1.介護にはどんな職種・仕事があるの?
ひと言で「介護」と言ってもさまざまな仕事・職種があります。それぞれの仕事・職種に就くために必要な資格や経験、働き方の特徴について確認してみましょう。
・在宅介護を支える仕事・職種
自宅での介護を希望する方のために、訪問介護(ホームヘルプ)事業所で働く訪問介護員(ホームヘルパー)や、通所介護(デイサービス)事業所で働く職員がこれに当たります。
訪問介護の場合は、利用者の自宅を訪問して生活援助(掃除、洗濯、買い物などの代行)や身体介護(食事、排泄、入浴、着替え、体位変換などの介助)をおこないます。訪問介護員になるには介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)の修了が必要です。訪問介護員は基本的にひとりで利用者宅を訪問するため、その場の状況に即した適切な判断をくだすための知識や能力が求められるためです。ただし2018年度に新設された生活援助従事者研修を修了すれば、訪問介護業務のうち生活援助業務に携われるようになりました。
通所介護の場合は、施設に通う利用者に対して食事や入浴、移動の介助をおこなったり、レクリエーションを提供したりします。通所介護の業務は無資格でもおこなえますが、利用者の送迎業務があるため、車の運転ができると重宝されます。
訪問・通所介護は残業がほとんどなく、時間をコントロールしやすいことからパートタイムで働く方が多くいます。また、生活援助は家事経験を活かせるため、介護未経験でも始めやすいといわれています。
厚生労働省が2016年に40歳以上の方を対象におこなった「平成28年 高齢社会に関する意識調査」によると「介護は住み慣れた自宅で受けたい」という意向の方は約7割にも上ります。今後も高いニーズの見込まれる在宅介護を支える仕事。無資格・未経験でもチャレンジしてみる価値は大いにありそうです。
tips|小規模多機能型居宅介護施設とは?
在宅介護を希望する方のために訪問、通所、泊まり(ショートステイ)の3つの介護サービスを包括的に提供する施設のことを小規模多機能型居宅介護施設と呼びます。
ひとつの施設で3つのサービスを提供しているため、介護の知識と経験を幅広く身につけることができます。また「小規模」と名の付くとおり1事業所あたりの定員数が29人と少ないため、「利用者一人ひとりとじっくり向き合いたい」というタイプの方にも向いています。
一方、施設は24時間365日運営のため、夜勤が発生したり休みが取りにくかったりすることも想定されます。夜勤が難しい場合は、日勤のみの求人を探すか採用担当者に相談するなどしてみましょう。
・施設介護を支える仕事・職種
各種介護施設で働く職員がこれに当たりますが、施設の種別によって入居している方がどのような支援や介護を必要としているかが大きく異なります。ここでは代表的な施設の特徴と介護職員の仕事内容について解説します。
認知症の方が入居
グループホーム
入居者 | ・認知症と診断された方 ・集団生活に支障のない方 ・要支援2〜要介護5 ・施設と同じ市区町村に住民票のある方(地域密着型サービスのため) |
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特徴 | ・認知症の方が1ユニット最大9名で共同生活をおこなう施設 ・看護師の配置義務なし ・介護職員が24時間常駐 ・認知症介護の知識と技術が必要 |
グループホームは認知症の方のための共同生活施設です。施設職員は家事の割り振り・見守り、レクリエーションの企画・運営に加え、必要に応じて身体介護をおこないます。
要介護度5の方まで入居できますが割合としては少なく、「集団生活に支障のないこと」が入居の条件となっているため、未経験・無資格でも働きやすい施設です。ただし認知症介護の知識と技術が必要ですので、未経験の場合は研修などのサポート体制が整っている施設を選ぶと良いでしょう。
主に介護を必要としている方が入居
介護付き有料老人ホーム
入居者 | ・介護専用型…要介護1〜要介護5 ・混合型…自立〜要介護5 |
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特徴 | ・民間企業が運営し、都道府県の認可を受けた特定施設 →提供サービスは施設によって異なる ・看護師の配置義務あり(日中は常駐) ・介護職員が24時間常駐 |
介護付き有料老人ホームは民間企業が運営する都道府県の指定を受けた特定施設で、主に介護を必要とする方が入居しています。
