男女雇用機会均等法とは
男女が等しく就労機会を得るために作られた法律
男女雇用機会均等法(正式名称:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)は、雇用や労働に際して性別による差別をなくすことを目的に1985年に成立した法律です。事業主には、採用や昇進など雇用管理の各ステージにおける差別をおこなうことを禁止しています。また、従業員が働くうえで就業に困難をきたすハラスメントについての理解を促し、相談に応じるなどの職場環境の整備が求められています。
成立までのあらまし
男女雇用機会均等法の前身に勤労婦人福祉法がありましたが、女性がおこなう業務は単純作業や補助的な内容に限定されており、男女が等しく就労の機会を得ることは難しい状況でした。また、対象が女性のみだったことも問題視されていました。
こうした課題解決に加え、高度経済成長期における女性の社会進出や労働者の増加、国際的な男女機会均等の動きが加速したことなどが背景となり、男女雇用機会均等法が成立しました。
改正年ごとのポイント
男女雇用機会均等法は3回の改定がおこなわれました。それぞれのポイントは次のとおりです。
![男女雇用機会均等法の改正ポイント](https://cdn.job-medley.com/tips/wp-content/uploads/2022/10/%E7%94%B7%E5%A5%B3%E9%9B%87%E7%94%A8%E6%A9%9F%E4%BC%9A%E5%9D%87%E7%AD%89%E6%B3%95%E3%81%AE%E6%94%B9%E6%AD%A3%E3%83%9B%E3%82%9A%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88-1-706x1024.png)
*母性健康管理措置:妊娠・出産を経ても安心して働けるよう、事業主は健康診査などを就業時間内に受ける機会を設けるほか、医師からの指導内容を守ることが義務付けられている。例として、短時間勤務への変更や勤務の軽減などがある。
男女雇用機会均等法で禁止していることと罰則
男女雇用機会均等法で禁止していることは、主に次の4つです。
1.性別を理由にした差別
募集・採用・配置など雇用管理のあらゆる場面において、性別を理由にした差別は禁止されています。
![性別を理由とした差別の例](https://cdn.job-medley.com/tips/wp-content/uploads/2022/10/%E6%80%A7%E5%88%A5%E3%82%92%E7%90%86%E7%94%B1%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E5%B7%AE%E5%88%A5%E3%81%AE%E4%BE%8B.png)
2.間接差別
募集・採用にあたって性別以外の理由が掲げられ、結果的にどちらかの性別に不利な状況をもたらすことを間接差別といいます。
![間接差別の例](https://cdn.job-medley.com/tips/wp-content/uploads/2022/10/%E9%96%93%E6%8E%A5%E5%B7%AE%E5%88%A5%E3%81%AE%E4%BE%8B.png)
3.婚姻、妊娠、出産等を理由にした差別
女性労働者が結婚や妊娠・出産したことを理由に、解雇や配置換えなどをおこなうことを禁止しています。
![婚姻、妊娠、出産を理由にした差別の例](https://cdn.job-medley.com/tips/wp-content/uploads/2022/10/%E5%A9%9A%E5%A7%BB%E3%80%81%E5%A6%8A%E5%A8%A0%E3%80%81%E5%87%BA%E7%94%A3%E3%82%92%E7%90%86%E7%94%B1%E3%81%AB%E3%81%97%E3%81%9F%E5%B7%AE%E5%88%A5%E3%81%AE%E4%BE%8B.png)
4.ハラスメント
事業主、従業員ともに職場におけるハラスメントについて理解し、注意を払うことが求められています。
![ハラスメントの例](https://cdn.job-medley.com/tips/wp-content/uploads/2022/10/%E3%83%8F%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E3%81%AE%E4%BE%8B-1.png)
5.罰則規定
男女雇用機会均等法に定められた禁止事項に反した事業主には罰則が課されます。
![罰則](https://cdn.job-medley.com/tips/wp-content/uploads/2022/10/%E7%BD%B0%E5%89%87-1-1024x645.png)
医療・福祉分野における現状
女性の割合が多い医療・福祉分野
男女の雇用格差をなくすために積極的に女性を登用したり優遇したりすることを認めたことで、女性就業者数や管理職に占める女性の割合も増加傾向にあります。
医療・福祉の分野を見てみると、女性の就労者数は全産業の中でも最多となっています。
![産業別就労者数](https://cdn.job-medley.com/tips/wp-content/uploads/2022/10/%E7%94%A3%E6%A5%AD%E5%88%A5%E5%B0%B1%E5%8A%B4%E8%80%85%E6%95%B0.png)
その一方で、これまで女性ばかりだった看護師・保育士においては男性従業者の割合が年々増加しています。医療・福祉業界においても、雇用機会における男女の格差は少しずつ縮小傾向にあるようです。
妊娠・出産・育児を理由とする離職はいまだ多い
女性の割合が多い医療・福祉分野ですが、管理業務に就く人は男性のほうが多く、離職理由に結婚・妊娠・出産・育児などを挙げている女性が多いのも現状です。
男女雇用機会均等法では、妊娠中や出産後1年以内の女性労働者に対し勤務時間を調整するなどの措置が求められています(⺟性健康管理措置)。しかし、医療・福祉分野で立ち仕事や夜勤、シフト制勤務などにより、就労の継続が難しいと判断し離職につながるケースもあると考えられます。
求人における例外
性別による差別となりうる内容の求人は原則禁止されています。しかし業務上、どちらか一方の性別である必要性が認められる場合には、例外として性別を指定できることがあります。
例えば介護職/ヘルパーの求人で入浴や排泄介助などをおこなう場合は、同性による介助を希望する人のために、性別を指定した募集要項が認められています。
介護職/ヘルパーの求人
仕事内容:在宅での生活を支えるために必要な生活支援等
・生活必需品の買い物、掃除等
・身体介護(家事介助、入浴介助、排泄介助等)
・移動支援(余暇支援、社会参加)
※男性利用者の入浴介助、排泄介助があるため男性限定の求人となります(男女雇用機会均等法除外求人)
事業主・従業員ともに働く環境への配慮が必要
男女の就労状況や時代の変化に即して改正を重ねてきた男女雇用機会均等法。過去20年間における就労者数を見ると男性は横ばいもしくは微減、女性は300万人ほど増えています。一方で、少子高齢化の進行により生産年齢人口は1995年をピークに減少傾向です。慢性的に人手不足である医療・福祉の場では、高齢化によるさらなる人手不足が予想されます。
人材確保のためには、妊娠や出産を経ても働き続けられる制度を充実させ、ハラスメントなどによる離職を防ぐことが必要です。事業主側には、男女ともに採用や昇進など雇用管理のあらゆるステージで差別なく働ける環境整備が求められています。また、従業員間でも相手への配慮を欠いた発言や行動がハラスメントにつながる恐れがあることを理解する必要があります。
参考
- 厚生労働省|男女雇用機会均等法のあらまし
- 厚生労働省|雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のために
- 厚生労働省|男女雇用機会均等法の変遷
- e-Gov|雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
- 内閣府男女共同参画局|男女共同参画白書 平成29年版
- 厚生労働省|介護労働の現状
- 厚生労働省|看護職員就業状況等実態調査結果