「めっちゃ理にかなってるやん!」レギュラーが介護に触れて見つけた“あるある探検隊”の可能性

リズムネタ「あるある探検隊」でブレイクしたお笑いコンビ・レギュラー。2人は今、介護職員初任者研修やレクリエーション介護士1級を取得し、全国の施設やオンラインで介護レクリエーションをおこなっています。現在の活動に至るまでの紆余曲折やこれまでの試行錯誤について聞きました。

「めっちゃ理にかなってるやん!」レギュラーが介護に触れて見つけた“あるある探検隊”の可能性

レギュラー

レギュラー

左=松本康太(まつもとこうた) 右= 西川晃啓(にしかわあきひろ)

1998年4月結成。2004年「あるある探検隊」でブレイク。2014年に介護職員初任者研修を修了。次いで健康ウオーキング指導士、レクリエーション介護士1級を取得。現在は介護関係の講演やイベントにも多数出演している。著書は『レギュラーの介護のこと知ってはります?』(竹書房)。2022年6月からはラジオ日本『ロイヤル介護相談室』に出演。専門家とともに介護の知識や高齢者が元気に暮らすコツを発信している。

芸人・レギュラー、介護に出会う

レギュラーの松本さんと西川さん

──レギュラーのお二人が介護業界で活動するようになったきっかけは何でしょう?

松本さん:次長課長の河本さんが岡山の施設にボランティアに行かれてはるんですが、僕たちの仕事が減っていた時期に「手伝ってくれへん?」と声をかけてくれたんです。それがきっかけですね。

西川さん:そのとき要介護度の高い人たちの前で(持ちネタの)あるある探検隊をやったんですけど、劇場みたいに盛り上がらなかったんです。河本さんに「すみませんでした、ちょっと掴めなかったです」て言ったら、「あの要介護度の高い人たちが車いすを叩いてリズム取ってはったで。俺なんか喋ってても反応ないから」と言ってくれて。そんで「時間があるんやったら介護の勉強してみたら?」とアドバイスをくれたんです。

松本さん:一発屋芸人って、めちゃくちゃ忙しい時期からスコーンっとスケジュールが空いてしまうことがあるんです。そういうときってみんな不安だから、みんないろんな資格を取るんですよ。髭男爵のひぐち君さんやったらワインエキスパート、ゆってぃさんはサッカーの審判、ムーディ勝山と天津・木村はロケバスの免許を取ったりとか。

僕たちも資格を取っておいたほうが精神的にラクやなと思って西川くんに相談したんです。地方営業で年配の方の前でネタをやらせてもらう機会が多かったし、「おじいちゃん、おばあちゃん」っていう言葉一つとっても気分を悪くする人がいるかもしれん。そういうのも勉強しとかへん?って。

レギュラーの松本康太さん

──松本さんが西川さんを誘ったんですね。

松本さん:
初めは僕1人で取ろうと思ったんですけど、河本さんが「介護の資格はレギュラーの2人のキャラに合ってる。吉本に介護の仕事が来るかもしれんから、コンビで取りに行ったほうがいいんじゃない?」てアドバイスしてくれたんです。それで西川くんに相談したら、いややいややの一点張り(笑)。

西川さん:初めはお笑いと介護を組み合わせるってイメージが湧かなくて(笑)。芸人としてふざけたことが言えなくなりそうというか、人をイジれなくなりそうな、清廉潔白でいなアカンみたいな印象があったんです。

──意図しない好感度アップに繋がるんじゃないか、という不安ですか?

西川さん:そうですね。資格を取ってどうなんねやろ? て、先が見えなかったというのもあります。当時、不祥事を起こしたタレントさんがボランティアで施設に行くというイメージがあったし「芸人なら芸をやっといたほうがええんとちゃう?」という話をしましたね。

レギュラーの西川晃啓さん

松本さん:そのあと話し合って、介護職員初任者研修を受けました。でも西川くんを誘った一番の理由は、僕がまったく勉強できないから。西川くんがいてくれたらいろいろ聞けるし、テスト勉強も教えてもらえるんでね。

笑いと介護のコラボは無理?

──介護職員初任者研修は介護の入門資格とも言われます。将来的に国家資格である介護福祉士を取るなどの目的があったんですか?

松本さん:それはないです。介護の勉強をしようと思ったのは、施設にいる“人生の先輩たち”にどんな話し方をしたら良いか学ぶためだったので。

軽い気持ちで研修しに行ったんですけど、朝から授業があるし「えらいところに来てしまった」というのが最初の印象でしたね。それと「これは笑いとコラボでけへんな」と感じました。

──え、それはなぜ?

松本さん:僕らが想像していたよりずっとデリケートだった。
認知症の方がいれば、要介護度のこともあるし、話していることを理解していただけないこともある。ならば自分たちのスキルアップのために勉強して資格を取ろうって思いました。

介護職員初任者研修について語るレギュラーの松本さんと西川さん

──2014年に無事、介護職員初任者研修を修了されました。その後はどんな活動をされたんですか?

