目次
この記事をまとめると
- 認定介護福祉士は、介護福祉士の指導者育成を目的とした民間資格
- 資格取得の条件は、5年の実務経験・600時間〜800時間の講習受講など
- 研修では、マネジメントスキルのほか医療従事者やリハ職の専門知識を学ぶ
1.認定介護福祉士とはどんな資格?
認定介護福祉士とは、2015年12月に始まった介護福祉士の上位に位置づけられる民間資格です。高齢化や介護人材不足を背景に、介護福祉士をけん引する指導者の育成を目指し、認定介護福祉士認証・認定機構によって創設されました。
認定介護福祉士の役割
認定介護福祉士に求められる主な役割は、介護現場でリーダーとして活躍する介護福祉士の管理・教育・指導をおこなうことです。さらに、以下の取り組みを通じて、より質の高いサービスの提供を目指します。
- 介護職に対する教育・指導・介護サービスマネジメント
- 医療職やリハビリ職など多職種との連携・協働の推進
- 家族介護者への支援や地域のボランティアなどへの教育・助言
2.認定介護福祉士になるには
認定介護福祉士になるには、受講要件を満たしたうえで、認定介護福祉士養成研修を受講し、全科目(22科目)を修了する必要があります。研修修了後に認定介護福祉士認証・認定機構へ認定申請をすることで、認定介護福祉士として認定されます。

なお、認定介護福祉士には認定期間があり、研修の実施初日から5年ごとに、更新の手続きが必要です。
受講要件
認定介護福祉士養成研修の受講するには、以下5つの条件を満たす必要があります。
- 介護福祉士の資格を有している
- 介護福祉士資格取得後の実務経験が5年以上ある
- 介護福祉士ファーストステップ研修・認知症介護指導者養成研修・ぐんま認定介護福祉士養成研修を100時間以上受講している
- 研修実施団体のレポート課題や受講試験で一定の水準の成績を修めている(免除の場合あり)
また、養成研修は、認定介護福祉士認証・認定機構だけでなく、各都道府県の介護福祉士会などでも実施されています。そのため、地域や実施団体によっては、以下の要件が求められることもあります。詳しい受講要件については、受講する実施団体の開催要綱をご確認ください。
- 介護福祉士基本研修・ファーストステップ研修のいずれかを修了している
- 介護職の小チームのリーダーやサービス提供責任者としての実務経験がある
- 訪問・施設系サービスの両方での生活支援の経験がある
受講や登録にかかる費用
認定介護福祉士の認定までにかかる費用は30万〜60万円程度です。
具体的な費用は実施団体によって異なり、講習1科目あたり1万〜5万円程度です。介護福祉士会の会員であれば、会員価格として半額程度で受講できる場合があります。
また、登録時と更新時には、事務手数料としてそれぞれ3万円がかかります。
3.認定介護福祉士の研修内容
認定介護福祉士養成研修はⅠ類とⅡ類から構成され、合計600時間で実施されます。全研修課程を修了するまでにかかる期間は1年〜1年半程度です。
また、実施団体や受講科目によっては、事前に「介護福祉士ファーストステップ研修(全232時間)」の修了が求められる場合があります。この場合、認定までに800時間以上かかることになります。
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類
Ⅰ類では、医療、リハビリテーション、福祉用具、認知症、心理・社会的支援といった多岐にわたる専門職の視点から、生活支援において必要となる知識を幅広く習得します。地域包括ケアシステムで連携するさまざまな専門職の知識を学ぶことで、より円滑な多職種連携が期待できます。
領域名 |
科目名 |
時間 |
---|---|---|
認定介護福祉士養成研修導入 |
認定介護福祉士概論 |
15 |
医療に関する領域 |
疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅰ |
30 |
疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅱ |
30 |
|
リハビリテーションに関する領域 |
生活支援のための運動学 |
10 |
生活支援のためのリハビリテーションの知識 |
20 |
|
自立に向けた生活をするための支援の実践 |
