目次
1.訪問看護とは
訪問看護とは、病気や障がいのある人が自宅で安心して生活を続けられるよう、看護師が利用者宅を訪れて必要なケアをおこなうサービスです。ケア内容は、主治医が作成した訪問看護指示書に基づいておこなわれます。
対象者
訪問看護の対象者は、乳幼児から高齢者まで幅広く、がん、難病、精神疾患、リハビリが必要な人などさまざまな病気や症状に対応しています。利用者の年齢や状態によって、医療保険か介護保険のどちらを適用するかが決まります。利用者が要支援・要介護者の場合は、基本的に介護保険の適用となり、40歳以下で要支援・要介護者以外は医療保険が適用されます。

厚生労働省がおこなった調査によると、訪問看護の利用者数は年々増加しており、介護保険での利用者数は約66.5万人、医療保険を使った利用者数は約16.1万人となっています(2023年時点)。
また、訪問看護ステーションの利用者を傷病ごとに分けると、介護保険では循環器系や筋骨格系および結合組織の疾患が多く、医療保険では神経系や精神および行動の障がいが多い傾向があります。

サービス内容
訪問看護では、利用者の主治医と連携を取り、療養上必要なケアや支援、調整をおこないます。提供する主なサービス内容は以下のとおりです。
- バイタルや全身の健康状態の確認
- 点滴、経管栄養管理、カテーテルなどの器具管理含む医療的ケア
- 清拭・排泄ケア・栄養・服薬管理などの日常生活支援
- 相談・助言などの家族対応
- リハビリ
- 入退院時の医療機関との連携
- 看取り
2.訪問看護を提供する施設

訪問看護サービスを提供するのは、訪問看護ステーションまたは病院・診療所です。訪問看護ステーション数の増加が目立つ一方、訪問看護を実施する病院・診療所数は減少が続いています。また、2015年に医療保険を利用したサービスを提供する訪問看護ステーション数が介護保険利用の事業所数を超えて以降、同様の傾向が続いています。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションとは、訪問看護をおこなう看護師や保健師、リハビリテーション職が所属する事業所です。利用者の主治医に訪問看護指示書を交付してもらうことで、看護・リハビリサービスが提供できます。
病院・診療所
訪問看護部門のある病院や診療所は、医療保険の訪問看護をおこないます。また、都道府県に申請し、認められることで「みなし指定訪問看護事業所」として扱われ、介護保険の訪問看護・リハビリの実施も可能です。
3.訪問看護の仕事内容
人員基準
訪問看護の人員基準は、施設ごとにそれぞれ次のように定められています。
訪問看護の一日
訪問看護は基本的に1人で利用者宅を訪問し、訪問看護指示書に基づいたケアをおこないます。1日の訪問件数は4〜6件程度で、1件あたりの時間は利用者に必要な処置内容に応じて30分〜1時間程度などばらつきがあります。
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訪問看護の職場別給料相場
2025年4月時点でジョブメドレーに掲載されている看護師/准看護師の訪問看護ステーションの求人の平均給料は、以下のとおりでした。なお、各種手当や残業代、賞与などは含みまない金額です。カッコ内は、病院や診療所など看護師の求人がある全職場の平均額です。すべての雇用形態において、訪問看護のほうが高水準であることがわかります。
下限平均 |
上限平均 |
総平均 |
|
---|---|---|---|
正職員(月給) |
30万319円 (26万2,720円) |
38万696円 (32万5,319円) |
33万3,325円 (29万1,660円) |
正職員(年収) |
420万4,466円 (367万8,080円) |
532万9,744円 (455万4,466円) |
466万6,550円 (408万3,240円) |
パート・アルバイト (時給) |
1,762円 (1,565円) |
2,129円 (3,723円) |
1,906円 (1,664円) |
*年収は「月給の総平均 × 14ヶ月(ボーナスは月給の2ヶ月分)」で試算
*数値は「総平均」
*地域区分は、東北(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)、北関東(茨城県、栃木県、群馬県)、首都圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、甲信越(新潟県、山梨県、長野県)、北陸(富山県、石川県、福井県)、東海(岐阜県、静岡県、愛知県、三重県)、近畿(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)、中国(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県)、四国(徳島県、香川県、愛媛県、高知県)、九州・沖縄(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)
4.訪問看護を利用する
利用の流れ

訪問看護を利用するには、受診している医療機関や地域包括支援センターなどに相談します。また、市区町村にある介護保険や障がい福祉の担当窓口でも相談を受け付けています。サービスの利用には、主治医による指示書が必要なため、利用する訪問看護事業所宛に作成してもらうことで、サービスの利用が可能になります。
利用にかかる費用
訪問看護にかかる費用は、介護保険と医療保険それぞれ利用する保険によって異なります。介護保険の場合は、1割程度の負担となることが多く、医療保険の場合は1〜3割負担と、年齢や所得に応じて幅があります。
年齢 |
自己負担の割合 |
|
---|---|---|
介護保険 |
要介護認定を受けた人 |
月額の1割 ※月の支給限度額を超えた分は自己負担 |
医療保険 |
未就学児 |
月額の2割 |
就学児〜70歳 |
月額の3割 |
|
70歳以上75歳未満 |
月額の2割 ※一定以上の所得者は3割 |
|
後期高齢者医療の対象者 |
月額の1割 ※一定以上の所得者は3割 |
以下は、訪問看護ステーションを介護保険で利用し、1割負担として計算した場合の費用目安です。なお、1単位10円として算出していますが、1単位あたりの金額は地域ごとに異なるため、あくまで目安として参考にしてみてください。
訪問時間 |
費用 |
自己負担額 (1割) |
---|---|---|
20分未満 |
3,140円 |
314円 |
30分未満 |
4,710円 |
471円 |
30分以上60分未満 |
8,230円 |
823円 |
60分以上1時間30 分未満 |
11,280円 |
1,128円 |
5.訪問ならでは魅力がある
訪問看護は、病気や障がいのある人が自宅で安心して療養できるよう、必要なケアを提供するサービスです。訪問看護を実施するのは、訪問看護ステーションが95%ほどを占め、残りが病院・診療所となっています。
訪問看護は、基本的に1人で訪問し、健康状態の確認から日常生活へのアドバイス、家族からの相談対応など多岐にわたる業務をおこないます。責任感が大きくこれらが負担に感じることもある一方、患者と1対1で向き合い、生活を支えられることは病院では味わえない魅力といえます。また、患者や家族から直接感謝の言葉をもらうことも多いため、やりがいを感じられることでしょう。
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