目次
1.介護助手とは
介護職員をサポートする人
介護助手は介護福祉士などのほかの介護職員が専門性の高い業務に専念できるよう、業務の一部をサポートする職種です。資格は必要とされず、介護未経験者でも業務につくことができます。施設によっては「介護補助」や「介護サポーター」と呼んでいるところもあります。
食事介助や排泄介助、入浴介助など利用者の身体に触れる業務をおこなうためには、介護職員初任者研修修了以上の資格が必要なため、介護助手は周辺業務を担います。具体的には、ベッドメイキングや食事の配膳、清掃や送迎など利用者の身体に触れない業務全般をおこないます。
全国老人保健施設協会がおこなった調査によると、3,591施設*中1,369施設で介護助手を導入しており、全体の63.1%という結果でした。
人材確保を目的として導入が進められている
介護職員の数は約214万9,000人(2021年時点)に達し、年々増加しています。しかし、厚生労働省では今後必要となる介護職員数を、2025年度末までに約243万人、2040年度末までに約280万人と予測し、いまだ充足しているとは言えない状況です。
今後も必要数の増加が見込まれる介護分野での人手不足を解消するため、国はいくつかの対策を打ち出しています。

2022年度予算案では「介護助手等普及推進事業」が盛り込まれ、各都道府県に介護助手普及推進員を配置することや、周知活動の実施強化が求められています。介護助手の担い手として、高齢者や無資格・未経験者など多様な人材の就業が期待されています。
介護福祉士・介護職員との違い
介護福祉士と介護助手との違いは資格の有無です。介護福祉士になるためには、年に1回実施される介護福祉士国家試験に合格して資格登録する必要があります。
介護福祉士の仕事内容は、利用者に対する身体介助、生活援助、社会活動支援、利用者家族を対象にした相談・助言、現場介護スタッフに対するマネジメントと多岐にわたります。
>介護福祉士の詳しい情報はこちらの記事をチェック!
介護福祉士とは? 資格取得方法や勤務先、仕事内容、年収について解説
また、介護施設では介護福祉士などの資格を持たない介護職員も活躍しています。介護助手との大きな違いは、身体介護をおこなうかどうかです。訪問介護を除く介護施設では、無資格でも身体介護をおこなえるため、身体介護をする場合は一般的な介護職員、しない場合は介護助手と分けられます。
2.介護助手になるには
介護助手になるために資格や研修の受講は必要ありません。したがって、応募したい求人にある条件を満たせば介護助手になれます。
自治体によっては、介護の基本が学べる講座を設けているところや、具体的な業務内容がイメージできるよう事業主と就労を目指す人に向けて手引きを用意しているところもあります。
また、ジョブメドレー内にある介護助手の求人を見ると、入社後に介護技術向上のための研修を設けていたり、介護職員初任者研修の受講料を会社負担としていたりとスキルアップが望めるところもあります。
3.介護助手の仕事内容
介護助手の業務は、利用者に対しておこなうものと介護職員のサポート業務に分けられます。
利用者に対する業務
介護助手はトイレ介助や着替え、移動介助など直接身体に触れる業務はできませんが、声かけや入浴・着替えの準備、施設内での見守り、話し相手になるなどの業務が可能です。利用者に対する主な業務は次のとおりです。

介護職員のサポート業務
介護職員がおこなっている業務の一部を、介護助手が担うことで業務の効率化と生産性を向上させることができます。「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」においても、介護現場における業務の分担や移管(タスクシフト・シェア)が掲げられています。

