安藤なつ

1981年1月31日生まれ 東京都出身。2012年に相方カズレーザーと「メイプル超合金」を結成し、ツッコミを担当。2015年M-1グランプリ決勝進出後、バラエティーを中心に活躍。介護に携わっていた年数はボランティアを含めて20年以上。2023年、第35回介護福祉士国家試験に合格した。
受験票を捨ててしまって……
──まずは介護福祉士国家試験の合格おめでとうございます。合格を知ったときの気持ちを聞かせてください。
安藤さん:3月24日の金曜日にネット上で合格発表されたのですが、実は受験票を捨ててしまってその日は確認できなかったんです……。受験すること自体が人生でほぼ初めての体験だったもので、試験が終わったら受験票は必要ないと思い込んでしまって。なので、週明けの月曜日に合格通知が郵送されてくるまでわからなかったんです。
──そうだったんですか……月曜日に合格通知を手にしたときのお気持ちは?
めちゃくちゃテンションが上がりました! 試験後に問題を持ち帰って自己採点をしたのですが、「マークシートの解答欄がズレていたんじゃないか」「1点も取れていない科目があるんじゃないか*」と考えてしまって、もう不安で不安で。だからなおさらうれしかったです。
──相方のカズレーザーさんには報告しましたか?
いろいろバタバタしていたので2日くらい遅れてから報告したら「ニュースで見ました、良かったですね!」と言われました。
極秘で受験をした理由は?

──なぜ介護福祉士国家試験を受けようと思ったのですか?
過去に介護の仕事やボランティアの経験があるので、介護に関する仕事をいただくことがあるんです。そういった活動をするなかで、もっと知識をつけたほうがいいなと思っていたのと、私が資格を取ることで微力ながら介護業界の力になりたいという思いがあったんです。
超高齢社会で介護職員が足りていないと聞きますが、介護を必要とする人も介護職員も同じペースで増えているから、その差は一向に埋まりませんよね。私が「介護とはこういうものだよ」と広めることで、興味を持って仕事に就いてくれる人が少しでも増えたらという思いもありますし、「介護の世界には介護福祉士という資格があるんだ」と認識してもらいたいです。
──試験に挑むことを事前に公表せず、ラジオで突然合格を発表しましたよね。なぜ極秘で受験したんですか?
合格するか不安だったからです。落ちたら次の年に再挑戦するつもりだったのですが、一度落ちたのがバレた状態で勉強するのはしんどいなと思ったんです。それに、「勉強の調子はどうですか? 次は大丈夫そう?」とか、心配されるのが申し訳なくて秘密にしていました。
芸人仲間と共に勉強
──芸人の仕事との両立はさぞかし大変だったと思います。どのように勉強しましたか?
グループホームで働いているマッハスピード豪速球のさかまき。という芸人仲間がいるのですが、彼も同じタイミングで受験するというので一緒に勉強しました。

──ふたりで勉強していたんですね。苦手な科目はありましたか?
介護保険制度など、法律に関することはどうしても苦手でしたね。ケアをする現場で働いたことはあるのですが、「要介護度によってどんなサービスが受けられるか」のような知識は0から学ばなければいけなかったんです。
──どのように克服したのでしょうか?
さかまき。と過去問を解いたり問題を出し合ったり、間違えた問題はなぜ間違えたのかを調べて書いてをひたすら繰り返しましたね。ふたりで勉強したことがいい刺激になりましたし、モチベーションを保つことができました。
空き時間があるときは受験対策アプリを活用しながら過去問を解きました。

安藤さんが感じる介護の仕事のやりがい
──親戚の人が運営する障害者支援施設で仕事をされていました。どんなところにやりがいを感じますか?
いろいろありますよ。ケアをする側、される側という関係性で一緒に生活するなかで「自分でコレができるようになったね、やったね!」と、喜びを分かち合う瞬間や、利用者さんと通じ合えたときに楽しさを感じます。あとは「ありがとうね」と言われると純粋にうれしいですよ。
もちろん現場ではヒヤリ・ハット(重大な事故に直結する可能性がある出来事)もありますし、命を預かるプレッシャーは常に感じていました。でも、そういう部分を上回るくらい楽しいんですよ。
──芸人としてのスキルが介護の仕事に役立つことはありますか?
そうですね……観察力でしょうか。利用者さんは笑顔でこんなことを言ってるけど、本当は違うことを思っているんだろうなっていう、空気を読む力は芸人のスキルに近いと感じます。
利用者さんの本心を引き出すコミュニケーション力も役立っていますね。本心を引き出すには受け身で傾聴することが大切なんです。ガツガツいくと私が主導権を握ることになるので、打ち明けづらい人もいます。そういう場合はひたすら待ちますし、本音を聞けるとうれしくて仕方がありません。これも介護のやりがいですね。
介護職を選択肢のひとつにしてもらえたら

──今後の活動や目標について教えてください。
若い人たちと一緒に介護の現場を体験できる機会を設けられたらいいなと思っています。介護の仕事って実際に体験してみないと良さが伝わらないんです。どんな仕事もそうじゃないですか? ライターさんだってやってみないと自分に合っているのかわかりませんよね。
──確かにそのとおりです。
体験することで実態を知ってもらい、介護を仕事の選択肢のひとつとして考えてもらえたら嬉しいです。
それと、世間の人は介護の仕事に対して漠然と「大変なイメージ」を持っていると思うんですよ。どうすればネガティブなイメージを払拭して、介護の仕事に興味を持ってもらえるのかをずっと考えています。その点で何かしらの解決策を見つけられたらいいですね。
8年近く介護現場から離れているので、まずは実際に働いてみるのもいいなと思っています。それで介護日記でもつけようかな、みたいな。
──今後はどういった施設で働いてみたいですか?
まだ考えている段階ですが、いろんな施設を回ってみたいですね。職員さんがどんなチームワークで働いているのかなどを学べますし、どんなことで悩んでいるのかを直接聞けたらと思っています。
受け入れてもらえるかどうかはわかりませんが、私が職場に入ることでちょっとでも和んでくれたらうれしいです。
──ありがとうございました。最後に、全国の介護職員へ向けてひとことメッセージをいただけますか?
現場で働くのを大変だと感じている人もいると思います。でも、みなさんがいるから現場が回っていることに誇りを持って働いてほしいです。
専門資格を取って働いている人もいますよね。これまでの道のりはめちゃくちゃ大変だったと思います。その資格は頑張った証です。これからも一緒に頑張りましょう。