介護職員は生活支援、身体介護、レクリエーションなどの介護業務全般を担当しますが、特定施設への配置が義務付けられているそのほかの専門職員(生活相談員、ケアマネジャー、栄養士、調理スタッフ、看護師、機能訓練指導員など)と連携しながら業務を進めることが重要です。
介護付き有料老人ホームは民間運営の施設のため、居室や設備のグレード、サービス提供体制がさまざまです。そのため施設によって介護職員に求める資格や経験、資質が異なるため、応募する際は求人内容をよく確認しましょう。
特別養護老人ホーム(特養)
入居者 | ・要介護3〜要介護5 |
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特徴 | ・自治体や社会福祉法人が運営する老人福祉施設 ・看護師の配置義務あり(日中は常駐) ・介護職員が24時間常駐 |
特別養護老人ホームは自治体や社会福祉法人が運営する老人福祉施設で、入居できるのは原則自宅で日常生活を送ることが困難な要介護3以上の方と定められています。
ほかの専門職員と連携しながら介護業務全般を担当する点は介護付き有料老人ホームと同じですが、介護度が中重度の入居者が多いことから、身体介護のために体力が必要となります。
また特養の場合、居室タイプによって働き方が異なります。ユニット型(個室・準個室)は10名前後のユニット別に職員が配置されるため、入居者一人ひとりに寄り添ったケアをしやすく、従来型(個室・多床室)は業務別にシフトが組まれるため、仕事を覚えやすいといわれています。どちらの働き方が合いそうか、施設見学や面接の際に相談すると良いでしょう。
介護老人保健施設(老健)
入居者 | ・要介護1〜要介護5 |
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特徴 | ・医療法人や社会福祉法人が運営する老人保健施設 ・病院と自宅の中間施設 ・自宅復帰を目標に看護・介護・リハビリをおこなう ・入所期間は原則90日(実際は半年〜1年程度になることが多い) ・看護師が24時間常駐 |
介護老人保健施設は医療法人や社会福祉法人が運営する施設で、入所者が自宅に帰れるよう看護・介護・リハビリテーションを集中的におこなっています。
そのためほかの施設に比べ看護師や作業療法士などの医療専門職が多く、1日のプログラムもリハビリが中心となります。レクリエーションは相対的に少なくなりますが、つらいリハビリに向き合う入所者を心身共にサポートしなくてはなりません。
また自宅復帰=退所が目標の施設のため、終身入居が前提のほかの施設と比較して入所者が短期間で入れ替わります。入所者が回復して無事に退所日を迎える姿にやりがいや達成感を感じたい方や環境の変化を柔軟に受け入れられる方に向いているでしょう。
主に自立している方が入居
住宅型有料老人ホーム
入居者 | ・自立〜要介護3程度 ※医療・看護体制によっては要介護5まで受け入れ可能 |
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特徴 | ・主に民間企業が運営する施設 ・居室となる個室に加え、リビングダイニング、機能訓練室、理美容室などの設備が整っている ・施設側は見守り、生活援助、緊急時の対応をおこなう ・身体介護や介護予防、リハビリなどについては、入居者が必要に応じて施設外の介護事業者と契約 |
住宅型有料老人ホームは主に民間企業が運営する施設で、自立している方や軽中度の要介護(要支援)認定を受けている方が入居しています。
介護職員は生活の援助やレクリエーションの企画・運営を中心におこない、介護が必要なときは利用者自身が外部の訪問・通所介護サービスを契約して利用するのが原則です。ただし、介護付き有料老人ホームと同等のサービスを提供する施設も増えており、介護系の資格や経験を必須とする求人も多いため、応募要件をよく確認しましょう。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
入居者 | ・自立〜要介護3程度 ※医療・看護体制によっては要介護5まで受け入れ可能 |
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特徴 | ・主に民間企業が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅 ・日中は医療・介護の有資格者が常駐 ・夜間は主に緊急通報システムなどで対応 ・看護師の配置義務がない ・介護サービスについて 一般型…入居者が必要に応じて外部サービスを利用 介護型…施設職員が対応 |
