老人福祉法と介護保険法についてわかりやすく解説!2021年度の改正内容は?

老人福祉法と介護保険法にはどのような違いがあるのでしょうか? それぞれの法律が生まれた背景や目的、改正内容について紐解いてみると、戦後の高齢者福祉の歴史が見えてきました。

老人福祉法と介護保険法

1. 日本の高齢者福祉を支える老人福祉法と介護保険法

日本の高齢者福祉は主に老人福祉法と介護保険法によって規定されています。老人福祉法と介護保険法の違いをまとめると、次の表のようになります。

老人福祉法と介護保険法の違い
老人福祉法 介護保険法
施行年 1963年7月 2000年4月
背景 ・高度経済成長期に都市化核家族化が進展
・家庭内の互助機能が低下
地方における高齢者福祉が問題に
認知症高齢者介護に対する社会的関心の高まり
・高齢化が急速に進んだことで社会保障費が財政を圧迫
・バブル崩壊後の経済停滞
目的 老人の福祉に関する原理を明らかにするとともに、老人に対し、その心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措置を講じ、もつて老人の福祉を図ることを目的とする。」─老人福祉法第一条 「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり(略)医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け(略)国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。」─介護保険法第一条
ポイント 高齢者福祉を担当する機関や施設、事業に関するルールについて定めた法律
社会福祉(社会的弱者に対して公費をもとに措置をおこなう公助の仕組み)
介護が必要な人を社会全体で支えるための仕組み(介護保険制度)について定めた法律
社会保険(利用者に対して保険料をもとに給付をおこなう互助の仕組み)

2章で老人福祉法について、3章で介護保険法について詳しく解説します。

2. 老人福祉法とは?

老人福祉法は高齢者福祉を担当する機関や施設、事業に関するルールについて定めた法律です。都道府県と市区町村に対して老人福祉計画の作成を義務付けると共に、7つの老人福祉施設と6つの老人居宅生活支援事業(在宅福祉事業)について規定しています。なお有料老人ホームは老人福祉法の定める老人福祉施設には当たりませんが、同法の規制対象となっています。

・老人福祉法制定の背景と目的

老人福祉法が施行されたのは1963年。日本は高度経済成長期の只中にありました。この時期に人口が地方から都市部に流出し核家族化が進んだことによって、家庭内の互助機能が低下し、従来「家族の責任」とされてきた高齢者の扶養が難しくなってきました。社会や家族のあり方が大きく変わることで明らかになった高齢者問題に対応するために、老人福祉法は作られたのです。

この法律に基づき、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホームなどの老人福祉施設の整備が急ピッチで進められました。現在のホームヘルプサービスに当たる老人家庭奉仕員派遣事業が制度化されたのもこのときです。

ただし、これらの施設やサービスを利用するためには所得制限があり、「助けを必要とする弱者を公費で支える」という高齢者のための社会福祉制度でした。

また、老人福祉法は高齢者の健康の保持生活の安定社会参加の促進が基本理念であり、高齢者の介護が目的ではないことに留意が必要です。

・老人福祉法の改正内容

その後1970年代に入ると好景気を背景に70歳以上の高齢者の医療費が無償化されるなど高福祉化が進みました。しかしオイルショックが起きると日本の経済成長率は鈍化。さらに無償化によって不要不急の受診・入院が増えたことで、医療費の膨張を招きました。これを打開するために1980年代には老人保健法が施行され、高齢者の医療費は一部自己負担とされました。このように高齢者医療については老人福祉法で規定される社会福祉(公費負担)から、老人保健法で規定される社会保険(一部自己負担)へと移行していきました。