介護助手の一日
早番、日勤、遅番など勤務形態にはいくつか種類があります。以下に、日勤の例を挙げます。

介護助手の休日
介護施設は施設形態によって休みが異なります。デイサービスなどの通所施設の場合は平日1日を定休にしているところや、日曜・年末年始は休みとしているところがあります。入居施設の場合、土日祝日も運営しているためシフト制による週休2日が一般的です。
家庭の事情や希望に応じて休みを調整してもらえるところや、月に2〜3回程度土日祝日の休みが取得できるところなど勤務先によってさまざまです。また、介護助手はパートやアルバイトなど短時間・短期間勤務をしている人も多いため、都合に合わせて勤務日程を調整しやすいところも特徴です。
4.介護助手の勤務先
介護助手が活躍する職場は多岐にわたります。主な施設と特徴を紹介します。
入所施設
介護老人保健施設(老健)
在宅復帰を目指し、医療サービスやリハビリテーション(以下、リハビリ)を必要とする要介護者が入所する施設で、病院と自宅の中間的な位置付けです。入居者1人につき週2回以上のリハビリをおこなうことが規定で定められており、医療スタッフや機能訓練指導員と連携した身体機能の回復を意識したサービス提供をします。
>老健について詳しい記事はこちら
特別養護老人ホーム(特養)
要介護度3以上の人が入所できる施設で、主に社会福祉法人や自治体が運営しています。国からの助成金や税金面での優遇があるため、入居者の費用負担が軽く入居待ちが多いです。中長期的に生活する人が多く、看取りにも対応しています。レクリエーション(以下、レク)やイベントが多いのも特徴です。
>特養について詳しい記事はこちら
有料老人ホーム
高齢者が入居し生活支援や健康管理、介護を受けられる施設で、多くが民間企業によって運営されています。税金面での優遇はないため特別養護老人ホームに比べて入居費が高い傾向にありますが、施設ごとに特色のあるアクティビティやイベントの実施など、サービス面が充実している点も特徴です。
>有料老人ホームについて詳しい記事はこちら
サービス付き高齢者向け住宅
要支援・要介護認定を受けている人が入居できる住宅施設で、サ高住とも呼ばれています。身体介護や生活支援は最低限提供すべきサービスには含まれず、主に入居者の状況把握と生活相談をおこないます。近年、要介護認定を受けている人や認知症を患っている人が増えていることから、食事や入浴などの追加サービスを提供しているところも多いです。
>サ高住について詳しい記事はこちら
グループホーム
認知症のある人や65歳以上の人、要支援2または要介護1〜5までの認定を受けている人が利用できる入居施設です。5〜9人程度の少人数でグループを組み共同生活を送ります。入居者が自力で日常生活を送れるよう、調理や掃除などをサポートします。
>グループホームについて詳しい記事はこちら
通所施設
ショートステイ
普段自宅で介護を受けている高齢者が、生活支援や身体介護、リハビリなどを受けるために通う施設です。1ヶ月に連続して最大30日まで利用できるショートステイ以外にも、30日を超えて利用できるロングステイもあります。食事・入浴・排泄介助などの生活介護を提供しているところもあれば、医療的管理やケアを提供しているところもあります。
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ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)とは? 仕事内容、給与、施設の種類・特徴、利用状況などをまとめました
デイサービス(通所介護)
日帰りで食事や入浴、機能訓練などを提供する施設です。要介護1〜5の認定を受けた人が対象です。認知症や難病、がん末期の患者、重度の要介護者など利用者の状態に応じていくつか種類があります。
>デイサービスについて詳しい記事はこちら
5.介護助手の給料
医療介護福祉の求人サイトジョブメドレーでは、介護助手の求人を扱っています。実際にジョブメドレーに掲載されている求人をいくつか紹介します。
介護助手の求人例
- 施設形態:デイサービス
- 勤務地:東京都
- 雇用形態:パート・アルバイト
- 給与:時給1,072円 〜
- 業務内容:用務員・介護助手兼ドライバー
- 選考内容:書類選考、面接
介護助手の求人例
- 施設形態:介護老人保健施設
- 勤務地:富山県
- 雇用形態:正職員
- 給与:月給162,500円 〜 200,400円 賞与あり(年2回)
- 業務内容:居室の清掃、居室のごみ回収、食事の配膳下膳、入居者の入浴の手伝い、脱いだ服の片付け、バスタオルやタオルの後片付け など
- 選考内容:書類選考、面接
介護助手の求人例
- 施設形態:訪問介護ステーション特別養護老人ホーム
- 勤務地:静岡県
- 雇用形態:正職員
- 給与:月給 172,550円〜 〜 194,550円 賞与あり(年2回)
- 業務内容:食事の配膳や入浴の準備、生活援助(居室の掃除、リネン交換など)
- 選考内容:書類選考、面接
介護助手の求人例
- 施設形態:老人保健施設
- 勤務地:岡山県
- 雇用形態:パート・アルバイト
- 給与:時給892円 〜 1,100円
- 業務内容:掃除・洗濯、ベッドメイク、食事の配膳・下膳、利用者の見守り・話し相手、物品補充など
- 選考内容:書類選考、面接
介護助手の求人例
- 施設形態:特別養護老人ホーム
- 勤務地:岡山県
- 雇用形態:パート・アルバイト
- 給与:時給892円 賞与あり
- 業務内容:食事や水分の配膳、清掃、ベッドメイキング
- 選考内容:書類選考、面接
6.介護助手の将来性
介護を仕事にする人は増加傾向にあるものの、いまだ十分な数が確保されているとは言えません。進行する高齢化社会に対応するために、これまで介護職が担ってきた仕事を細分化し介護助手と分担することで介護の質向上や、幅広い人材の確保が期待されています。
引退後の元気な高齢者や介護未経験・無資格の人、外国人にとっても始めやすく、介護に携わる人のすそ野を広げることにもつながります。介護に関わる職場はさまざまな種類があるため、体力や家庭の事情などそれぞれの都合に合う職場も探しやすいと言えます。
気になる人はぜひ求人をチェックしてみてください。
参考
福岡県保健医療介護部高齢者地域包括ケア推進課介護人材確保対策室|介護助手の手引き