西川さん:施設の方に「レクリエーションとしてお笑いをやりたいです」という話をしたんです。そしたら「何をやってくれるんですか? 利用者さんは何をすればいいですか?」と言われたので「ネタを見てくれれば良いんです」と返すと、「それはどんな効果があるんですか?」と言われて。施設でお笑いをやるハードルの高さに驚きましたね。

松本さん:そのときは分からなかったんですけど、レクリエーションって何分くらい・何をすると・どういう効果が期待できるっていうフォーマットがあるんです。後々レクリエーション介護士の勉強をして知りました。

──施設の方のそういった反応があったから、レクリエーション介護士の資格を取ろうと?

西川さん:いえ、そのときはまだレクリエーション介護士の存在を知らなかったんです。

松本さん:一方で、SNSで介護の資格を取ったことを発信すると、介護従事者の方から好意的な反応があったんです。吉本内では初任者研修を取ったことを知ってもらったので、介護イベントの司会とか、学生向けの勉強会にゲスト出演する営業をやらせてもらっていました。

西川さん:あとは知り合いの施設に出させてもらって、普段の漫才を施設でやっていました。そういう時期が長かったですね。

理にかなっていた「あるある探検隊」

レクリエーション介護士について語るレギュラーの松本さんと西川さん

──ではレクリエーション介護士の資格を取ったきっかけは何だったんでしょう。

西川さん:
レクリエーション介護士の資格を作ったBCC株式会社という会社からお誘いがあったんです。その会社ではレクリエーションを理論立てて教えているというので行ってみました。

松本さん:レクリエーションっていわゆる遊びやから、何を勉強すんねやろ? と思って行ってみたら、めちゃくちゃ楽しかったんです。2日間あったんですけど、ずっと休み時間みたいな感覚でしたね。学校の休み時間って絵を描いたり友達とふざけ合ったりして遊んでたじゃないですか。それが授業なんです。

みんなであだ名を付け合って、指された人があだ名を言うみたいな遊びとか。「あんたがたどこさ」をアレンジして「あんたがた気絶」にしてみたりね。

──気絶ネタ(笑)。本の中でも「気絶なんでやねん」というレクを紹介してますよね。

松本さん:
初期に考えた幻のゲームですね。西川くんが気絶したら一番近くにいる利用者さんに「なんでやねん!」てツッコんでもらうゲームです。ある施設で、西川くんが利用者さんの近くで気絶したんですけど、なんも反応がないっていう(笑)。何をやっているかも理解されていなかったんです。そういう苦い経験もしました。

──2017年にレクリエーション介護士2級を取って、2021年に1級を取られています。2級と1級は何が違うんですか?

松本さん:
1級は介護従事者の方に介護レクリエーションを教えられる資格なんです。精神状態とか、哲学とか、マズローの法則とか。A-PIEプロセスっていう思考メソッドを学んだり……相手がこう思っているからこういうレクをやるみたいな理論の勉強だったので、無茶苦茶難しかったです。

でも、これを学んだおかげで「あるある探検隊にはこんな効果があるのか! めっちゃ理にかなってるやん!」てなりましたね。

あるある探検隊の新しい発見をしたと語るレギュラーの松本さん

──効果を論理的に理解することで、あるある探検隊の新しい価値に気づいた?

松本さん:
そうです。上半身と下半身を動かすことで機能維持になりますし、「あるある」は昔のことを思い出すので回想法になるんです。これが脳のトレーニングにもなる。声を出しながら体を動かすのでデュアルタスクトレーニングにもなっています。行進の左右違う腕の動きはパラレルアクションっていうんです。

西川さん:こういう効果を理解したので、あるある探検隊を軸にレクリエーション介護をやっていくことにしたんです。

──思いもよらぬ効果が……まさに介護のための芸だったんですね。

松本さん:
たまたまですよ(笑)。昔からやっていたことが実は良かったということに気づけたんで、利用者さんに体験してもらおう、手拍子をしてもらおうなどアレンジをしています。

でも実は、コロナ禍でまだ施設には行けてないんです。最近はリモートでやらせていただいたり、新しいレクを考えたりしています。

利用者さんは先生、僕らは生徒

──芸人と介護のお仕事、コロナ禍の前はどれくらいの割合だったんですか?

松本さん:半々ぐらいでした。介護施設に行くのは月に2〜3回くらいでしたね。

西川さん:施設に行くより介護イベントや講演会で一般の方に向けて話をする機会の方が多かったです。

松本さん:
施設に行ったときこんな失敗があったとか、「西川くんが施設で怒鳴られて腰抜かしたんですよ〜!」とかね。

──え? 何かやらかしたんですか?

