宿直、当直、夜勤の違いとは? 混同されがちな用語の意味を解説

医療や介護の職場では、勤務時間を早番、日勤、遅番、日直、宿直、当直、夜勤などと区切り、シフトを組んで働きます。しかし、実際に働いた経験がないとなかなかイメージがつきにくいもの。今回はとくに混同されやすい「宿直」「当直」「夜勤」の意味と違いについて解説します。

宿直、当直、夜勤の違いとは? 混同されがちな用語の意味を解説

目次

1.当直、宿直、夜勤とは?

病院や介護施設など24時間体制で対応する職場では「当直」「宿直」「夜勤」という言葉が用いられます。どれも「夜に働くこと」と思われがちですが、労働形態や業務内容に違いがあります。

【当直】当番制で働くこと

当番を決めて交替制で業務にあたることを当直といいます。職場によっては宿直や夜勤を当直と呼ぶ場合もありますが、本来は働く時間帯を指すものではありません。

当直には日中におこなう日直、夜間におこなう宿直のふたつの勤務形態があり、合わせて「宿日直」と呼ばれます。

【宿直】夜間に職場で待機すること

宿泊をともなう当直を宿直といいます。主に病院や介護施設、警察、消防などの業界で用いられる勤務形態です。通常の業務はおこなわず有事のために待機させたり、見回りや緊急の電話を受けたりなどの特殊業務に従事します。

事業所が断続的な宿日直をおこなうには、労働基準監督署長の許可を得たうえでいくつかの条件をクリアする必要があります。

【夜勤】深夜に働くこと

夜勤とは夜間勤務の略称で、24時間稼働する業種・職種において夜間に労働することを指します。病院や介護施設、工場、コンビニエンスストア、ファミリーレストラン、ホテルなどに多い働き方の一つです。

労働基準法第61条では午後10時〜午前5時までの労働時間が深夜労働と定義されています。

2.宿直と夜勤の違い

とくに混同されがちなのが宿直と夜勤です。深夜に働くという面では似ていますが、勤務内容や条件が異なります。以下は労働基準法などをもとにした宿(日)直と夜勤の違いです。

宿直夜勤
労働時間法定労働時間外法定労働時間内
(週40時間・1日8時間以内)
届出労働基準監督署長の許可が必要なし
業務内容定期巡回や電話対応など軽微なもの通常業務
手当宿日直手当
深夜手当
(+夜勤手当)
睡眠設備睡眠設備の設置が必要なし
上限回数原則として週1回以下なし

労働時間

宿直と夜勤の違いは、週40時間・1日8時間以内という法定労働時間で区別するとわかりやすいかもしれません。夜勤は法定労働時間内の勤務ですが、宿直は法定労働時間外という扱いになります。

宿直は労働基準法における労働時間・休憩・休日の規定が適用されません。つまり、割増賃金や休憩がないということです。これは宿日直業務は心身への負担が少なく、労働時間を規制しなくても健康上の支障がないと考えられるためです。

夜勤は日勤と同じく、労働基準法34条1項で定められた休憩時間を取る必要があります。

労働時間休憩時間
6時間超え8時間以下45分以上
8時間超え1時間以上

日本看護協会は夜勤中の覚醒度と注意力を保つため、長時間勤務の仮眠はもとより、短時間でもできる限り仮眠を取るべきと推奨しています。

届出

宿直をおこなう場合、事業主は管轄する労働基準監督署長へ「断続的な宿直又は日直勤務許可申請書」を提出し、許可を得なければなりません。

申請書には下記の項目を記載します。

  • 事業所の基本情報
  • 宿日直を担う労働者の人数
  • 1回の宿日直員数
  • 勤務の開始・終了時刻
  • 回数(月に1回など)
  • 手当の金額
  • 就寝設備の内容(宿直のみ)
  • 勤務の態様

