1.小1の壁とは
小学校入学を機に仕事と育児の両立が難しくなること
親の就業をサポートしてくれる保育所や幼稚園では、子どもを長時間預けることができました。しかし子どもが小学校に入学すると、放課後の時間をどう過ごすかは各家庭で考えなければなりません。希望通りの時間で預かってくれる施設が見つからないほか、施設利用にかかる費用が負担に感じられることもあります。
とくに共働きやひとり親世帯にとっては仕事と育児の両立が難しくなり、働き方の変更を余儀なくされることもあります。
仕事と育児の両立が難しくなる理由
一つに放課後児童クラブが利用できないことが挙げられます。児童クラブや学童クラブ、学童保育とも呼ばれ、親が就業等により家にいない子どもを預かってくれる施設です。放課後児童クラブ数、登録児童数は年々増加傾向にあり、2021年の登録児童数は2000年と比較すると約3倍になっています。
放課後児童クラブ数が増え待機児童数は減少傾向にあるものの、いまだ13,416人(2021年時点)と多く、2002年と比較すると約2.3倍となっています。低学年の子どもが優先的に利用できる傾向にはありますが、小1の待機児童がいるのも事実です。
小1の壁、具体的な困りごとは?
仕事と育児の両立を困難にしていることを、医療・福祉に従事している保護者に質問したところ、以下の回答が寄せられました。
就業時間の調整と弁当作りが負担
長期休みには放課後児童クラブを朝8時から利用していたため、送り出しのために仕事の調整が必要でした。また、休み期間中は弁当持参だったので保育所のときと違い負担が増えました。
(訪問看護ステーション/常勤看護師/38歳女性)
宿題や準備の手伝いが負担
仕事の時間帯と放課後児童クラブの時間帯が合いませんでした。また、宿題をみたり準備を手伝ったりすることが多く負担になりました。
(特別養護老人ホーム/非常勤看護師/42歳女性)
役員仕事が多い
学校役員になり何度も学校へ出向く必要がありました。
(介護事業所/常勤事務/44歳女性)
上記以外にも、次のような困りごともあります。
預け先が希望条件に合わない
希望通りの放課後児童クラブに入れない、金額が高いなどの条件面で不都合が生じる場合もあります。
職場からの理解が得られない
子どもが小学校にあがった途端、残業や業務が増えるケースや、時短勤務が終わりフルタイムに戻らざるをえないケースもあります。
2.「小1の壁、どう乗り越えた?」保育・医療・福祉従事者に聞きました
保育・医療・福祉に従事する保護者に、実際におこなった「小1の壁対策」を聞いたところ、次のような回答が寄せられました。
登下校の練習をする
入学前に、学校•学童の通学路を一緒に何度も歩き確認する、ひらがな、カタカナは読み書きできるようにしておく、数字も100まで読めるようにしておくことはおすすめです。
(保育園/非常勤保育士/35歳女性)
送り迎えに行けた保育所や幼稚園とは違い、子ども一人で登下校する必要があります。道順を覚えられるか、狭い、暗い、人気がないといった危険な場所はないかチェックしましょう。もしあれば、一緒に登下校してくれる友達がいると安心です。
学校の用事があれば上司に相談!
役員の仕事が多く学校へ何度も行く必要があったため、上司に何度も相談して掛け合いました。
(介護事業所/常勤事務/44歳女性)
放課後児童クラブの閉所時間に間に合わない人や、学校行事、当番への参加がわかっている人は、勤務先に就業時間について話しておきましょう。
家族や友人に頼る
家庭の事情やキャリアを諦めたくない場合、入れるようであれば放課後児童クラブを利用し、頼れる人(身内、友達等)もいると心強いかと思います。
(訪問看護事業所/非常勤准看護師/39歳女性)
夫婦ともに外せない用事があるときや親が体調を崩すときに備えて、事前に相談しておくと良いでしょう。
親族・知人以外にも、以下のようなサービスもあります。
・ファミリーサポート:乳幼児や小学生の親が病気のときや、急用、冠婚葬祭時などに自宅やサポーター宅で子どもをみてもらえます。利用料金は自治体ごとに異なりますが、500〜800円前後です。
・シッター・送迎サービス:シッターサービスは希望時間に応じて子どもをみてくれます。シッターを募集できる所や、事前に面接ができる所もあります。また、学校へのお迎えから習い事への送迎に利用できる子育てタクシー、送迎つきの民間放課後児童クラブもあります。
・家事代行:掃除洗濯以外にも子どもの送迎や室内外遊び、食事の支度などにも利用できます。
・会社の福利厚生:保養所や長期休暇制度があれば、放課後児童クラブ以外で過ごす機会や家族の思い出作りができます。また、福利厚生の一環としてシッターサービスや家事代行の割引が利用できる会社もあるようです。
転職する
これから働き方を変更する予定です。現在の職場は時短勤務が不可のためもう少し早く転職すべきでした。
(特別養護老人ホーム/非常勤看護師/42歳女性)
今より育児と仕事のバランスをとりやすい職場に行きたい場合や、もっとやりたいことがある場合には転職するという方法もあります。
ジョブメドレーでは希望条件を絞って検索できます。
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3.小1の壁対策リスト
事前に確認しておくことで早めに準備できることはあります。以下のチェックリストを見て、希望に合う預け先や相談先、利用できそうなサービスなどを検討してみましょう。
小学校
□親の活動頻度
□登校班の有無
放課後児童クラブ(公立・民間)
□場所
□開閉所時間
□待機児童数
□土日祝日は開いているか
□長期休暇の運営時間
□お弁当の有無
□通所方法
□送迎の有無
□学級閉鎖時に利用できるか
4.周囲への信頼と雇用側の理解が必要
小1の壁は仕事と育児の両立に悩む親だけでなく、環境変化に対応する子どもにもストレスがかかっています。家族だけで抱え込まず周囲に頼れる知人をもつことや利用できるサービスを使うなど、困ったときに頼れる場所や手段を確保することと、人間関係の構築が大切です。
小1の壁対策として国は「新・放課後子ども総合プラン」を策定し、施設の整備や拡充を目指していますが、いまだ待機児童など課題は残ります。今後、小1の壁を解消するために施設の拡充とともに、雇用側が制度を見直すことや、小学生の子をもつ従業員の悩みに理解を促すことも不可欠です。
参考
- 厚生労働省|令和2年(2020年)放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況
- 文部科学省|令和3年度学校基本調査(確定値)の公表について
- 厚生労働省|放課後児童クラブ関連資料