高度な先進医療を提供するための特定機能病院
特定機能病院は、1992年(平成4年)の医療法改正で定められました。一般的な病院(地域医療など)の診療と、高度な医療提供の役割分担をするために設けられた病院です。特定機能病院は、国(厚生労働大臣)の承認を受けなければなりません。2021年(令和3年)11月1日時点で、全国に87の特定機能病院があります。
特定機能病院の特徴としては、まず「高度な医療の提供」「高度な医療に関する研修」が挙げられます。さらに、「高度な医療技術の開発・評価」が可能なことなども求められます。一般的な病院では提供が難しい、先進医療や指定難病の診断、診療技術をもつ病院ということです。
特定機能病院に必要とされる要件とは
特定機能病院が国から承認を得るために必要な要件を、詳しく見てみましょう。必要な診療科数は16以上と決められています。集中治療室や無菌室などの高度治療のための設備をもち、臨床検査、病理診断が行える体制があることも必須条件です。また、400人以上の患者さんが入院できるベッド数があることも条件のひとつ。幅広く総合的な診療能力を備えていることが、求められているのです。
さらには人員配置が一般病院よりも高い基準を課せられているのも、特定機能病院の特徴でしょう。一般病院と比較すると、医師や薬剤師は2倍程度。看護師は外来診療では同等ですが、入院患者に対しては基準の差があります。一般病院が患者数の3分の1という基準に対して、特定機能病院は2分の1という厳しさなのです。
一般病院と特定機能病院の分担と連携
冒頭で特定機能病院が設置された理由の一つとして、一般病院との役割分担を挙げましたが、これは具体的にはどういうことなのでしょうか。
一般病院とは、かかりつけ医や救急医療などを指します。胃腸炎や風邪、軽度の外傷など一般的な診療を担当します。ところが病気やケガなどでは、こうした一般病院の能力を上回るものも少なくありません。そうした高度な診療が必要な場合は、一般病院から特定機能病院に移行します。必要に応じて、一般病院が特定機能病院に紹介するのです。なかには、最初から特定機能病院にかかる場合もありますが、ほとんどが紹介になります。
特定機能病院が「紹介制」をとるのには、わけがあります。多くの人が病院を訪れる理由としては、一般病院で済むものがほとんど。そうした、ある意味「軽度」の患者さんまでもが、特定機能病院に来院するとどうなるのでしょうか。より高度な治療を必要とする患者さんを、診られなくなるということも起こります。そうした事態にならないよう、「紹介制」という体制で患者さんを振り分けるのです。
なお、一般病院から特定機能病院へという流れと反対の場合もあります。特定機能病院で容体が安定した患者さんは、特定機能病院から一般病院に移されるのです。
職場としての特定機能病院とは?そして適性は?
一般病院と特定機能病院の役割分担(機能分化)がはっきりすると、医療技術全体の進歩が見込めるといわれます。高度な医療を継続的に提供することで、現場は鍛えられ、技術水準が上がるのです。これは、特定機能病院を設けた目的の一つともいわれます。では、働く人にとって特定機能病院は、どのような環境なのでしょうか。
まず挙げられるのは、高度医療に接することができる、学びの多い職場環境ということです。さまざまな専門分野の人と関わりながら仕事ができます。医療についてより知識を深めたり、技術を習得したりしたい人にはうってつけの職場。大学病院など大きな組織で、福利厚生が整っている病院が多いのも特徴です。
また、前述した通り、特定機能病院は一般病院よりも、人員配置が厚くなっています。そのために医師や看護師も、患者さんとより密接な関係になる傾向に。ですから、患者さんとのふれあいを大切にしたい人にも向いているといえますね。
その一方で、生死に関わる病気やケガに日常的に接する、緊張感のある職場であることは間違いありません。就職の面では、一般病院に比べて極端に数が少なく求人数が限られることから、求職者にとっては狭き門ともいえるでしょう。
それでも医療の最前線に立てるという点では、挑戦しがいのある職場です。高い志をもつ方やチャレンジ精神旺盛な方は、就職先として特定機能病院を視野に入れてもよいかもしれませんね。