認知症ケア専門士になるには?受験資格や合格率、勉強方法を解説

高齢化が進むにつれて、認知症の患者数も増加を続けています。医療・介護・福祉分野で勤務するなかで、認知症の人へのケアについて、専門的な知識を得たいと感じる人も多いのではないでしょうか。この記事では、認知症ケア専門士について、受験資格や合格率、勉強方法などを解説します。

認知症ケア専門士になるには?受験資格や合格率、勉強方法を解説

目次

1. 認知症ケア専門士とは?

認知症ケアに関する民間資格

認知症ケア専門士は、認知症の人へのケアについて、専門的な知識があることを証明する民間資格です。実務で認知症ケアに取り組む人を対象とした資格で、一般社団法人日本認知症ケア学会が認定しています。

認知症ケアに対する優れた知識と高度な技能、倫理観を備えた専門家を養成することを目的としており、介護分野で勤務する人だけでなく、医療分野で認知症ケアに携わる人も、受験できる点が特徴です。実際に、介護福祉士介護支援専門員だけでなく、看護師作業療法士理学療法士なども認知症ケア専門士を取得しています。認知症ケア専門士が取得しているほかの資格は、以下のとおりです。

認知症ケア専門士が持つ他資格は介護福祉士が最多
日本認知症ケア学会|認知症ケア専門士情報より作成(2022年12月現在、重複含む)

認知症ケア専門士が働く職場

認知症ケア専門士が勤務する職場は、介護施設だけではありません。日本認知症ケア学会の区分による、受験希望者の所属事業所種別のデータでは、医療機関が21%で最も多くグループホーム(16%)やデイサービス(14%)などが続きます。

受験希望者の21%が医療機関に所属
日本認知症ケア学会|専門士制度より作成

認知症ケア専門士認定試験の合格率・合格者数

過去5年間の認知症ケア専門士認定試験の合格率は51〜56%で推移しています。また、合格者数は年によって幅があり、過去5年間では約1,400〜2,600人となっています。

認知症ケア専門士の合格率は50%台で推移
日本認知症ケア学会|認知症ケア専門士情報より作成

2. 認知症ケア専門士になるには

認定試験の受験資格と受験の流れ

認定試験は毎年1回おこなわれ、3年以上の実務経験のある人が受験できます。また、申し込みには、願書となる『受験の手引』の購入が必要です。受験資格や受験の流れの詳細は以下のとおりです。

受験資格

試験実施年の3月31日から過去10年間において、3年以上の認知症ケアの実務経験があること

注意事項

  1. 受験者が認知症ケアをおこなっている施設や団体は、認知症専門でなくてもよい。認知症ケアに携わっていれば、職種や職務内容にも制限はない
  2. 介護福祉士や介護支援専門員などの資格の有無にかかわらず、受験が可能
  3. 介護福祉士や介護支援専門員などの有資格者の場合でも、認知症ケア実務経験証明書の提出が必要
  4. ボランティア活動や実習などは、認知症ケアの実務経験に含まない
  5. 再受験の場合は、過去の試験の結果通知で合否と合格有効期限(各分野の合格の有効期間は5年間)を確認したうえで、必要な分野の受験申請をする

受験の流れ

  1. 受験の手引(1,000円)を購入し、必要書類をそろえて申請する
  2. 第1次試験(ウェブ試験)
  3. 第2次試験(論述試験)
  4. 登録申請・倫理研修
  5. 資格取得

第1次試験の詳細

第1次試験はウェブ試験で、4分野ごとに五肢択一形式で実施します。各分野の試験時間は1時間で、それぞれ50問が出題されます。4分野のすべてに合格すれば、第2次試験に進めますが、第1次試験全体で不合格の場合でも、合格した分野があれば5年間有効です。

試験分野

  1. 認知症ケアの基礎
  2. 認知症ケアの実際Ⅰ:総論
  3. 認知症ケアの実際Ⅱ:各論
  4. 認知症ケアにおける社会資源

受験料

合計1万2,000円(1分野3,000円)

※2026年度からは合計1万6,000円(1分野4,000円)