松本さん:西川くんが利用者さんに横から話しかけて驚かせてしまったんです。年を重ねると視界が狭くなるんですけど、これを視野狭窄って言うんですよ。だから、相手の横じゃなく前に立って顔を見て話すんです。

道を歩いていて、ぶつかってくるおじいちゃんおばあちゃんいるでしょ? あれって悪気があるんじゃないんですよ。視野狭窄で気配を感じるのが鈍くなっているんです。こんな話をするとわかりやすいし、伝わりやすいですよね。

西川さん:教えるっていえば、介護福祉士さんやケアマネジャーさんからコミュニケーションについて教えてくださいって依頼が多いです。「無口な利用者さんがレギュラーさんとは楽しそうに話をしているけど、なぜなんですか?」て。

コミュニケーションのコツを語るレギュラーの西川さん

──利用者と打ち解けるコツがあるんですか?

松本さん:あるんですよ。活動当初、後出しジャンケンっていうレクリエーションをやったんですよ。「ジャンケンに後出しで勝ってくださいね! 最初はグー……」ってやっても、誰もジャンケンしてくれなかったんです。

なんでかなぁと試行錯誤する中で、知らんうちに僕たちが先生みたいな立場になってんちゃうか? て思ったんです。突然外部の人が来て「これをやってくださいね!」っていうのは指導なんですよね。すると利用者さんたちは生徒になってしまう。

でもよーく考えると、利用者さんは人生の大先輩で、いろんな経験を経てここにいらっしゃる。その前で訳のわからん若造が「後出しジャンケンしましょう!」って言ってもそれは無理やな。じゃあまずは利用者さんに先生になってもらおうと考えたんです。

──具体的にどんなことをしてもらうんですか?

松本さん:例えば「この地域で何が有名なんですか?」って投げかける。すると「なんとか餅が有名」と返ってくるので、「なんとか餅が有名なんですか? まだ食べたことないんですよ! ……めちゃくちゃ苦い餅ですか?」「いやいや甘いやつ!」「それはあんこですか?」「いやいやカスタードです」「カスタードですか!」ていう、地元の方が先生で僕たちは生徒として学ぶ構図を作るんです。

西川さん:1人が喋り出すと皆さん入ってきてくれるんです。「あそこの餅は美味しくない、こっちのほうが美味しい」とか。

松本さん:そういうクッションを入れたら、みんな後出しジャンケンをやってくれるようになったんです。こういう構図を作ってからレクをおこなうようにしていますという話を介護関係の皆さんにしています。

西川さん:相手から情報やリアクションを引き出すというのが芸人の上手いところなんです。相手の発言に対して「えぇーほんまですかー!?」とか大きいリアクションを取ったり、喋ってもらいやすい空気作りをやっている感じですね。

オンラインレクで1万8,000人集客

──コロナ禍以降は人との接触が難しくなったと思います。活動はどうされているんですか?

西川さん:介護職員さん向けの講演やレクリエーションをオンラインでやる機会がありまして。

松本さん:先日オンラインで「オンラインお笑い介護レク」 っていうイベントをやったんです。そしたら約1,100施設、1万8,000人くらいの方に見ていただいたんです。

──すっご! 日本武道館どころじゃない。

松本さん:
面白かったですねー。スタッフの皆さんって施設に行くと気を張っているのがわかるんですけど、リモートやったらダラーんとしながら見ている人もいるし。

西川さん:寝ている人もいるから「○○施設の皆さん、起きてますかー!」とか言ったりね(笑)。

カメラの位置を語るレギュラーの松本さんと西川さん
「カメラがめっっっちゃ遠い施設もありました」

松本さん:1,000以上の施設さんと一気にコミュニケーションをとるために「大正・昭和・平成クイズ」というのを作ってやったんです。

西川さん:クイズを出して、それは大正なのか平成なのか、元号を紙に書いてもらうゲームです。例えば、カルピスの発売はいつでしょうか? とかね。正解は大正なんですけど、非常に盛り上がりました。

松本さん:利用者さんだけじゃなく、スタッフさんにも向けてやってるんです。スタッフさんがレクに参加するとすごく盛り上がるので、その施設の「あるある」を言っていただいたりしてね。皆さんを巻き込んで楽しむというのが芸人ならではの介護への向き合い方ですし、僕たちのモットーです。

全国介護施設ツアーをしたい

──介護の活動での展望はありますか?

西川さん:全国の施設に行って、全国の利用者さんと触れ合いたいです! 施設に行くとワザとボケてくる人もいらっしゃるんですよ。その土地の面白いキャラクターの人にお会いしたいです。

全国ツアーのポスターを作りたいと語るレギュラーの松本さん
「ツアーポスターも作りたいですね!」

松本さん:それで全国で聞くんですよ。「ここは何が有名なんですか?」って。とんでもない情報が出てくると思うんです、B級グルメだったり、その人しか知らない物だったり。

西川さん:先日のオンラインのイベントで2万人以上集まった結果を見てね、吉本の社員さんと「介護フェスみたいなことできたらいいね」みたいな話もしましたね。

松本さん:吉本には全国47都道府県に住んでいる「よしもと住みます芸人」がいて、中にはレクリエーション介護士の資格を持っている人や音楽をやる人もいるんでね。そういう芸人も巻き込んで、介護の勉強をする名目のお笑いライブができたらいいですね。

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