
胚培養士(はいばいようし)とは
「胚培養士(はいばいようし)」とは、胚(受精卵)を扱う専門職です。主に不妊治療に携わっており、体外で精子と卵子を受精させて母体に戻すまでの過程において、胚凍結や胚融解、培養などを行うのが仕事内容です。そのため、産婦人科領域の高度な知識が必要とされています。
胚培養士は国家資格ではありませんが、日本臨床エンブリオロジスト学会や一般社団法人日本卵子学会、一般社団法人日本生殖医学会が主催する検定試験があります。
胚培養士の主な活躍の場は、病院やクリニックとなっています。とくに不妊治療において胚培養士の存在が必要とされますが、圧倒的に数が足りていないというのが現状です。
胚培養士になるためにはどうすればいい?
近年、不妊治療の市場規模が大きくなるにつれて胚培養士の需要が高まってきています。はじめは、臨床検査技師が生殖補助医療を行うことが多く、臨床検査技師が新しく知識や技術を学んで胚培養士になるのが一般的でしたが、現在は畜産や生命科学などを学んだ人たちも胚培養士を目指すことが多くなっているようです。
しかし、胚培養士の認定試験を受験できるのは臨床検査技師だけではありません。
「一般社団法人日本卵子学会」では、「正看護師の資格を持っている人」または「大学の医学部、農学部、生物資源科学部、畜産学部、獣医学部、獣医畜産学部、生物理工学部、酪農学部、生物生産学部、生物産業学部、生物資源学部、農学生命科学部、薬学部、保健衛生学部、看護学部、医療医技術学部、保健医療学部、医療衛生学部、もしくはこれらに準ずる機関において、生殖生物学、発生学及び生化学を修得した学士」にも受験資格が与えられているため、実際には多くの人が胚培養士になれるチャンスがあるのです。
現在は、3つの団体が実施しているいずれかの試験に合格することで胚培養士になることができます。団体別に詳しくみていきましょう。
◇ 認定臨床エンブリオロジスト(日本臨床エンブリオロジスト学会)
試験を受験する前提として、臨床検査技師または正看護師の資格を持っている人、もしくは、大学の理科系学部、大学院の理科系研究科あるいはそれに準ずる機関で生物学関連について学んだ修士、博士、学士が対象となります。
日本臨床エンブリオロジスト学会が認定する「認定臨床エンブリオロジスト」になるためには、まず学会会員になる必要があります。そのうえで、精子調整や採卵、胚移植など培養室業務に1年以上携わっており、かつ30症例以上の経験を積む必要があります。
<試験日程、費用など>
試験日:年に1回実施
試験内容:筆記試験、面接試験、DVD提出による実技試験
受験料:30,000円
資格更新:5年ごと
得られる資格:認定臨床エンブリオロジスト
◇ 生殖補助医療胚培養士(一般社団法人日本卵子学会)
日本哺乳動物卵子学会の「生殖補助医療胚培養士」は、生物学や生化学、発生学について大学で学び、日本産婦人科学会の認定施設で1年以上の実務経験がある人が対象です。かつ、1年以内に関連学会に2回出席していることも必要です。そのうえで、学会会員である必要があります。
<試験日程、費用など>
試験日:平成29年度は6月に実施
試験内容:書類審査、筆記試験、面接
受験料:60,000円(講習会受講料30,000円を含む)
資格更新:5年ごと
得られる資格:生殖補助医療胚培養士
◇ 生殖補助医療管理胚培養士(一般社団法人日本生殖医学会)
生殖補助医療胚培養士と似ていますが、「管理」という名がつく生殖補助医療管理胚培養士においては、一般社団法人日本卵子学会と一般社団法人日本生殖医学会が共同で資格認定を行っています。
生殖補助医療胚培養士の上位資格にあたり、生殖補助医療胚培養士として5年以上の臨床実務経験があり、5年以内に生殖に係る論文を学会誌に3編以上発表していること、5年以内に関連学会に5回以上出席し、発表も行っているというのが資格要件になっています。さらに、5年以内に実施した200症例を記録として提出する必要もあり、受験要項としてはかなりハードルが高いのが特徴です。
<試験日程、費用など>
試験内容:筆記試験、口述試験
資格更新:5年ごと
得られる資格:生殖補助医療管理胚培養士