サービス付き高齢者向け住宅は主に民間企業が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅で、自立している方や軽中度の要介護(要支援)認定を受けている方が入居しています。自立している方が多いため、提供するサービスは安否確認と生活援助が基本で、ほかの施設と比較して身体的な負担も少ないといわれています。
なお、サービス付き高齢者向け住宅には一般型と介護型があります。利用者に介護が必要になったとき、一般型の場合は利用者が個別に外部の介護サービスと契約しますが、介護型の場合は施設職員が介護サービスを提供します。介護型の場合は介護系の資格や経験が求められるケースが多いため、応募要件をよく確認しましょう。
軽費老人ホーム(ケアハウス)
入居者 | ・生活に不安のある高齢者 ・自立〜要支援2 ※ケアハウス(C型)の場合は要介護1〜要介護5 |
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特徴 | ・自治体や社会福祉法人が運営する老人福祉施設 ※ケアハウス(C型)の場合は民間企業も運営可能 ・見守りや外出時のサポートなど生活援助を中心に提供 ・提供サービスについて A型…食事の提供あり B型…食事の提供なし ケアハウス(C型)…さらに一般型と介護型に分かれる |
軽費老人ホームは自治体や社会福祉法人が運営する老人福祉施設で、生活に不安のある高齢者(特に75歳以上の後期高齢者)が入居しています。入居者は基本的に自立しているため、提供するサービスも見守りや外出時のサポートなど生活援助が中心となります。
軽費老人ホームにはA型、B型、ケアハウス(C型)の3種類がありますが、1990年以降A型・B型は新設されておらず、ケアハウス(C型)へ一本化する流れになっています。ケアハウスは常時介護が必要な方も受け入れており、サ高住同様一般型と介護型に分かれます。また民間企業が運営している施設もあるため、施設によって提供するサービスはまちまちです。介護系の資格や経験が必要とされるケースもありますので、応募要件をよく確認しましょう。
tips|生活相談員とは?
老人福祉施設(デイサービス、ショートステイ、特別養護老人ホーム、軽費老人ホームなど)や介護老人保健施設には生活相談員と呼ばれる人が在籍しています。生活相談員の主な仕事は各施設の窓口として利用者や家族の相談に乗り、入退所の手続きや施設内外の関係者との連絡・調整をおこなうことです。
時に苦情・クレーム対応など難しい立ち回りを求められることもあり、利用者、施設職員、自治体など介護サービスに関わるあらゆる立場の人に対する理解と配慮が必要です。そのため生活相談員として働くには、一定の実務経験や社会福祉士などの資格が求められることが一般的です。
2.介護の仕事に就くために資格は必要?
・介護の仕事には無資格でできる業務がたくさんあります
介護の仕事のなかでも次の業務は資格がなくてもおこなうことができます。
無資格でできる業務の例
・介護施設内における身体介護
訪問介護の場合は資格が必要ですが、介護施設内の場合は無資格でも身体介護をおこなうことができます。
・レクリエーションの企画・運営
ゲームやカラオケ、塗り絵、書道、映画観賞などの企画・準備・進行をおこないます。
・送迎業務
通所介護の場合、利用者の自宅まで送り迎えをおこないます。
・生活援助
食事の支度・配膳・片付け、日常的な掃除・洗濯、日用品や食材の購入、薬の受け取りなど。
・自費サービス
家族の食事の支度・配膳・片付け、大掃除、模様替え、嗜好品や贈答品の購入など。
・事務作業
介護給付費の請求、備品の発注、受電・来客対応など。
無資格でもこれだけの業務に携われますので、人手不足が深刻な介護業界では「無資格でも大助かり」という事業者が多く存在するのです。
・資格を取得することで、キャリアの選択肢が増えます
介護職のファーストステップともいわれる介護職員初任者研修を修了すると、仕事の選択肢がぐっと広がり、待遇改善も期待できます。
例えば、介護施設内でおこなう身体介護については資格不要ですが、訪問介護をおこなう場合は資格が必要です。そのため無資格で訪問介護をおこなう場合には有資格者と2人1組で行動することが一般的です。しかし、初任者研修を修了すれば単独で訪問できるようになりますので、任せてもらえる仕事も増えます。
初任者研修の修了に必要な期間は1〜3ヶ月ほど。10科目・130時間のカリキュラムを受講したうえで、修了試験に合格すると修了証が発行されます。働きながら資格取得を支援してくれる職場もありますので、求人を探すときに「資格取得支援あり」で検索してみましょう。
tips|介護に関する入門的研修、生活援助従事者研修とは?