同時期にホームヘルプ、ショートステイ、デイサービスという在宅福祉の三本柱が制度化され、施設中心だった高齢者福祉を在宅でおこなうという選択肢が整いました。

老人福祉法の主な改正内容
1973年 老人医療費支給制度(70歳以上の医療費無償化)制定
→老人医療費の増大を招いたため、1983年の老人保健法の施行と共に廃止
1978年 ねたきり老人短期保護事業(ショートステイ)開始
1979年 デイサービス事業開始
在宅福祉の三本柱(ホームヘルプ、ショートステイ、デイサービス)が出揃う
1982年 老人保健法制定
→医療事業…高齢者医療費の一部自己負担(のちの後期高齢者医療制度)
保健事業…疾病の予防・治療・リハビリを総合的に推進(のちの健康増進法)
→高齢者医療が社会福祉から社会保険へ
1990年 都道府県と市区町村に対して老人福祉計画の作成を義務付け
1994年 老人福祉施設に老人介護支援センター(在宅介護支援センター)を追加
2000年 介護保険法施行に伴い、老人居宅生活支援事業に認知症対応型老人共同生活援助事業(グループホーム)小規模多機能型居宅介護事業を追加
2006年〜 有料老人ホームに関する規定の厳格化

─参考:杉本敏夫・家高将明/編著『新・はじめて学ぶ社会福祉1 高齢者福祉論[第2版]』

2000年の介護保険法施行後、老人福祉法で規定される老人福祉施設・サービスを利用するときには介護保険制度が原則適用されます。しかし、特別な事情がある場合には老人福祉法に基づく市区町村の権限が行使されます。例えば、虐待を受けているなどの理由で緊急で施設への入所が必要であると判断された場合、老人福祉法に基づく市区町村の措置によって老人ホームへの入所がおこなわれます。

用語解説|老人保健法とは?

1973年「福祉元年」と呼ばれ、高度経済成長を背景に福祉政策が大きく拡充された年です。年金の給付水準が引き上げられたり、医療費の自己負担額に上限が設けられたりしたほか、老人福祉法に基づいて70歳以上の高齢者の医療費の窓口負担が無償化されました(老人医療費支給制度)。

この制度は約10年間続きましたが、高齢者の医療費が財政を圧迫したことから1983年に施行されたのが老人保健法です(成立は1982年)。高齢者の医療費の一部自己負担(医療事業)と病気の予防、治療、リハビリテーションの推進(保健事業)について定めたこの法律は、2008年に後期高齢者医療制度健康増進法にそれぞれ受け継がれ現在に至っています。

3. 介護保険法とは?

介護保険法は介護が必要な人を社会全体で支えるための仕組み(介護保険制度)について定めた法律です。誰もが必要な支援を受けられるよう、介護認定や給付、事業者、施設などについて広範にルールを定めています。

・介護保険法制定の背景と目的

老人福祉法が制定された後、日本は長寿化と少子化が同時に進んだことで世界に類を見ないスピードで高齢化が進みました。日本が高齢化率7%の高齢化社会から14%の高齢社会に至るまでにかかった期間はわずか24年(1970年〜1994年)。フランスが126年、スウェーデンが85年、アメリカが72年、イギリスが46年、ドイツが40年だったのに対して驚異的な速さでした。

1980年代になると、認知症社会的入院など高齢者の医療や介護に対する社会的関心が高まり、高齢者福祉のあり方が見直され始めました。そして1990年代に入ると、バブル経済が崩壊し日本経済は停滞期に入ります。高齢者に関わる社会保障給付が増加する一方で税収は落ち込み、抜本的な改革が求められるようになりました。

その後、利用者本位、予防とリハビリの重視、在宅ケアの推進、高齢者の介護責任を家族から社会へ、社会福祉から社会保険へ(公助から互助へ)──などをテーマに議論が進められ、2000年4月から介護保険制度がスタートしました。

高齢者福祉改革年表
1986年 高齢者の社会的入院が問題となり、老人保健施設(当時)が誕生
長寿社会対策大綱制定
人生80年を前提とした社会保障のあり方を示す
1987年 介護福祉士社会福祉士が誕生
1989年 厚生省(当時)に介護対策検討会設置
「いつでも、どこでも、誰でも利用できる介護サービス」の創設が目標となる
高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)発表
→1999年度末までに介護に必要な人員の確保、施設の整備を推進
1990年 老人福祉法改正
1994年 21世紀福祉ビジョン発表
社保審議会で介護保険制度の導入が提言される
新ゴールドプラン発表
報告書「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」発表
1995年 介護保険制度の創設が審議入り
1996年 介護保険法案作成
1997年 介護保険法成立
2000年 介護保険制度開始

