介護福祉士国家試験のルール見直しを検討
厚生労働省は2025年度から、介護福祉士国家試験の「パート合格」の導入を検討しています。この制度は試験を3つのパートに分割し、各パートごとに合否を判定するものです。一部のパートに合格した場合、その結果は次回以降の試験でも2年間有効とされます。
介護福祉士国家試験の受験者数は減少の一途をたどり、2023年度の受験者数は7万4,595人と、2013年度のピーク時(およそ15万人)の半数以下となっています。また、介護福祉士国家試験は、実務経験3年に加えて所定の研修を受講する実務経験ルートでの受験者が8割以上を占めており、介護の現場で働きながら資格取得を目指すことに課題があるとの声が上がっていました。さらに、外国人介護人材については在留期間の制約から受験機会が限られているという問題も指摘されています。
このような背景から、受験者の負担を軽減することで資格取得を促進し、より多くの人材を確保するための制度の見直しが求められていました。
「パート合格」の詳細
厚生労働省が提案するパート合格の内容は以下のとおりです。
- 筆記試験の13科目を3つのパートに分割し、各パートごとに合否を判定する
- 初回に全パートを受験し、不合格だったパートのみ次回以降に再受験が可能
- 合格したパートはその後2年間にわたり受験しなくてもよい
- 合格基準は各パートの平均得点に基づいて設定される
- 各パートを構成する科目群のすべてにおいて得点すること
実施スケジュール
パート合格は2025年度(令和7年度)から導入される予定です。具体的なスケジュールは以下のとおりです。
- 2024年度(令和6年度): 制度の詳細を決定し、試験運営機関と調整をおこなう
- 2025年度(令和7年度): パート合格制度を導入し、第38回介護福祉士国家試験から適用
- 2026年度(令和8年度): パート合格者の再受験開始
関係団体からは賛否の声
7月12日、介護業界関係者を招いての検討会が開かれました。このなかで、全国老人保健施設協会は、「日本人・外国人に限らず、資格取得の機会を増やすことは賛成」と述べ、試験制度の変更を評価しました。全国老人福祉施設協議会も、「外国人介護職員にとって福音であり、歓迎すべきこと」と期待の声を寄せています。一方、日本介護福祉士会は、パート合格の導入による資格の社会的評価の低下を懸念し、資格取得方法の一元化を早期に実現すべきだと主張しました。
各団体が指摘するように、パート合格の導入には多くのメリットとデメリットが存在します。その一部を抜粋します。
メリット
- 一度にすべての科目に合格する必要がなくなるため、受験者の心理的・物理的負担が軽減される
- 自分のペースで受験に挑めるため、働きながら資格取得がしやすくなる
- 資格取得者が増えることで介護業界の人材不足が緩和される
- 外国人介護人材も資格取得しやすくなることで外国人人材の活用促進につながる
デメリット
- 広範な知識やスキルを一体的に習得する機会が減るため、専門性が低下する可能性がある
- 十分な知識や技術がないまま現場に出ることが現場の負担を増やす恐れがある
- 「簡単に取れる資格」と認識され、社会的地位や資格の価値の低下が懸念される
- 試験の手続きが複雑化し、運営コストが増加する可能性がある
- 資格が取りやすくなることで、待遇改善や職場環境の向上が進まなくなる可能性がある
十分な制度設計と断続的な改善が求められる
パート合格の導入によって介護福祉士国家試験の受験がより柔軟になり、資格取得を目指す人の増加が見込まれます。しかし、専門性や社会的評価が低下する可能性も指摘されています。これらの懸念が払拭されるよう制度設計を十分におこない、導入後も評価と断続的なフォローアップが求められます。
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