4日 |
4日 |
5日 |
6日 |
6日 |
7日 |
|
1日 |
1日 |
2日 |
2日 |
2日 |
3日 |
3日 |
3日 |
これらの付与日数は、法律で定められている「法定休暇」の最低日数です。会社によっては、法定休暇に加え、リフレッシュ休暇など独自の特別休暇も設定している場合があります。
有給休暇の取得期限
有給休暇には時効があり、付与日から2年間で消滅します。また、退職日までに使われなかった分も無効になるため、残りの日数を確認して計画的に消化することが重要です。
tips|日本の有給取得率はどれくらい?
大手旅行予約サイトのエクスペディアが実施した調査*1によると、日本の有給取得率は世界11地域中最下位という結果となっています。また、厚生労働省の調査*2では、2023年の国内有給取得率は65.3%、年間の平均取得日数は11.0日となっています。一見低く見えますが、10年前と比べて約17ポイント増加しており、有給を取得しやすくなっていることが伺えます。
※1 参照:Expedia|有給休暇の国際比較調査
※2 参照:厚生労働省|令和6年就労条件総合調査の概況
有給休暇について詳しくはこちらの記事で解説しています。
>有給休暇とは?パートや準社員でも取得できる?付与日数や条件をわかりやすく解説
2.退職前に有給休暇を消化するための3つのステップ
(1)有給休暇の残り日数をチェック
有給休暇の残り日数は、一般的に給与明細や勤怠情報から確認できます。残日数の記載がない場合は人事担当者に確認しましょう。
(2)上司や人事担当者に相談する
上司に退職の意思を伝える際に、有給消化の希望もあわせて伝えましょう。有給をすべて消化したい場合、相談するタイミングは早いほどよく、退職希望日の3ヶ月以上前に伝えることが望ましいです。
なお、民法627条では「退職希望日の2週間前までに申し入れれば、会社の承諾がなくても退職できる」と定められています。しかし、有給を使い切って円満に退職するためには、抜け漏れない引き継ぎが重要なので、余裕を持ったスケジュールで退職日を決めましょう。
退職交渉について詳しくはこちらの記事で解説しています。
>退職交渉のコツと難航した場合の対処法
(3)引き継ぎのスケジュールを立てる
退職日が決定したら、引き継ぎのスケジュールを立てます。担当する業務の量によって異なりますが、引き継ぎにかかる期間は、1ヶ月前後が目安です。後任の決定や資料の作成などにも時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールを立てると安心です。
3.退職前に有給消化が間に合わない理由と対処法
法律上、付与された有給はいつでも自由に使えるとされていますが、使い切れずに消滅するケースも少なくありません。ここでは、よくある理由とそれぞれの対処方法を紹介します。
【理由1】引き継ぎが終わらない
担当業務が多いと、引き継ぎに時間がかかります。また、人手不足などで後任が決まらず、引き継ぎ業務が進まないこともあるでしょう。
【対処法】余裕のある引き継ぎ計画を立てる
有給を確実に消化するために、余裕のある引き継ぎ計画を立てましょう。計画を立てる流れは以下のとおりです。
- 業務の全体像をリストアップする
- 引き継ぐ業務を決める
- 引き継ぐ業務の優先度を決める
- 引き継ぎ方法を決める(OJT、口頭、マニュアルなど)
- 引き継ぎのスケジュールを決める
後任が決まらない場合は、先に資料を用意して、早めに有給を使うのも効果的です。また、退職日までに後任が決まる見込みがない場合は、上司に仕事を引き継ぎます。
【理由2】業務が忙しい
チームのリーダーを任されていた場合や、優先度の高い顧客の対応を引き継いだ場合、有給をまとめて使えないこともあります。
【対処法】細かく有給を取得する
まとまった有給の取得を拒まれる場合は、連休にこだわらず、細切れに有給を取得することで、職場への負担を抑えつつ消化しやすくなります。
また、繁忙期など一時的な忙しさを理由に拒否された場合、退職日を延長して有給を消化できないか交渉するのも手段の一つです。会社はこの交渉に応じる義務はありませんが、有給休暇の取得を拒否する権利もないため、効果的な交渉となるでしょう。
それでも有給消化を拒否されたら?
有給についての相談に応じてもらえなかったり、「アルバイトやパートに有給休暇はない」と言われたりして、有給の取得を拒否される場合、加入している労働組合や、労働基準監督署に相談しましょう。トラブル解決や退職交渉に役立つアドバイスがもらえます。
労働基準監督署の連絡先
電話相談:労働条件相談ほっとライン
メール相談:労働基準関係情報メール窓口
4.退職前の有給消化に関するQ&A
Q.消化できなかった有給は買取ってもらえる?
A.会社には、未使用の有給を買取る義務はありません。会社によって対応が異なるため、詳しくは就業規則を確認してください。
なお、有給の買取りは原則として違法とされています。例外として、時効や退職によって無効になる有給に限り、買取りが認められる場合もあります。
Q.有給消化中に保険証(資格確認書)は使える?
A.保険証は退職日まで使用できます。そのため保険証は、最終出社日には返却せず、退職日以降に郵送で返却しましょう。
また、マイナンバーカードを保険証利用登録している場合は、マイナ保険証が退職日まで使用できます。この場合、従来の保険証は不要になるので、最終出社日に返却しても問題ありません。
Q.有給消化中に就職先で働ける?
A.前職と転職先の就業規則に二重就業の禁止が明記されていない場合、双方の企業からの承諾を得ることで、有給消化中に転職先での勤務が可能になります。
ただし、雇用保険の扱いに注意が必要です。雇用保険は、二重加入が禁止されているため、働き始める前に前職から「雇用保険被保険者資格喪失届」を発行してもらい、転職先で手続きを進める必要があります。
Q.有給消化期間の上限は? 40日分まとめて使える?
A.有給の連続取得に制限はありません。ただし、引き継ぎの遅れや会社との調整不足により、すべてを消化できないケースもあります。なるべく早い段階から計画的に使用して、確実に消化しましょう。
Q.有給消化中に新しい有給は付与される?
A.退職の予定に関わらず、有給は毎年決められた日に付与されます。なお、一度決めた退職日は会社の同意がなければ変更できません。新たに付与される有給も消化したい場合は、退職日を決める前に、それらも計算して会社に相談しましょう。
参考
e-GOV|労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)