
1.美容師とは?
美容サービスにより容姿を美しくする専門職
美容師は美容師法により「美容を業とする者」と定義されています。美容とは、カットやパーマ、化粧、着付け、ネイルやまつ毛のエクステンションなどの方法によって容姿を美しくすることを指します。
美容師の就業者数は増加傾向にありましたが、2005年をピークに減少に転じています。さまざまな原因から離職する人が多いことや、新たに美容師を目指す人が減りつつあることなどが原因として挙げられます。

*1万人未満を四捨五入しているため男女別の就業者数の合計と総就業者数が一致しないことがある
美容院数に関する記事はこちらからチェック
>その数コンビニ以上!歯医者は本当に過剰供給なのか調査してみた
美容師と理容師の違い
似た職種に理容師があります。理容師は頭髪の刈り込みや顔剃りなどの方法によって容姿を整える仕事をする人を指します。美容師・理容師ともに髪をカットする点は共通していますが、美容師にしかまつ毛エクステンションはできず、理容師にしか顔剃りはできません。
美容師 |
理容師 |
|
---|---|---|
業務内容 |
カット、カラーリング、パーマ、ヘアセット、メイク、着付け、まつ毛エクステンションなどの方法により容姿を美しくする |
頭髪の刈り込み、顔剃りなどの方法により容姿を整える |
勤務先 |
美容院、トータルビューティーサロン、結婚式場、ヘアメイクサロン、フォトスタジオ、ネイルサロン、アイラッシュサロン、病院、高齢者施設など |
理容室、エステサロン、病院、高齢者施設など |
就業人口* |
約350,130人 |
約168,550人 |
男女比* |
2:8 |
6:4 |
*就業人口:e-Stat「国勢調査 時系列データ 人口の労働力状態,就業者の産業・職業」より2015年就業者数を参照
*男女比:e-Stat「国勢調査 / 平成27年国勢調査 / 抽出詳細集計(就業者の産業(小分類)・職業(小分類)など)」を参照
就業人口を見てみると、美容師のほうが理容師の約2倍であることがわかります。男女比を見ると、美容師が2:8と女性が圧倒的に多いのに対し、理容師では6:4と美容師ほどの男女比の差は見られません。これは、美容院、まつ毛サロン、ネイルサロンなど美容師免許を活かせる職場では、女性顧客が多いことが関係していると考えられます。
美容師と理容師の違いについて、こちらの記事でも解説しています。
>理容師の仕事、なり方、働く場所、給与、将来性、美容師との違いは?
2.美容師になるには?
美容師免許が必要
美容師として働くためには、美容師国家試験に合格し美容師免許を取得する必要があります。
美容師国家試験の受験資格を得るには、美容師養成施設に入り2年以上の課程を修了しなければなりません。美容師養成施設は高校卒業以上を入学条件としているところが多いですが、中卒の人でも高等課程の認可を受けている学校であれば入学できます。

主な美容師養成施設(美容専門学校)は以下のページで確認できます。
>日本理容美容教育センター|養成施設一覧
美容師国家試験の概要
美容師国家試験は春と秋の2回実施され、筆記試験と実技試験があります。実技試験は滋賀県を除く各都道府県でおこなわれ、筆記試験は以下の13都道府県で実施されます。
北海道、岩手県、宮城県、東京都、石川県、愛知県、大阪府、岡山県、広島県、愛媛県、福岡県、鹿児島県、沖縄県
春期試験日程
・11月:願書等提出
・1月下旬〜2月上旬:実技試験
・3月上旬:筆記試験
・3月下旬:合格発表
秋期試験日程
・5月:願書等提出
・7月下旬〜8月上旬:実技試験
・9月上旬:筆記試験
・9月下旬:合格発表
なお、前回の試験で筆記または実技いずれかの試験に合格していれば、申請することで試験が免除されます。実技試験には受験票以外にも、カッティングやワインディング、オールウェーブセッティングといった課題に応じた用具類をすべて持参する必要があります。用意するものは受験案内に記載されている内容を確認しておきましょう。
筆記試験は、下記の課目から55問出題されます。合格基準は正答率60%以上ですが、いずれかの課目で0点があれば合格点に達していても不合格となります。
・関係法規、制度
・衛生管理
・保健
・香粧品化学
・文化論
・美容技術理論
・運営管理
そのほか、美容師国家試験に関する最新情報は公益財団法人理容師美容師試験研修センターのページからご確認ください。
>公益財団法人理容師美容師試験研修センター|試験について
美容師国家試験の合格率の推移
春期の合格率は85〜92%で推移しています。

