目次
1.三次救急とは
生命に関わる重症患者を24時間受け入れる
三次救急とは、一次救急や二次救急では対応が難しい生命に関わる重症患者に対応する救急医療(体制)です。救急医療の最後のとりでとして、重症患者、複数の診療科にわたる症状がある重篤(じゅうとく)な患者を、原則24時間体制で必ず受け入れることになっています。
重篤な患者に対応できる高い専門性と十分な人員を確保する必要があり、医学生や看護学生などへの救急医療の臨床教育を担う役割もあります。
救命救急センターとの違いと設置要件
三次救急は救命救急センターや、地域救命救急センターにおいて提供されます。そのため三次救急=救命救急センターと捉えてよいでしょう。2022年7月現在、地域救命救急センターを含む救命救急センターの数は全国で300施設となっており、およそ人口42万人に対して1ヶ所整備されていることになります。
救命救急センターの設置にあたっては、施設、設備、人員体制に関する要件が定められています。
救命救急センターへのアクセスにおおむね1時間以上かかるエリアの場合は、同様の医療提供を担う機関として、救命救急センターより少ない病床数で地域救命救急センターの設置が認められます。
救命救急センターの指定要件の例(要旨)
- 責任者が直接管理する20床以上の専用病床や、集中治療室(ICU)があること
- 併設病院を含む施設が耐震構造であること
- 緊急手術ができるよう、必要人員の動員体制を確立しておくこと
など
参考:厚生労働省「救命救急センター及び二次救急医療機関の現状」
高度救命救急センターとは
高度救命救急センターとは、救命救急センターのうち広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒などの特殊疾病患者に対する高度な診療機能を持つ医療機関のことです。常に高度な救命救急医療を提供できる体制が必要であり、麻酔科の医師など手術に必要な人員を確保(待機)しなければなりません。
2022年7月現在、高度救命救急センターは全国に46ヶ所あり、うち26ヶ所はドクターヘリ導入病院となっています。
2.一次救急、二次救急との違い
救急医療は一次(初期)、二次、三次と重症度・緊急性に応じて段階的に対応する体制が確立されています。

一次(初期)救急は帰宅可能な患者に対応
入院や手術の必要がなく、自力で受診できる比較的軽症な患者に対応します。休日・夜間など病院の営業時間外にあたるタイミングで、重症ではないものの受診を先送りできない場合のニーズに応じます。
病院までは主に自家用車や公共交通機関、タクシーなどで向かいます。
二次救急は入院や手術が必要な患者に対応
入院や手術が必要な患者を24時間体制で受け入れます。初期救急から搬送されてくる患者に対応する日が決められている病院(病院群輪番制)や、都道府県知事が認定した救急告示医療機関(救急指定病院)などが二次救急にあたります。
救急告示医療機関(救急指定病院)の役割
救急告示医療機関(救急指定病院)は、一般の急性期病院で対応可能な軽症患者より程度が重い救急患者に対応します。さらに高度な治療が必要な場合には、三次救急病院へ搬送することになります。
なお、救急告示医療機関(救急指定病院)として認められるには、以下の条件を満たす必要があります。
<救急告示医療機関(救急指定病院)の条件>
- 救急医療について相当の知識及び経験を有する医師が常時診療に従事していること。
- エックス線装置、心電計、輸血及び輸液のための設備その他救急医療を行うために必要な施設及び設備を有すること。
- 救急隊による傷病者の搬送に容易な場所に所在し、かつ、傷病者の搬入に適した構造設備を有すること。
- 救急医療を要する傷病者のための専用病床又は当該傷病者のために優先的に使用される病床を有すること。
3.三次救急医療機関一覧
いざというときのために、お住まいや勤め先の地域の医療機関をチェックしておきましょう。
tips|救急車の適正利用を!
昨今は救命救急センターが新型コロナウイルス感染症の対応を担うこともあり、救急活動は非常に過酷な状況が続いています。2021年における東京都の救急出場件数は74万3,703件、実に42秒に1回という頻度にのぼります。
しかしそのうち半数以上の51.4%は、医師の診察により軽症と判断されています。自身で緊急度が高くないと判断できる場合は、一刻を争う重症者の搬送をさまたげないためにも、不必要な救急車の要請は控えましょう。
救急車を呼ぶべきか迷う場合は#7119、休日や夜間に子どもの急病で対応がわからないときは#8000に電話をすると、医師や看護師のアドバイスを受けることができます。
全国の三次救急医療機関一覧
厚生労働省がまとめている救命救急センター一覧は下記のとおりです。
なお、救命救急センターの指定は、今後変更される可能性があります。最新情報は必ずご自身でご確認ください。また、普段から健康の相談ができるかかりつけ医を探しておくことも大切です。
救急医療のとりでとなる三次救急。医療職にとって過酷であり、高い専門性が求められる職場でもあります。
本記事が救急医療体制の全体像を知る一助になれば幸いです。