─参考:杉本敏夫・家高将明/編著『新・はじめて学ぶ社会福祉1 高齢者福祉論[第2版]』

・介護保険法の改正内容

2020年4月で介護保険制度開始から20年が経過しました。この20年間で要介護(要支援)認定者数は218万人(2000年4月末)から669万人(2020年4月末)へと、およそ3倍に増えています。また、介護を取り巻く環境の変化に臨機応変に対応するために、介護保険制度はおおむね3年ごとに改正されています。

介護保険法の主な改正内容
2005年改正(2006年4月施行)
地域包括支援センターの創設
地域密着型サービスの創設
・予防重視型システムへの転換(新予防給付の創設)
・施設給付の見直し(居住費・食費の見直し、低所得者に対する配慮)
・介護サービス情報の公表、など
2008年改正(2009年5月施行)
・介護事業者の法令遵守体制整備の義務化
・不正が疑われる介護事業者に対して、行政による立入検査権、是正勧告・命令権の創設
事業廃止時のルールを厳格化、など
2011年改正(2012年4月施行)
・24時間対応の定期巡回・随時対応サービスの創設
・サービス付き高齢者住宅と定期巡回・随時対応サービスを連携
複合型サービス(事業所)の創設
介護予防・日常生活支援総合事業の導入
・要件を満たせば介護職員によるたん吸引が可能に
介護療養病床の廃止時期を延期
労務管理の徹底、など
2014年改正(2015年4月施行)
・地域支援事業の充実(在宅医療と介護の連携認知症対策・地域ケア会議の推進、生活支援サービスの強化)
予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業に移行
特別養護老人ホームの新規入所者を要介護3以上に(原則)
・所得に応じて自己負担2割を導入
・低所得者の保険料軽減割合を拡大
・低所得者に対する補足給付に資産要件を追加
2017年改正(2018年4月施行)
介護医療院の創設(医学管理・看取り・生活施設)
・自立支援・重度化防止に向けた取り組みの推進(データに基づく課題設定、適切な指標による実績評価→インセンティブを付与)
・地域共生社会の実現に向けた取り組みの強化(地域住民との協働、共生型サービスの創設)
・所得に応じて自己負担3割を導入
・介護納付金への総報酬割の導入、など
2020年改正(2021年4月施行)
地域包括支援センターの役割強化(世代や属性を問わない相談窓口の創設、交流の場の確保など)
認知症対策の強化(支援体制の整備、予防のための調査研究の推進、地域住民との共生、他分野との連携など)
医療・介護データ基盤の整備
介護人材確保業務効率化に向けた取り組みの強化
社会福祉連携推進法人の創設、など

─参考:厚生労働省|介護保険制度の概要

2020年改正(2021年4月施行)では、地域包括支援センターの役割の強化が盛り込まれました。「8050問題」に代表されるように、地域の問題が複雑化・複合化するなか、高齢者、障がい者、子ども、生活困窮者などの相談窓口を一本化することで、より包括的な支援を可能にしようというものです。ただし、具体的にどのような事業を展開するかは市区町村の判断に委ねられているため、実効性を持たせることができるかどうか曖昧な点の多い施策となっています。

用語解説|8050問題とは?

引きこもりの長期化が招くさまざまな社会問題を「8050問題」と呼びます。親に健康上・介護上の問題が発生したときに顕在化しやすく、80代の親と50代の子どもの世帯が多いことから「8050問題」と名付けられました。

8050問題は、年金などの限られた収入で子どもを養っている親自身に医療や介護が必要になると、経済的に立ち行かなくなる──という構図になっています。親世代の「引きこもりは恥」という考えから必要な支援が届かず、孤立死、無理心中、親の年金の不正受給などの痛ましい事件が実際に起きています。

内閣府の調査によると、引きこもり状態にある中高年(満40歳〜満64歳)は全国におよそ61.3万人いると推計されており、実態の把握や社会復帰の支援などの対応が急がれています。

4. まとめ

戦後、老人福祉法に基づいて整備が進められた介護施設や在宅介護事業を基盤に、すべての人が必要なサービスを受けられるように介護保険制度が整えられました。両者は独立しているわけではなく、ハコとヒト、公助と互助、相互に補完しあって今日の高齢者福祉を支えているのです。

参考

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