30 |
|
福祉用具と住環境に関する領域 |
福祉用具と住環境 |
30 |
認知症に関する領域 |
認知症のある人への生活支援・連携 |
30 |
心理・社会的支援の領域 |
心理的支援の知識技術 |
30 |
地域生活の継続と家族支援 |
30 |
|
生活支援・介護過程に関する領域 |
認定介護福祉士としての介護実践の視点 |
30 |
個別介護計画作成と記録の演習 |
30 |
|
自職場事例を用いた演習 |
30 |
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類
Ⅱ類では、Ⅰ類で習得した知識の応用方法や、根拠に基づいた介護を実践・指導できる能力を身につけます。
領域名 |
科目名 |
時間 |
---|---|---|
医療に関する領域 |
疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅲ |
30 |
心理・社会的支援の領域 |
地域に対するプログラムの企画 |
30 |
マネジメントに関する領域 |
介護サービスの特性と求められるリーダーシップ、人的資源の管理 |
15 |
チームマネジメント |
30 |
|
介護業務の標準化と質の管理 |
30 |
|
法令理解と組織運営 |
15 |
|
介護分野の人材育成と学習支援 |
15 |
|
自立に向けた介護実践の指導領域 |
応用的生活支援の展開と指導 |
60 |
地域における介護実践の展開 |
30 |
4.認定介護福祉士の養成研修を受講するメリット
包括的な介護スキルが習得できる
認定介護福祉士の研修では、介護福祉士養成課程では学ばない、医療や心理・リハビリなど、ほかの専門職の知識を得られます。
介護に関する包括的なスキルを習得することで支援の幅が広がり、多職種との連携もより円滑になります。その結果、より質の高い介護サービスの提供につながります。
マネジメントや地域介護に関する知識やスキルを学べる
認定介護福祉士の研修では、介護技術のほかに、人材マネジメントや、介護チームのリーダーに対する指導のノウハウ、地域介護に関する専門的な知識やスキルを習得できます。
全国の意欲的な介護福祉士とつながれる
認定介護福祉士の研修には、全国の介護現場でリーダーを務める介護福祉士が参加します。600時間に及ぶ研修やグループワークを通じて、実務に活かせる知見を共有したり、横のつながりを築いたりすることができます。
5.認定介護福祉士の将来性
認定介護福祉士は、資格取得のハードルが高く、創立から5年が経った2022年時点では登録者数は103名にとどまりました。
しかし、その専門性とリーダーシップの高さから年々注目度が高まり、2024年12月時点では、2倍以上の218名にまで増加しています。今後は介護福祉士のキャリアパスの一つとして、いっそうの注目が見込まれます。
tips|認定介護福祉士が「意味ない」といわれる理由とは?
認定介護福祉士は取得に費用や時間がかかるうえ、特別手当の対象としている事業所は一部に限られるため、「取得しても意味がない」といわれることがあります。
しかし、研修で身につけたマネジメントや人材育成に関する知識を現場で実践することで、指導者としての実績を積み上げられます。これらの経験は、転職や人事評価で有利に働くことがあります。
6.認定介護福祉士に関するQ&A
Q.認定介護福祉士の合格率は?
A.認定介護福祉士は研修を修了することで取得できる資格であるため、合否を決める試験は実施されません。ただし、研修のなかでの試験やレポートの提出が求められる場合があります。
Q.認定介護福祉士を対象にした加算制度はある?
A.認定介護福祉士は加算制度の対象ではありません。ただし、職場によっては介護チームリーダーの教育やマネジメントをおこなう役職に特別手当がつく場合があります。
Q.認定介護福祉士と介護福祉士の違いとは?
A.認定介護福祉士と介護福祉士の主な違いは以下のとおりです。
認定介護福祉士 |
介護福祉士 |
|
---|---|---|
資格の種類 |
民間資格 |
国家資格 |
実務経験 |
5年以上 |
3年以上 |
役割 |
介護職リーダーの指導者 |
介護職のリーダー |
取得方法 |
600時間の講習を修了 |
試験に合格 |