参考:厚生労働省|医療機関の宿日直申請に関するご相談について

業務内容

前述のとおり、宿直は巡回や緊急電話、外来者の対応など軽微な業務が中心です。夜勤は通常と同じ業務をおこないます。

手当

宿日直手当の金額は同じ事業場で宿日直業務をおこなう人を基準にします。具体的には1人あたりの1日の平均賃金(手当や賞与を除く)の3分の1以上とされています。

厚生労働省は手当の最低額の求め方を下記のように紹介しています。

宿日直手当の最低額 = 宿日直勤務総員数の1ヶ月所定内賃金額合計 ÷ (1ヶ月所定労働日数 × 宿日直勤務総員数 × 3)

参考:厚生労働省|宿日直手当について

以下は1ヶ月に宿直をおこなう勤務者を60人、勤務者に支払われる合計賃金額を806万6,520円、所定労働日数を20日と仮定した計算例です。この場合の最低額は2,241円となります。

(例)宿直勤務手当最低額の計算方法
合計賃金額 8,066,520円 ÷(労働日数 20日 × 総員数 60人 × 3)= 2,240.7(円)

夜勤の場合、深夜手当に加えて夜勤手当が支給されることがあります。

深夜手当とは、深夜労働に対する割増賃金のことです。労働基準法第37条では深夜22時〜翌朝5時に労働をした場合、通常の賃金に対して割増率25%以上が義務付けられています。

(例)時給1,000円の深夜手当の計算方法

時給 1,000円 × 1.25=1,250円

夜勤手当は事業者が任意に設定する手当です。支給義務や支給金額に法的規定はありません。職場によっては、夜勤手当に相当する金額が時給や基本給に含まれていることもあります。

睡眠設備

宿直をさせるには仮眠室やベッドなど、睡眠設備を設置する必要があります。会議室のソファなどは認められません。

上限回数

宿直は原則として週1回、日直は月1回が限度です。例外として、人員不足+宿日直につくことができる職員が全員宿日直をし、なおかつ一定時間内の業務量が少ない場合には同じ人が宿直は週2回以上、日直は月2回以上勤務することができます(ただし18歳以上に限る)。

夜勤には労働基準法上の回数制限はありません。ただし、1週間あたりの労働時間が法定労働時間(40時間)を超えない範囲内で調整する必要があります。

3.医療・介護職の宿直業務の例

宿直は「通常の業務をおこなわない待機要員」と紹介しましたが、例外として軽度、または短時間の業務が許可される場合もあります。ここでは病院と社会福祉施設を例に挙げます。

病院の医師

  • 注意が必要な少数の患者への問診や診察、軽度の措置
  • 看護師への指示や確認
  • 急な外来患者数名への問診や診察、看護師への指示や確認 など

病院の看護師

  • 急な外来患者への問診や医師への報告
  • 病室の定時巡回や、患者の状態変化を医師に伝えること
  • 注意が必要な少数の患者への定時検脈や検温 など

社会福祉施設

  • 一般の宿直業務に加え、少数の入所児・者に対する夜のトイレ起こし
  • オムツの交換や軽い介助
  • 検温 など
※基本的に1勤務中に1〜2回、1回あたり10分程度の業務に限る。要介護者を抱きかかえるなど、身体に負担がかかる業務は含まれない。

4.確認しておきたい夜勤の仮眠時間の扱い

夜勤をする場合に気をつけたいポイントは、仮眠時間(休憩時間)の賃金の扱いです。勤務から完全に離れて仮眠を取れるなら賃金は発生しません。ただし、頻繁な緊急対応や電話対応が必要であれば待機時間、すなわち労働時間とみなされる可能性があります。

労働にあたるかどうかの判断基準は使用者の指揮命令下かどうかです。労働から解放されず命令に従う必要があるのなら、仮眠時間も労働時間とみなされ残業代を請求できることもあります。

介護や看護の仕事には日勤のみという働き方もありますが、夜勤混合シフトの職場も少なくありません。そうした事業所に応募する際、面接では細かい就業状況まではなかなか聞きにくいものですが、生活や報酬への影響が大きいので確認しておきたいポイントです。

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参考

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