「106万円の壁」撤廃で手取りはどうなる?厚生年金の加入要件・企業の負担をわかりやすく解説

パートやアルバイトで働く人々にとって気になる「年収の壁」。壁のなかでも「106万円の壁」を超えると、社会保険料の負担が生じる場合があります。現在、厚生労働省では壁の撤廃に向け議論が進められていますが、手取りの増加につながるのでしょうか? この記事では、厚生年金の加入要件の変更や、企業の保険料負担増の可能性について、2024年11月時点の最新情報を解説します。

「106万円の壁」撤廃で手取りはどうなる?厚生年金の加入要件・企業の負担をわかりやすく解説

目次

1.厚生労働省が「106万円の壁」撤廃を検討

厚生労働省の社会保障審議会(年金部会)が11月15日に開かれ、「106万円の壁」の撤廃に向けた議論がおこなわれました。審議会では、厚生年金の加入要件の一部を見直し、これまで要件を満たしていなかった、一部のパートやアルバイトの人も加入できる方向で、議論を続けることが決まりました

現在の厚生年金の加入要件は以下の4つです。

現在の加入要件

今後の方針

月の賃金が8万8,000円以上(年収106万円以上)

廃止へ

勤務先が従業員51人以上

週の勤務が20時間以上

存続

学生以外

このうち、厚労省では賃金と従業員数の条件撤廃を検討しています。背景には、最低賃金の上昇によって週20時間働くと、年収106万円を上回るケースが増えていることや、働き控えが人手不足の一因となっていることなどがあります。なお、「106万円の壁」を撤廃した場合、新たに約200万人が厚生年金の加入対象になる見込みだとされています。

tips|そもそも「年収の壁」って何?

「年収の壁」とは、税金や社会保険料が発生する境目となる年収額のことです。所得税が課税されるようになる「103万円の壁」がよく知られていますが、106万円・130万円・150万円・201万円にも、それぞれ壁があります。

年収が106万円を超え、一定の条件を満たすと、厚生年金や健康保険の保険料を負担しなければなりません。もちろん、将来受け取る年金が増えるメリットはありますが、働く時間を増やしたのに、かえって手取りが減ってしまう場合があるのです。

それぞれの「年収の壁」の違いはこちらの記事でも解説しています。
年収103万・106万・130万・150万・201万の壁の違いとは?

2.手取りと保険料の関係は?

「壁が撤廃される」と聞くと、手取りが増えるような印象を受けるのではないでしょうか。しかし「106万円の壁」が撤廃されるだけでは、厚生年金保険料の負担が生じるため、必ずしも手取りが増えるわけではありません

厚生年金の保険料は、働く人と勤務先が半分ずつ負担しています。現状の制度では、106万円を超えると保険料の負担が生じるため、手取りを増やすには約123万円以上の年収が必要とされています。

「106万円の壁」撤廃で手取りはどうなる?

厚労省では、パートやアルバイトの人が厚生年金に加入する場合に、労使の合意を前提に、勤務先の企業が負担する保険料の割合を高められる特例の導入を検討しています。実現すれば、厚生年金に加入しながらも、保険料の負担を抑える効果を期待できます。

一方、企業にとっては、働く人に有利な環境を整えることで、パートやアルバイトを採用しやすくなる可能性がありますが、保険料の負担増に耐えられるかどうか懸念もあります。すでに経済団体などから否定的な意見も出ており、厚労省では企業への支援策も検討していきます

3.「103万円の壁」も議論が進んでいきます

現在、野党と与党の間で「103万円の壁」撤廃に関して協議が続けられています。「103万円の壁」は、所得税の課税対象となり、配偶者控除扶養控除から外れる年収の基準を指します。今後もさまざまな年収の壁が、論点として浮上しそうです。

4.パートやアルバイトでの勤務は「年収の壁」に気をつけよう

「今月はたくさんシフトに入ったから、給料が楽しみ」。働けば働くほど、手取りが増えると期待してしまいますよね。しかし、実際には、年収103万円から201万円にかけて、「年収の壁」がいくつもあり、手取りが減ってしまう可能性もあります。パートやアルバイトで勤務している場合には、ご自身の年収がどの壁に近い金額なのか、確認してみてください。

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参考

厚生労働省|被用者保険の適用拡大及び第3号被保険者制度を念頭に置いたいわゆる「年収の壁」への対応について 参考資料

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