目次
1. 扶養とは
扶養(ふよう)とは、税制や社会保険上の経済的な援助を指すことが一般的です。本来は、「助け養うこと」「生活できるように世話すること」という意味を持ちます。
扶養に入るとは
「扶養に入る」などの表現は、税制や社会保険上での扶養が適用されている状態を指します。日本ではすべての国民に税金や社会保険料を納める義務がありますが、扶養する家族がいる場合、税金や保険料が軽減される仕組みがあります。
扶養者・被扶養者とは?
「扶養者」とは、扶養している(養っている)人のことを指します。一方、「被扶養者」とは、扶養されている(養われている)人のことです。
なお、被扶養者の呼び方は制度によっても異なり、社会保険上では「被扶養者」、税制上では「扶養親族」と呼びます。ただし日常的にはあまり厳密な使い分けはされていません。
扶養には「税制上」「社会保険上」の2種類がある
扶養には税制上の扶養と、社会保険上の扶養の2種類があります。

税制上の扶養は、扶養家族がいる場合、扶養する人(納税者)にかかる税金(住民税・所得税)が軽減される仕組みです。この仕組みを扶養控除といいます。
社会保険上の扶養は、社会保険(健康保険・国民年金)に加入している人の扶養に家族が入っても、追加の保険料がかからない仕組みになっています。
扶養の範囲内とは?
パートタイム勤務者などの間でよく聞く「扶養の範囲内で働く」という表現は、「扶養が適用される年収の範囲内で働く」という意味です。扶養には制度ごとの適用条件があり、被扶養者の年間収入の上限金額が定められています。

これらの金額を超えると、扶養の対象から外れてしまうため注意が必要です。年末が近づくと勤務日数を減らすパートの人が増えるのは、この上限を超えないよう収入を調整しているためです。世間でよく聞く「103万円の壁」なども、この上限額に由来しています。
それぞれの上限額の詳細についてまとめた記事はこちら
>年収103万・106万・130万・150万・201万の壁の違いとは?超えたらどうなるかも解説
2.扶養に入るメリット
扶養に入るメリットをまとめて確認しましょう。
扶養者の税金の負担が減る
子どもや親などの家族を扶養に入れると扶養控除が適用され、扶養する人(納税者)の支払う税金が軽減されるメリットがあります。扶養に入るには同一生計・16歳以上などの条件があり、扶養家族の人数分だけ控除が適用(税負担が軽減)されます。
なお、配偶者を扶養に入れる場合は、配偶者控除・配偶者特別控除が適用され、扶養控除と同様に扶養する人の税金を減らす効果があります。
保険料を負担せず健康保険に加入できる
健康保険制度において家族を扶養に入れると、扶養される家族分の保険料はかかりません。つまり、扶養者(健康保険の加入者)一人分の保険料で家族も保険に加入できます。
ただし注意点としては、健康保険には健康保険(健保)と国民健康保険(国保)の2種類があり、家族を扶養に入れられるのは健保のみとなります。会社員や公務員は健保に加入し、個人事業主や従業員5人未満の小規模事業者で働く従業員などは国保へ加入するのが一般的です。国保の場合は人数分の保険料を支払う必要があります。
保険料を負担せず年金に加入できる
年金制度において扶養に入れられる家族は配偶者のみです。配偶者は国民年金の扶養に入ると第3号被保険者となり、年金の保険料を負担することなく将来的な年金受給が可能になります。
各制度の扶養家族の適用条件はこちらの記事で詳しく解説しています
>扶養家族・扶養親族とは?扶養に入れる条件や手続きをわかりやすく解説
3.扶養に入るデメリット
家族を扶養に入れるには、メリットだけでなくデメリットも生じます。
収入に制限が発生する
家族を扶養に入れる条件として、扶養される人の年間収入(所得)の上限額が設定されています。その額を超えると扶養対象から外れ、税金や社会保険料を支払う義務が発生します。これにより、「本当はもっと働けるけれど、扶養の範囲内に収めるために仕事量をセーブしよう」という制限が生じ、世帯年収を大きく上げることが難しくなります。
将来受け取れる年金額が少ない
年金制度には大きく国民年金と厚生年金があり、会社員や公務員は両方に加入できますが、その加入者に扶養されている配偶者が入れるのは国民年金のみです。そのため、将来的に受け取れる年金額も減ってしまいます。
年金制度について詳しくはこちらで解説
>厚生年金とは? 国民年金との違いや受給資格、加入期間、いつまで払うのか解説
傷病手当金や出産手当金が支給されない
健康保険から支給される傷病手当金や出産手当金は、健康保険の加入者本人のみが対象です。そのため、扶養されている家族がケガや病気、出産をした場合には支給されません。
なお、支給金額や条件などは異なりますが、被扶養者でも受け取れる給付制度には、家族療養費や出産育児一時金などがあります。
4.扶養制度を理解して暮らしに活かそう
家族を扶養に入れることは、税制や社会保険上でお得になるメリットがある一方で、収入や働き方に制限が発生する、あるいは将来的に受け取れる年金額が減ってしまうといったデメリットもあります。
扶養に入ることが良いかどうかはその家庭の状況によります。各制度の条件やメリット・デメリットを理解することで、自分の家族がどうすれば良いか判断できるようになるでしょう。扶養についてより詳しく知りたい人は、この下の「あなたへのおすすめ記事」も参考にしてみてください。
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