密着した人
ケアマネジャー 高橋あゆみさん
特別養護老人ホームの介護職、病院の医療ソーシャルワーカーを経てケアマネジャー資格を取得。病院のケアマネジャーとして勤務したのち、東京都足立区で居宅介護支援を専門におこなう「ケアプランハウス ほの花」を立ち上げる。ケアマネジャー歴16年。2児の母。
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【8:50】出勤

ケアプランハウスほの花の始業時間は9時。事務所を開けたら植物に水やりをします。「仕事だけしていると息が詰まるじゃないですか。楽しみながら仕事をしたいし、『あそこのケアマネさんのところいっぱい花が咲いてるよ』ってネタになりますから」。通りを歩く人にも植物を楽しんでもらいたいと話します。
【9:00】朝のミーティング

9時になったら朝のミーティングをおこない、一日の作業を確認します。この日のスケジュールは午前中に3件訪問、午後に1件訪問したあと事務作業をする予定です。

ミーティング中に電話が鳴りました。利用者から「ヘルパーに換気扇の掃除を依頼したい」という内容です。しかし同じ敷地内に家族が住んでいるため、介護保険の適用範囲外であることを丁寧に説明します。

「介護サービスを使うことで自立支援につながるかを念頭に置いています」「その人にとってどんなことが課題なのか、なるべく自立につながる方法をご紹介しているんです」高橋さんはこう語ります。
【10:00】1件目の訪問へ

近場の訪問は徒歩で、遠方であれば自転車や自動車で移動します。1件目の訪問先は事務所から徒歩5分程度のお宅なので歩いて向かいます。

訪問時に確認する主な内容はこちら。
- ケアプランで立てた目標に向けて計画を実行できているか
- ケアプランどおりにサービスが提供されているか
- されていない場合の理由
結果に応じてケアプランを見直すこともあります。
以前おこなったアドバイスは、エアコンを使って室内を涼しくすること、水分を補給することの2つ。今回の訪問では実践・改善できたかを確認しました。
【11:00】2件目、3件目の訪問へ

事務所に戻ったら車に乗り、2件目と3件目の訪問に向かいます。2件目の訪問では利用者の近況と、地域避難行動計画の確認をしました。


3件目は一人暮らしの利用者です。訪問しているヘルパーはお昼ご飯を買いに外出していたため、利用者とお話しました。
「ヘルパーさんの工夫がすごいんです。お薬を自分で飲めない人にどうやったら飲んでもらえるか、置き場所を変えてみたり。食べ物なんかも『いついつ食べてください』ってメモを貼り付けたり。食べる意欲がない方にも目で見ても、感覚でもわかりやすいように工夫しているんです」
訪問先で気づいたちょっとした工夫を別の事業所のヘルパーにも共有します。ケアマネジャーには情報のハブとしての役割があると言います。
【12:15】お昼休憩

午前中の訪問を終えたらお昼休憩です。高橋さんは中学生と小学生の子どもを持つお母さんで、この日は8月の夏休み真っ只中。子どもたちのお昼ご飯を作りに一度自宅に戻りました。メニューは冷やし中華だったそうです。
【13:20】4件目の訪問へ

4件目の訪問先は電動自転車で向かいます。

健康状態やデイサービスの利用状況などの近況をヒアリングします。このお宅は10年以上のお付き合いのある利用者。終始和やかにお話ししました。
【14:15】事務作業

その日訪問した利用者の状況や話したことを各サービス事業所へ報告し、支援経過の記入などをおこないます。
ほかにも、新規で受け入れた利用者のサービス調整や、他事業所から引き継いだケアプランの確認、翌月の予定を立てるなどさまざまな業務をこなします。

事務作業や訪問のペースはケアマネジャーによってさまざま。高橋さんは比較的早い時間に訪問し、その日聞いてきたことを事業所にフィードバックする先手の方針だそう。余裕を持って仕事をすることで新規の受け入れもしやすくなると言います。
【17:00】終業前のミーティングをして退勤

この日の業務を報告し、翌日以降の予定を確認したら業務終了です。お疲れさまでした!
「いま目の前にあることを一生懸命やる」
密着の合間にケアマネジャーになったきっかけや今後の目標を聞きました。

高橋さんは大学を卒業後、名古屋市内の特別養護老人ホームに就職して3年、その後同市内の病院で医療ソーシャルワーカーとして5年働きました。その間にケアマネジャーの資格を取得し、30歳からケアマネジャーとして活動しています。
その後旦那さんの転勤で東京へ。妊娠・出産したあと居宅介護の会社に就職するも、こんな思いが芽生えました。
「自分の理想とする仕事をするには自分でやるしかない」
思い立ったが吉日、会社立ち上げを決意してから2ヶ月半でケアプランハウスほの花はスタートしました。設立当初は地域包括支援センターに挨拶するなどして仕事を紹介してもらいました。
「ケアマネジャーって営業も大事だと言われるけど、一つひとつの仕事に対して誠実に、一生懸命対応させていただくことが大切。それが今につながっています」
丁寧な仕事は評価される。うまくいかないことがあって眠れなくなることもあるけれど、そのときは上手に忘れるのがコツだと言います。
今後の目標を聞くと、少し考えてこう答えました。
「いま目の前にあることを一生懸命やる、それだけです。人生なにがあるか想像つかないからおもしろいって思うんです」
高橋さんの目はどこか楽しげで、キラキラと輝いて見えました。
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