合格基準

4分野のすべてで70%以上正答すること

※各分野の合格有効期間は5年間

第2次試験の詳細

第2次試験は論述試験です。第1次試験に合格すると問題が郵送されてくるので、回答を期間内に提出します。なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、第2次試験は非対面での実施となってきましたが、2026年度より全国4会場で受験する形式に変更される予定です。

試験内容

認知症ケアの事例3題に対する論述

※2026年度からは倫理と実践の計2題

受験料

8,000円

※2026年度からは9,000円

合格基準

  1. 適切なアセスメントの視点を有している者
  2. 認知症を理解している者
  3. 適切な介護計画を立てられる者
  4. 制度および社会資源を理解している者
  5. 認知症の人の倫理的課題を理解している者

第2次試験に合格したあと、倫理研修を受講すると、認知症ケア専門士の資格を取得できます。

5年ごとの更新制

認知症ケア専門士は、5年ごとに更新が必要な資格です。更新制となっているのは、質の高い認知症ケアを提供し続けるために、最新の知識や技術の継続的な学習が大切だからです。更新するためには、学術集会や生涯学習プログラムへの参加、機関誌などへの論文発表で、5年間に30単位を取得する必要があります。また、更新の際には、更新料1万円がかかります。

3. 認知症ケア専門士の勉強方法

公式テキストで学習する

認定試験合格を目指して勉強を始める際、まずは公式テキスト『認知症ケア標準テキスト』で学習することが重要です。テキストは全5巻で、第1巻〜第4巻は第1次試験の出題範囲です。また第5巻には、認知症ケアの事例がまとめられており、第2次試験の参考書籍になります。なお、テキストは公式サイトから注文できるほか、アマゾンなどでも購入可能です。

問題集で試験対策をする

認定試験の過去問は公開されていないため、市販の問題集で試験対策を進めましょう。問題集はさまざまな出版社から出ているので、解説がわかりやすいかどうか、最新の内容に改定されているかなどを基準に、自分に合ったものを選んでください。また、数は多くないものの、試験対策のためのアプリもリリースされています。

対策講座を受ける

日本認知症ケア学会では毎年、試験のおよそ1ヶ月前から認定試験対策講座を実施しています。eラーニングで受講でき、公式テキストの第1巻〜第4巻をもとに、重要ポイントに的を絞った内容となっているので、効率的に勉強できるでしょう。さらに、本番の試験と同様の形式で模擬試験をおこなったうえで、講師が解説してくれます。

4. 認知症ケア専門士を取得するメリット

スキルアップできる

認知症ケア専門士を取得すると、認知症ケアについて体系的な知識が身につきます。そのため、資格取得のために学んだ、認知症の人の行動・心理症状(BPSD)やアセスメントの知識、ケア技術を日々の業務に活かすことが可能になります。

さらに、日本認知症ケア学会は学術集会や生涯学習プログラムを実施しており、最新の知識を学び続けられます。経験だけに頼るのではなく、知識に基づいた認知症ケアをできるようになれば、医療・介護・福祉分野でのスキルアップにつながるでしょう。

女性のイラスト

私もケア専門士とっていました。病棟内で勉強会ひらいたりたくさん勉強したので仕事でも役にたちました。そのうち、もっと高度な知識がほしい、それを病院に広めたい、何より認知症のある患者の看護を専門知識をもって看護したいと思い認知症看護認定看護師をとりました。(引用:カンゴトーク

給与アップにつながる

認知症ケア専門士は民間資格ですが、医療・介護・福祉分野での認知度が高く、資格手当の対象としてる事業所もあります。資格手当の有無や条件は、就業規則に記載されていることが一般的です。また、求人の募集要項に記載されていることもあるため、就職・転職の際には条件を確認すると良いでしょう。

なお、医療・介護・福祉分野の施設では、認知症の人へのケアを実施した際に「認知症専門ケア加算」や「認知症ケア加算」などが認められる場合がありますが、加算には公的な研修を修了した職員の配置が算定要件となっているため、民間資格の認知症ケア専門士は該当しません

