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密着した人
看護師 中村さん
商業高校を卒業後、准看護師として一般病院に入職。働きながら夜間学校に通い、看護師免許を取得。訪問看護や診療所勤務を経て、小児未経験で重症心身障がい児の児童発達支援・放課後等デイサービスを運営するFLAP YARDに非常勤看護師として入職。現在6年目。
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【07:40】出勤・申し送り
敷地内に、児童発達支援と放課後等デイサービスが併設されているFLAP YARD。児童発達支援は小学校入学前の障がい児が利用できる療育施設であるのに対し、放課後等デイサービスは小学校から高校までの障がい児を対象としています。
どちらに勤務するかはシフトによって決まるそうです。取材した日は児童発達支援の担当日で、8時から17時までの勤務でした。
出勤後はこの日担当する児童の確認と申し送りをします。中村さん以外に常勤の児童指導員、介護福祉士が出勤しており、前回の通所の振り返りや、最近の様子、その日の予定を共有します。
この日中村さんは、気管軟化症*があり呼吸器の装着と経管栄養が必要な児童を担当します。申し送りでは、公園に行く予定を共有しました。
【08:00】送迎へ出発
施設がある足立区内だけでなく、車で送迎可能な距離であれば児童を受け入れています。この日は車で30分ほどの区外在住の児童2人を迎えに行きます。
車中では施設から持ってきたおもちゃやボールで遊びます。
【09:55】施設へ戻る
児童一人に職員一人がつく個別対応をとっているため、迎えに行った2人のうち1人の児童は別の職員に引き継ぎます。
【10:00】児童への水分補給や医療的ケア
施設に到着後は、トイレ誘導や手洗い、胃ろうによる経管栄養で流動食を注入します。障がいの種類はさまざまで、喀痰吸引(かくたんきゅういん)*や経管栄養*など看護師にしかおこなえない医療的ケアが発生したら、中村さんが処置をします。
【10:30】散歩
医療的ケアが終わったら公園に向かいます。この日は風が強かったためかほかに児童はおらず、すべり台とブランコで遊んでから隣にある児童館に行きました。
中村さん:いま(この日担当した児童は)3歳なんですけれど、今後の進学を念頭におくと、FLAP YARD以外でほかの児童と触れ合う機会を増やしていきたいなと思っています。なので、積極的に公園や児童館に出かけるようにしているんですよ。
【11:45】施設へ戻る
施設に戻ってきたら鼻水を拭いたり、加湿したりします。
【12:00】昼休憩
1時間別の職員に担当児童を見てもらい、昼休憩に入ります。お弁当を持参している中村さん。温めてからいただきます。
【13:00】午後の業務開始
午後最初の業務は、児童の食事です。一日に決められた量を数回に分けて栄養を注入します。
食事後は、お絵描きや体を動かして遊びます。
遊んでいる間でも、別の児童の喀痰吸引が必要になったら処置をおこないます。
【14:30】帰宅の準備
そろそろ児童の帰宅時間です。走行中に呼吸器の回路がバギーからはみ出してしまわないよう注意して載せます。同時に児童の持ち物も忘れていないかチェックします。
帰り際、児童の消化状態をチェックする中村さん。普段より胃の中に残っているものが多く、急遽保護者へ連絡します。
中村さん:いつもは消化して空っぽの状態なので水分を入れてから帰宅となるのですが、今日は胃内残存物が通常より明らかに多い状態です。親御さんへ確認したところ、帰宅前の水分補給は不要とのことだったのでこのまま帰ります。
【14:40】送迎
朝と同じ児童2人を乗せて自宅へ送り届けます。児童の様子を保護者に伝えるため、車の中で申し送りをしてから出発します。
2人ともたくさん遊んで疲れたのか、車中ではぐっすり眠ってしまいました。睡眠中も呼吸器が外れていないか、普段と異なる様子はないかなど見守ります。
【16:30】施設へ戻る
施設に戻ったあとは、療育室の片付けをします。
【16:50】記録・申し送り
掃除が終わったら、遊んだ場所や内容、食事の量と回数、気になった点や今後やってみたいこと、課題などを記録します。
朝と同じように申し送りをおこない、児童の様子や今後の課題を共有します。
【17:00】退勤
本日の業務は終了です。お疲れさまでした!
【インタビュー】同じことをやる日は一日もない
病院、診療所、訪問看護とさまざまな施設で経験を積んできた中村さん。小児未経験ながら重症心身障がい児の通所施設で働き始めたきっかけは学生時代にありました。
看護学校の実習中、障がいがある人と接する機会があり「いつか障がいを持つ人のケアに携わりたい」という夢を抱いたそうです。しかし、結婚・出産・育児とライフイベントもあり、なかなか踏み出せなかったと言います。それでも頭の片隅には、障がい者支援への思いが常にあったという中村さん。育児も落ち着いて診療所に勤務していたとき、FLAP YARDに出会い迷わず応募しました。
中村さん:入職前はどうやって抱っこすればいいのかな、注意事項も多いのかななど不安もありました。看護師は「病気を先に診ないと」という先入観がどうしてもあると思うんです。でも、訪問看護を経験していたこともあり「大人も子どもも一緒なんだ。病気を治すことが必ずしも最優先ではなく、その人が何をしたいか、本人と家族をどう支えられるかが大切なんだ」と入職後すぐに気持ちを切り替えられました。
児童発達支援では看護師以外にも介護福祉士、介護職員初任者研修修了者、保育士などが働いています。病院とは異なる多職種との連携では得ることが大きいと話す中村さん。
中村さん:わからないことがあれば、周りにいる多職種の方々にすぐ聞ける環境です。職種が違うことで観点も異なり、学ぶことが多いです。出勤して同じことをやる日は一日もなく、吸収することのほうが多いのが魅力です。
これから児童発達支援にチャレンジされる方は、経験に関係なく子どもと一緒に遊ぶ感覚で飛び込んできてほしいですね。遊びのなかから学ぶことが多いので、スキルはあとからついてきますよ。
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