介護現場の人手不足解消のために2018年度から導入されたのが介護に関する入門的研修と生活援助従事者研修です。
入門的研修は、介護に関する基礎的な知識を身につけることで、未経験者の不安を払拭することを目的に導入された研修です。カリキュラムは6科目21時間、実習や修了試験はなく所要期間も3日〜6日と、初任者研修よりハードルがかなり低くなっています。修了すると修了証が発行され就業支援を受けられますが、訪問介護員として働くことはできません。
生活援助従事者研修は、訪問介護で生活援助のみを希望する方(生活援助中心型)が一定数いることから導入された研修です。カリキュラムは9科目59時間と初任者研修の半分で、そのうち29時間は通信教育で場所を選ばずに受講できます。修了試験に合格すると修了証が発行され、訪問介護のうち生活援助業務に限り従事できるようになります。
採用時に重視される資格が初任者研修であることに変わりはありませんが、初任者研修よりハードルが低く、修了すると上位資格の共通科目の受講が免除されるというメリットもあります。未経験から介護の仕事を始めるうえで準備をしたい、生活援助業務中心に携わりたいという方は検討してみてはいかがでしょうか。
さらに介護業界で長期的にキャリアを形成したいなら、実務者研修の修了や介護福祉士の資格取得が考えられます。
実務者研修の修了に必要な期間は6〜8ヶ月ほど。20科目・450時間のカリキュラムを受講する必要があります(修了試験の有無はスクールによって異なります)。初任者研修を修了していれば共通科目(9科目・130時間)の受講が免除されます。
実務者研修を修了すればサービス提供責任者の仕事に就くことができます。実務者研修修了に加え、3年以上の実務経験があれば介護福祉士の受験資格を得られます。介護関係の資格のなかで唯一の国家資格である介護福祉士になれば、ケアマネジャーへの道も開けます。
tips|サービス提供責任者(サ責)、ケアマネジャー(介護支援専門員)とは?
サービス提供責任者は訪問介護事業所において利用者と提供者(訪問介護員)をつなぎ、訪問介護計画書を作成することが主な仕事です。サービス提供開始後も定期的なモニタリングをおこない、訪問介護員に対して必要に応じて支援・指導をおこなう立場にあります。そのため「訪問介護員として働きながら実務者研修を修了し、サ責を目指す」というキャリアパスが一般的です。
ケアマネジャーは要介護認定の調査や申請代行をおこなったり、介護サービス計画(ケアプラン)を作成したりすることが主な仕事です。いずれの業務も介護サービスを利用するために欠かせないものであり、ケアマネジャーは介護保険制度の中核を担う職種と言えます。ケアマネジャーに必要な介護福祉士の受験資格を得るためににはいくつかのルートがありますが「介護職員として働きながら(3年以上)実務者研修を修了し、介護福祉士合格を目指す」のが一般的です。
サービス提供責任者やケアマネジャーになると管理・書類業務が増え、介護現場からは遠のくことになります。介護の仕事が好きで現場でキャリアを積みたい場合は、管理職を目指すというキャリアパスも考えられます。
管理職になるための要件は施設によって異なりますが、異業界でのマネジメント経験が評価されるケースもあるようです。
3.自分に合った介護の仕事を見つけよう!
この記事で介護事業や施設の大まかな特徴がつかめたら、実際に求人を検索してイメージを膨らませてみてください。介護の仕事が未経験の方はとくに、施設見学をおこなうことをおすすめします。利用者の1日の過ごし方、仕事の流れ、働き方、求められるスキルなどを確認するとともに、施設の雰囲気をつかんでおきましょう。不安な点があれば見学や面接の際に正直に伝えることで入職後のミスマッチを防げます。
団塊の世代が75歳を迎える2025年までに245万人の介護人材が必要と言われていますが、現場は慢性的に人手不足の状態が続いています(参考:厚生労働省)。そのため多くの介護事業者が無資格・未経験の方にも広く門戸を開き、キャリアアップのための資格取得支援にも力を入れています。
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