転職活動に役立つ

認知症ケア専門士を取得していることで、就職・転職活動をスムーズに進められる可能性もあります。認知症ケア専門士は民間資格なので、もちろん取得の義務はありません。そのため認知症ケア専門士の資格を持っていれば、入職を希望する事業所から、意欲的な候補者だと評価されるでしょう。また、認知症ケアについて一定の知識があると客観的に示すことも可能です。

5. 認知症ケア関連の資格・研修

認知症の人へのケアに関しては、認知症ケア専門士のほかにも、さまざまな資格・研修があります。ここでは、5つの資格・研修を紹介します。

認知症ケア関連の資格・研修について詳しくはこちらの記事でも解説しています。
認知症ケアに役立つ研修や資格って? 実務経験あり・なし別に解説!

認知症ケア准専門士

認知症ケア准専門士は認知症ケア専門士と同様に、日本認知症ケア学会が認定している民間資格です。認知症ケア専門士よりも基礎的な内容で、まだ認知症ケアの実務経験がない学生や、認知症の人のご家族なども受験できます。なお、認知症ケア専門士と違い、2次試験はありません。

認知症ケア上級専門士

認知症ケア上級専門士も、日本認知症ケア学会が認定している民間資格です。認知症ケア専門士よりも難度の高い内容で、ケアチームのリーダーや地域のアドバイザーの育成を目的としています。認知症ケア専門士としての経験が3年以上ある人が受験できます。さらに、受験資格には、認知症ケア上級専門士研修会の修了や認知症ケア専門士としての30単位以上の取得などの要件があり、ハードルが高くなっています。

認知症介助士

認知症介助士は、公益財団法人日本ケアフィット共育機構による民間資格です。認知症の人に寄り添ったコミュニケーションや接遇、環境づくりの習得を目的としています。医療・介護・福祉分野で働く人だけでなく、小売店や公共施設、金融機関などさまざまな職場で勤務する人の資格取得を想定しています。そのため、検定試験の内容を基礎から学べるセミナーも用意されており、認知症の人と接する機会の少ない人にもおすすめです。

認知症介護基礎研修

認知症介護基礎研修は、認知症ケアに必要な基礎知識や技術の習得を目的とした公的研修です。認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)に基づき、2016年度から開始されました。認知症介護に関する公的研修はいくつかありますが、認知症介護基礎研修はその入門として位置づけられており、一日で修了できる点が特徴です。

また2024年4月から、無資格で認知症ケアに携わる介護職員に、認知症介護基礎研修の受講が義務付けられました。そのため現在では、無資格で認知症介護基礎研修を受講していない場合は、ほとんどの施設で働くことができなくなっています

認知症介護基礎研修について詳しくはこちらの記事で解説しています。
認知症介護基礎研修が2024年に義務化! 対象者と免除の条件、初任者研修との違いも解説

認知症介護実践研修

認知症介護実践研修は、認知症介護基礎研修の上位にある公的研修で、実践者研修とリーダー研修の2種類の研修があります。事業所などで介護・看護の経験がある人を対象とし、認知症の人が能力に応じて自立した生活を送れるよう、支援するスキルを身につけます。また、研修修了後は、職場の中心的存在としてチームケアの実現に向けて、ほかの職員をリードできるようになることを目指します。

6. 資格取得をキャリアアップにつなげよう

認知症ケアに関する体系的な知識が身につき、日々の業務にも役立つ認知症ケア専門士。資格手当の対象としている事業所もあるため、給与アップにつながる可能性もあります。さらに、資格取得を支援している事業所もあるので、認知症ケアについて関心がある医療・介護・福祉分野の人は、資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。

ジョブメドレーでは、認知症ケア専門士を資格手当の対象としている事業所の求人をはじめ、医療・介護・福祉分野の求人を幅広く扱っています。希望の勤務地や給与、特徴などを選択して、あなたの希望にあった仕事を探してみてください。

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参考

一般社団法人日本認知症ケア学会|認知症ケア専門士

#認知症ケア専門士 #介護職 #ヘルパー #ケアマネジャー #看護師

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