直近、2025年春期に実施された第51回美容師国家試験の結果は次のとおりです。
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
---|---|---|
1万9,776人 |
1万7,426人 |
88.1% |
参考:公益財団法人理容師美容師試験研修センター|過去の試験実施状況
秋期の合格率は60%前後で推移しており、受験者数ともに春期より低い傾向にあります。難易度に違いはありませんが、春期が主に全日制、秋期が主に通信課程の受験者数が多いことが関係していると考えられます。

仕事で役立つ資格
就職先が多様な美容師は、美容師国家資格以外にも持っていると役立つ資格がいくつかあります。
着付け技能検定
国家検定制度の一種で、着付けに関する知識と技術を問います。合格すると、着付け技能士の称号が得られます。サロンによっては着付けとヘアメイクをセットで提供しているため、着付け技能士の称号を持っていれば、成人式や結婚式などでの集客にもつながります。
ネイリスト技能検定
最近ではネイルサロンが併設されている美容院が増えています。ヘアセットに加えてネイルの施術をおこなうことで、顧客の美容をトータルコーディネートできます。
ヘアケアマイスター認定試験
美容師または理容師の国家資格取得者が受けられる試験です。毛髪診断ができるようになり、顧客が求めるヘアスタイルやヘアケアの提案が可能になります。
訪問福祉理美容師
美容師または理容師の国家資格取得者が講習を受けられます。自宅での病気療養や老人福祉施設の入所者など美容院に行けない人を訪問し、美容を施せる技術や基本知識があることを証明する資格です。
訪問美容についての詳しい内容はこちらの記事をチェック
>需要が高まる訪問美容! 必要な資格や仕事内容について解説!
3.美容師の仕事内容
美容師の仕事はカットやカラーリングなど髪に関する美容と、爪やまつ毛など髪以外を美しくする仕事に大別できます。美容院などでおこなわれる仕事内容は次のとおりです。
髪に関する仕事
・シャンプー:頭皮にたまった老廃物や皮脂、髪の汚れを落とし、カットやスタイリングをおこないやすくします。
・カット:ハサミ(シザーズ)やカミソリを使って髪を切ります。頭の形や髪質、毛量などを考慮し希望の髪型に仕上げることが求められます。
・ワインディング:パーマをかける前にロッドを髪に巻くことです。
・パーマ:顧客の要望に応じて適切なパーマの提案や機械の操作をし施術します。
・カラーリング:カラー剤を素早く均一に塗布し、髪の毛を脱色・染色します。
・セット:カールやアップスタイルなどをつくる「セッティング」と、ドライヤーとブラシでおこなう「ブロードライ・スタイリング」があります。
ネイルサロンやまつ毛サロンなどでおこなわれる仕事内容は次のとおりです。
髪以外に関する仕事
・ネイル:爪の長さや形を整え、塗料によってデザインを施します。ネイルサービスを提供している美容院では美容師のみが施術可能です。
・まつ毛エクステンション:専用の接着剤(グルー)を使ってまつ毛に人工毛(エクステンション)をつけていきボリュームを出します。ネイルと異なり美容師免許が必要です。
・着付け:成人式や結婚式などに着用する和服の着付けをおこないます。サービス提供にあたって資格は不要です。
・フェイシャルエステ:クレンジングや洗顔、マッサージ、パックなどの方法による美顔施術をおこないます。医薬部外品を使った施術など内容によっては美容師免許が必要となります。
4.美容師の勤務先
美容師の主な勤務先は美容院ですが、資格を活かして働ける職場は多岐にわたります。
美容院・ヘアサロン
髪をきれいにし、カットやカラーリング、パーマ、セットなど顧客の要望に応じて施術します。美容院ごとに客層や雰囲気、求められる技術が異なるため、職場選びの際は店の特徴をよく確認しましょう。
トータルビューティーサロン
髪以外にも、まつ毛エクステンションやネイル、ブライダルヘアメイクなど総合的に美容サービスを提供します。
ヘアカット専門店
シャンプーやトリートメントはなく、カットのみをおこないます。短時間、低価格を強みにしている店舗が多く、施術にスピードが求められます。
ヘアカラー専門店
部分染めや根元染め、全体染めまでカラーリングを専門に提供します。高い技術を必要とされるカットやパーマがないため、ブランクがある人でも歓迎されやすいです。
結婚式場
新郎新婦にヘアメイクを施すほか、和装やドレスの着付けもおこないます。勤務先は結婚式場以外にもブライダル衣装をレンタル・販売している会社や、ブライダル事業を展開するホテル内などがあります。
訪問美容事業所
高齢や病気などでサロンへ行けない人のもとを訪れ、ヘアカットなどの美容サービスを提供します。訪問先は介護施設や病院、顧客の自宅などさまざまです。
アイラッシュサロン
まつ毛にエクステンションやパーマを施します。保健所に届出をし、基準をクリアした施設である必要があります。
ヘアメイクサロン
ヘアメイクに特化しており、顧客は主に結婚式の参列者やパーティーの参加者です。結婚式場やパーティー会場に出向いて施術することもあります。
フォトスタジオ
七五三や成人式などの記念写真を撮影する際に、着付けやヘアセット、メイクを施します。
5.美容師の働き方
美容師の一日の流れや休日について解説します。
美容師の一日

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美容師の休日
週末や祝日は予約が多いため、美容師の休日は平日がほとんどです。月曜日や火曜日を定休日としているところが一般的です。
週に1〜2日の休みがほとんどですが、最近では労働環境の改善から週末の休暇や長期休暇が取得できる美容院も増えています。
6.美容師の給料
ジョブメドレーに掲載されている求人から美容師の賃金相場を算出しました。なお、残業手当など月によって支給額が変動する手当は集計対象外のため、実際に支払われる賃金はこれより多くなる可能性があります。
【全国平均】美容師の時給・月給・年収の相場
2024年12月時点の全国の美容師の時給・月給・年収の相場は次のとおりとなりました。
下限平均 |
上限平均 |
総平均 |
|
---|---|---|---|
パート・アルバイトの時給 |
1,158円 |
1,508円 |
1,285円 |
正職員の月給 |
22万8,788円 |
37万1,056円 |
27万4,976円 |
正職員の年収* |
320万3,032円 |
519万4,784円 |
384万9,664円 |
*年収は「月給 × 14ヶ月(ボーナスは月給の2ヶ月分)」で試算
美容師の給料は、勤務地、職場、役職などによっても異なります。詳しい給料については下記の記事をご確認ください。
>美容師の給料は安い?アシスタントや店長などの役職・職場・エリア別に年収を紹介
7.美容師の将来性
美容院・美容師数は年々増加傾向にあり競争は激化しています。低価格サービスや美容家電の普及などから一人あたりの単価は低下傾向にあります。昨今ではコロナの影響により、来店回数の減少や来店間隔の長期化も生じました。
しかし、トレンドを察知し顧客の要望に応えられる美容師は今後も必要とされる職業といえます。また、理容師・美容師のダブルライセンスが取得しやすくなったことや、美容師免許が活かせる仕事も多岐にわたることから、さまざまな分野での活躍が期待されています。
これからますます少子高齢化が進むことを考えると、病院や介護施設などにおける福祉美容・訪問美容も、時代に合うサービスとして注目度が高まりそうです。
参考
- e-Stat|衛生行政報告例 / 令和2年度衛生行政報告例 統計表 年度報
- 厚生労働省|理容師・美容師免許の取得まで
- 日本理容美容教育センター|理容師・美容師になるまで
- 公益財団法人 理容師美容師試験研修センター|第46回理容師美容師国家試験受験案内
- 公益財団法人 理容師美容師試験研修センター|新制度による筆記試験実施要項
- 理容師・美容師の養成のあり方に関する検討会|理容師・美容師の養成のあり方について
- 厚生労働省|美容業 結果の概要